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2018.01.22

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.8

犬とオヤツ

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。今日は愛犬とはきってもきれないオヤツについてお話しようと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

なぜオヤツをあげるのか

 愛犬の喜ぶ顔が見たい!と思う気持ちはどんな飼い主さんにも共通していることだと思いますが、愛犬の喜ぶ顔はどんな時に見られるのでしょう。

 留守をして帰ってきたとき、散歩に行くとき、ごはんをあげるとき、一緒に遊んでいるとき、思いきり走り回っているときなどなど、さまざまなシーンで犬たちの嬉しそうな顔を見ることができますが、手っ取り早く愛犬の気を引き、嬉しそうな顔を見ようと思ったら、オヤツの入っている袋をゴソゴソするのが早道ではないでしょうか。おそらく犬たちは期待のまなざしで駆け寄ってきてくれるでしょう。人間だって美味しいものが食べられると思えば嬉しくなるものです。

 私が子どもの頃にも、母は当時飼っていた犬に犬用のビスケットをオヤツとしてあげていました。タイミングは単純に気が向いたときだったようです。でも、美味しそうに食べている愛犬の様子を、嬉しそうに見ていました。お互い楽しい時間を共有していたのでしょう。

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オヤツタイムは犬も人も楽しい時間

 犬の散歩で公園に行くと、毎日のように顔を合わせる散歩仲間がいて、中には必ずオヤツを配る人がいます。その人の周りには犬たちが集まり、日々繰り返されているせいか、みんなお座りをしながら順番待ちをしています。飼い主さんと遊んでいても、誘惑に勝てずに列に並ぶ犬もいます。見ていて微笑ましくもありますが、自分の犬を呼び戻したいのに、犬がその列から外れようとしないで困っている飼い主さんもいます。私個人としてはドッグトレーニングが本業ですから、わざとそのそばで犬の集中力を上げる練習などしていただければ、どんなシチュエーションでも必ず戻ってくる犬になるので、絶好の機会だと思って利用するのがいいと思いますが、普通はそんなこと考えないので、戻ってこない犬にイライラしてしまうことでしょう。

 そんなに強烈な誘惑の「オヤツ」を、何もしない犬にただあげるだけではもったいないと思いませんか?もちろんなにもしなくても、そこにいるだけでいいんだよとオヤツをあげてもいいのですが、それだけはなく、犬が大好きなオヤツを有効に活用すると、犬たちとの楽しいコミュニケーションの時間をもっと増やすことができるようになります。

トレーニングとオヤツ(トリーツ)

 前回家庭犬のトレーニングについて書きましたが、犬に何かを教える方法にはいくつかあります。その代表的なものが、「陽性強化(positive reinforcement)」と「強制訓練(Dominance based training, etc)」。前者は犬の行動を引き出すときに犬にとって大好きな物をモチベーターとして利用し、後者は正しい行動を引き出したり、間違った行動を修正したりするために力(犬を押したり引いたり)を使うトレーニング方法です。ただし、修正に際しては、人間がときに罰(痛み)を与えることもあることから、欧米のドッグトレーニング界では、早くから「陽性強化」に移行し始め、日本でも十数年前からこの方法が浸透し始めてきました。クリッカートレーニングなどがその一例です。

「陽性強化」におけるモチベーターと言われるものが、オヤツやボールなどのおもちゃです。ただし、モチベーターと言われるからには、犬にとってモチベーションが上がらないものでなければモチベーターにはなりません。おもちゃに興味が無かったり、食べることに執着がなかったりするコだと、どちらもモチベーターにはならないので「陽性強化」自体の理論に当てはめにくくなります。しかし、多くの犬の場合、おもちゃで遊べなくても、オヤツに興味のある犬は多いものです。そこでオヤツをどうやって使うかということがポイントになってきます。犬にやって欲しい動きを教えるときに、誘導として使うオヤツ。上手にできた時のご褒美として使うオヤツ。シェーピング(行動を教える方法のひとつ)で、一度犬をリセットさせるときに使うオヤツ。オヤツの使い方はさまざまです。

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シェーピングというトレーニング方法で、やって欲しい動きを引きだせたときにクリッカーを鳴らし、ご褒美としてオヤツをあげます

 例えば犬の鼻先にオヤツを持っていき、ゆっくり時計回りに円を描くように回せば、犬はオヤツについてハンドラーの手の動きと同じように時計回りに回転することができます。そこでこの誘導の手に付いて一周回れた犬にご褒美としてオヤツを与えます。これを繰り返すことで、普段は自発的にやらないような「回転」の動きを犬の体に覚えてもらい、スムースに周れるようになってきたら、今度は、実はそれは「スピン(回転のキュー)」という動きなんだよと言葉をのせながら犬に教えていきます。その過程で、初めは誘導のモチベーターとして使われていたオヤツは、上手にできた時のご褒美に変えられ、さらにご褒美のオヤツは、ハンドラーの褒める言葉へとシフトされることで、犬はハンドラーがオヤツを手に持っていなくても、「スピン」と言われれば時計回りに回転することができるようになるわけです。

 また、行動を教えるだけでなく、苦手を克服するときもオヤツは活躍します。

 例えば車が苦手な犬、クレートが苦手な犬、獣医さんが苦手な犬。犬によって苦手はさまざまですが、そんなとき、犬の好きなオヤツを使うことで、少しずつ苦手を克服することができるようになるのです。無理強いするのではなく、楽しいこと(オヤツ)と関連付けることで、苦手意識を少なくしていくことができます。

間違ったオヤツの使い方

 オヤツを持つだけで、犬が魔法にかかったかのように言うことを聞く。と言う話はよく聞きます。美味しいものがあるのですから当然と言えば当然のことでしょう。人間だって、目の前にボーナスをちらつかされたら、とりあえず仕事を頑張るという気持ちになる人は少なくないのではないでしょうか。逆にオヤツを持たないと何も言うことを聞いてくれない。と言う話も聞きます。確かに、無報酬だと聞くと、人間もやる気がなくなりますよね(手当がつかない残業とか)。

 

 犬は報酬が無いと、本当に何も聞いてくれないのでしょうか。そんなことはありません。トレーニングした犬に、「オスワリしていてね」と言えば、飼い主が手にオヤツを握っていなくても犬は座ってくれるでしょう。犬はちゃんと「オスワリ」の意味を知っていれば、報酬のあるなしに関わらず、理解していることはきちんとやってくれるのです。

 では、なぜ「オヤツが無いとやってくれない」と飼い主は思ってしまうのでしょうか。理由は簡単です。ドッグトレーニングを完結させていないからです。トレーニングの流れを理解していないままオヤツをモチベーターに使ってしまうと、オヤツを持っていない時は犬が言うことを聞いてくれないのではないかとハンドラー(飼い主)が不安になって、モチベーターが手放せなくなってしまうのです。

 オヤツはもちろん特別なご褒美ではありますが、飼い主さんの褒め言葉やスキンシップに変えていくという工程を飛ばしてしまうと、オヤツがないと動かない犬になてってしまい、「この犬はオヤツをあげないと何もやらない」というレッテルを貼られてしまうことになります。

 オヤツは行動を教えてあげるための道具であり、ご褒美ではあっても、それはハードルが高いことを学習しているときにこそ使うもので、ある程度犬たちが理解してきたら、ときには言葉だけで褒めたり、撫でてやったりして、毎回オヤツを出す必要はないということを見極めるステップが欠かせません。犬は飼い主が喜べば「正解」と理解します。万能だからとやみくもにオヤツに頼らないことが大切です。

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「マテ」の意味を理解している犬は、オヤツのあるなしに関わらず、落ち着いて待っていることができます

 また、ハンドラーが不安でいつまでもオヤツを握りしめていると、犬はハンドラーをオヤツのデリバリー機として見るようになり、オヤツばかりが気になって学習に集中できなくなります。頭の中で、「オヤツ!オヤツ!」コールが聞こえ、ハンドラーの言っていることが聞こえなくなってしまうと、せっかくコミュニケーションを取ろうと思ったのに逆効果ですよね。

 もうひとつオヤツを使うことで飼い主さんが心配するのは、オヤツを使いすぎて愛犬が太ってしまうことでしょう。どうぞオヤツはふんだんに使ってあげてください。でも、沢山使ったときはごはんを減らす必要があります。また子犬の場合は一日のごはんの量の中から、オヤツとして使う分を取り分けておくのも一つの方法です。体重が増えて体が動きづらくなると、すぐ息切れを起こし、集中力が持続しません。愛犬の体重管理には気を付けてあげましょう。

おわりに

 犬は本来食べることが好きなものです。しかしながら、中には食べることにあまり執着が無く、毎日のごはんでさえ、どうやって食べさせようかと気をもんでいる飼い主さんもいることでしょう。でも、もし愛犬が食べることが大好きだったら、オヤツは効果的に使うことで、愛犬とのコミュニケーションが取りやすくなることは確かです。それによって、オヤツが無い時でも、犬たちは飼い主へ意識を集中しやすくなります。

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オヤツを持っていなくても、呼ばれて嬉しそうに戻ってくる犬

 また、普段は食べることが大好きなコなのに、急に食べないときなどは、なにか大きな原因があるときです。体調が悪いときや周囲に気になるものがあって集中できないときなどがそうです。周囲の気になるものは、オヤツより優先度が高いものかも知れないし、逆にとっても怖いものかもしれません。そんなバロメーターにもなるので、たかがオヤツと侮らず、今一度オヤツの価値や使い方を見直してみてはいかがでしょうか。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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セント・ハウンドはニオイ追跡獣猟犬。プロット、ビーグルなど

あおのプレッシャー

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