lab

  1. トップページ
  2. docdog lab.
  3. 根本解決するための、ケース別「誤飲」対策

2018.01.29

「誤飲」を動物行動学の視点から考える<後編>

根本解決するための、ケース別「誤飲」対策

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

誤飲にはいくつかのパターンがあり、それによって対策法が異なるため、そもそもの原因を理解することが大切です。前編では、食べ物関連のものを飲んでしまう場合と、飼い主の気を引くために食べ物以外のものを口に入れる場合、そしてオモチャを飲み込んでしまう場合の、3つのケースを紹介しました。前編で紹介した「誤飲のきっかけをなくす」ことは必須ですが、今回はさらに、誤飲のケースごとに、原因を根本的に解決するための具体的な対策を解説します。前編に続いて、東京大学の特任助教・荒田明香先生に聞きました。

写真提供=荒田明香 文=山賀沙耶

ケース①=食べ物の誤飲対策

 食べ物の誤飲は、一度口に入れると飲み込んでしまう可能性が高いので、口に入れさせないように工夫することが大切だ。

●空腹感を減らす工夫をする
ダイエット中などで愛犬の空腹感が強い場合は特に、腹持ちのいい高繊維食を与える、1食分のフードをすべて知育トイに詰めて与えるなど、愛犬が満足できるよう工夫をしよう。

●落ちているものに飼い主が先に気づけるようにする
散歩中、愛犬の歩いている少し先の地面をよく見て、落ちているものは飼い主が先に発見して回避できるように。愛犬のようすをよく観察し、愛犬が食べ物を発見したときの動きを早めに察知することも大切だ。

●散歩中に手から食べ物を与える
ポーチにフードやオヤツなどを入れておき、散歩中にときどき愛犬の名前を呼んで、飼い主の手から食べ物を与える。オスワリなどの指示を出したりする必要はない。これを繰り返せば、愛犬はわざわざ地面に落ちている食べ物を探さなくなる。また、散歩中、名前への反応がよくなるため、落ちている食べ物を避ける際に誘導しやすくなったり、愛犬が飼い主の近くで歩くことが増えるため、引っ張りグセ解消にもつながったりなど、他にもメリットが多い。

●拾い食いグセがひどい場合は、口輪をするという手もある
拾い食いをするからと、常にリードを短く持ってにおい嗅ぎもさせないようでは、かえって愛犬にとってストレスになる。拾い食いグセがひどいようなら、口輪をさせ、におい嗅ぎはできるけれど拾い食いはできないようにするという選択肢もある。口輪を装着するときは、ごほうびを使って慣れさせてからにしよう。

180117_02.jpg

ケース②=飼い主の気を引いたり、飼い主に取られないために食べ物以外のものを口に入れる場合の対策

 このケースでは、愛犬は飼い主にとられないように、何かをパッと口に入れてダッシュで逃げるという行動をとる。飼い主が慌てて対応することで、愛犬は「飼い主が追いかけてくれた」「かまってくれた」ととらえてしまい、かえってその行動を強化している場合が多い。さらに、口に入れたものを飲み込めば、飼い主に取り上げられなくて済む、と学習しているパターンもある。また、そもそも発散不足や退屈などの原因を抱えていることが多く、普段のコミュニケーションを見直して根本的に解決する必要がある。

●「チョウダイ」の練習をしておく
「取られたくない」という気持ちが強いと、「チョウダイ」を教えようとしても、愛犬はなかなか離してくれない。飼い主がちょっと借りて、また返す行動を繰り返すことで、離してもまた返してもらえると覚えさせる。最初は執着の強すぎないオモチャを使い、そのオモチャより好きなオヤツを交換条件に用意して、練習しよう。ただし、取ろうとすると怒る犬の場合は無理に練習せず、他の対策を講じて。

  • (1)細長いオモチャを用意し、飼い主が手に持ったまま、「OK」と言って犬に噛ませる。
  • (2)犬がオモチャを噛んでいるときに、「チョウダイ」と言いながらオヤツを見せる。
  • (3)オヤツを見て犬が口からオモチャを離したら、そのごほうびとしてオヤツをあげるととともに、「OK」と言ってまた犬に噛ませる。これを2〜3回繰り返して練習する。
  • (4)繰り返し練習してできるようになってきたら、飼い主がオモチャを持っている手を離しても、「チョウダイ」で出せるように練習する。

180117_03.jpg

左:オモチャを手に持ったまま「OK」と言う。中:「OK」と言いながら噛ませる。右:「チョウダイ」と言いながらオヤツを見せる。オモチャを離したらオヤツをあげ、またOKと言って噛ませる。これを2〜3回繰り返す
(*注意:写真では、オモチャからさらにレベルを上げて、長いガムを使って練習している)

●今までに一度も飲み込んだことがない場合は、過剰に反応しない
愛犬が食べ物以外のものをくわえていっても、今までに一度も飲み込んだことがないようであれば、逆に追い詰めて飲み込ませないほうがいい。飼い主が過剰に反応すると、かえってその行動を強化してしまう。口に入れてほしくないものをくわえたときは、飼い主が反応を示さないようにすることで、食べ物以外のものをくわえても何も良いことが起きないことになる。つまり、くわえる行動が良い方法だと学習することを防げるのだ。

●万が一口に入れてしまった場合は、オヤツと交換して回収する
実際に何かを口に入れたとき、愛犬は飼い主に取られないように、一定の距離を保とうとする。その距離を詰めてしまうと、取られまいと飲み込むことにつながるので、オヤツとの物々交換でさりげなく回収する。

  • (1)愛犬が飲み込みかねないものをくわえたら、愛犬との距離を保ったまま、「チョウダイ」と言ってスペシャルなオヤツを投げる。このときにオヤツを投げる位置は、愛犬が取りに行こうと思う範囲内で、しかも愛犬が口にくわえたものを落としてオヤツを取りに行ったら、飼い主が先にくわえていたものを取り上げられる場所。できれば廊下などにオヤツを投げ、ドアを閉めて愛犬をくわえていたものから隔離できるとベスト。
  • (2)愛犬がくわえていたものを離したら、さりげなく取り上げて隠す。このとき焦った動きをして、愛犬に取り合う遊びだと思わせないように。

また、攻撃性のない犬で、上記の「チョウダイ」の練習が十分にできている場合には、飼い主が落ち着いた雰囲気で犬を呼び寄せ、「チョウダイ」を実践してもよい。

●いちばん大切なのは、欲求を満たしてあげること
例えば靴下をくわえたときに「チョウダイ」と言ってオヤツを与えることばかりを繰り返していると、愛犬は「靴下をくわえてくるといいことがある」と覚えてしまう可能性が高い。基本的には、靴下を片付けておいて口に入れられることを防ぎ、愛犬がくわえても無理に回収しようとしたり注意したりせず、放っておくことが大事。「チョウダイ」は万が一のときの最終手段と考えよう。そもそも、愛犬が食べ物以外のものを口に入れて逃げる場合、発散不足や退屈、欲求不満など、根本的な問題が潜んでいる場合が多い。愛犬が望ましい行動をしていると、飼い主はつい無反応になりがちだが、普段から、噛んでよいおもちゃで一人遊びをしていたら、その状態を褒めてあげたり、一緒に遊んだりと、くわえて困るものをくわえる以外の楽しみをたくさん与えてあげよう。

ケース③=オモチャを飲み込ませないための対策

●与えるオモチャのサイズや材質に気をつける
オモチャを誤飲するケースには、オモチャが小さすぎて丸飲みしてしまう場合と、オモチャを噛んでいるうちに破壊して破片を飲み込んでしまう場合がある。かといって、飲んでしまう危険があるからと、噛むものを与えないと、噛みたい欲求が満たされずストレスが溜まってしまう。丸飲みできないサイズのもの、破壊できないものを見極めて、与えるようにしよう。

180117_04.jpg

詰め物入りのぬいぐるみなどは、破壊して詰め物を飲んでしまう危険性があるので注意

 ここまで、誤飲のケース別に、具体的な対策方法を見てきた。
 もし愛犬が誤飲してしまっても、薬で吐き出させたり、内視鏡を使って取り出したりできる場合もあり、繰り返しているうちに「何とかなる」と慣れてしまう飼い主もいるかもしれない。しかし、例えば今までに何かを飲んで大丈夫だったとしても、誤飲したものがお腹に溜まっていくと体調が急変することもある。また、カカオなど中毒性のあるものや尖ったもの、長いヒモなど、飲んだものによっては命に関わる状態になることも少なくない。

 もしも飼い主の不注意や対策不足によって、誤飲が原因で愛犬が命を落としてしまったら、後悔してもしきれないはず。最悪の事態に陥る前に、できるだけ早く、根本的な対策を講じて原因を解決するよう努めてほしい。




 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

日本における古代からの狩猟のお供。北海道、紀州など

果てしないトイレ問題

果てしないトイレ問題
日本における古代からの狩猟のお供。北海道、紀州など