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2018.01.24

「誤飲」を動物行動学の視点から考える<前編>

なぜ、愛犬は誤飲を繰り返すのか?

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

犬はなぜ、誤飲をしてしまうのでしょうか。オモチャの破片を飲み込んでしまう、散歩中の拾い食い、テーブルの上の食べ物を食べられてしまう......。ひと言で誤飲と言ってもさまざまなケースがありますが、犬の本能的な行動を理解して、愛犬の誤飲の根本的な原因を解決することで、防げる場合がほとんどです。今回は、動物行動学の視点から見た誤飲の原因や対策を、東京大学の特任助教・荒田明香先生に聞きました。2回に分けてお送りします。

写真=大浦真吾 写真提供=荒田明香 文=山賀沙耶

犬が物を口に入れるのは、本能的な行動

 散歩中に、愛犬が道端に落ちている鶏の骨をさっとくわえて食べようとしたら、「なんでそんなものを拾って食べるの!?」と怒る飼い主は多いだろう。ところが、犬が野生で生きていた時代のことを想像してみれば、歩き回って嗅覚で食べ物を探し、くわえて食べるのは当たり前のこと。それを「誤飲」ととらえるのは、飼い主側の勝手な目線とも言える。

「野生の時代から考えると、犬がものを口に入れるのは、食べ物を食べるときだけではないことがわかります。物を運ぶときにも口を使いますし、物を調べるときに口に入れてみることもあります。逆に言えば、食べ物以外のものに関しては、口に入れたからといって必ず飲み込むわけではありません」
 と、東京大学特任助教の荒田明香先生は話す。

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 ものを口に入れること自体は、犬にとって本能的な行動。とはいえ、万が一食べてはいけないものを誤って飲み込んでしまったら、取り出せなければ開腹手術や、最悪の場合は命にかかわる状態になることもある。
 もし愛犬が誤飲を繰り返してしまっているのなら、大事に至る前に、その根本的な原因を理解して、できるだけ早めに解決しておく必要がある。

誤飲の原因は「食べたい」だけではない

 具体的には、どんな状況のときに誤飲をすることが多いのだろうか。大きくは、以下の3つのケースが考えられる。
 1つ目は、食べ物や、食べ物についていた串やラップなど、食べ物関連のものを飲んでしまうケース。ビーグルやレトリーバー、キャバリアなど、食いしん坊で好奇心旺盛な犬種に起こりやすく、これには野生時代から残った狩猟本能や欲求が関係している。

 2つ目は、飼い主の気を引きたくて、あるいは自分が口にしたものを取られたくなくて、食べ物以外のものを口に入れたり飲み込んでしまうケース。この場合、愛犬は物をパッと口に入れて、取られないようにダッシュで逃げるという行動をとることが多い。これは、ジャック・ラッセル・テリアやシュナウザーなど、所有欲や好奇心が強く、エネルギーのあり余りがちな犬種によく見られる行動だ。

 3つ目に、オモチャを丸飲みしてしまったり、噛んでいるうちに破壊して破片を飲み込んでしまったりというケースもある。これは、噛む力が強く破壊力のある犬種や、カラダの大きさに対して意外と口が開くフレンチ・ブルドッグなどに起こりやすいようだ。

「それぞれのケースによって、原因や対策はまったく違ってきます。まずは愛犬の誤飲がどのケースに当てはまるのかを考えてみましょう」

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誤飲を繰り返すのは、すると「いいこと」があるから

 それではなぜ、愛犬は誤飲を繰り返すのだろうか。誤飲にはさまざまな原因があるが、何度も繰り返しているのなら、以下のプロセスをたどっていると考えられる。

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 例えば、愛犬が退屈している(=①後天的な要因)ときに、靴下が落ちている(=②きっかけ)のが目に入って、口に入れた(=③行動)ところ、飼い主が大騒ぎして飛んできた(=④報酬)とする。愛犬が、普段はオモチャをくわえても飼い主は何も反応しないけれど、靴下をくわえたらかまってもらえたと覚えてしまったら、靴下を口に入れるという行動が強化されてしまう。
 つまり、誤飲の原因は①「先天的・後天的な要因」にも、②「きっかけ」にもあるが、誤飲を繰り返させてしまっている原因は④「報酬」にあるのだ。

「愛犬が誤飲グセのあるコでもないコでも、飼い主さんに最低限してもらいたいのは、まずきっかけをなくすこと。具体的には、部屋を片付けて余計なものを出しておかない、愛犬が食べそうなものは届かない場所に置く、ゴミ箱はふた付きにする、散歩のとき食べ物の落ちていそうな道を歩かないなど、すぐにできることばかりです。特にお花見や宴会のシーズンなど、大勢の人が集まり気の緩みがちなときや、路上のポイ捨てが増える時期に誤飲事故が増えるので、いつも以上に気をつける必要があります。きっかけをなくすだけでは根本的な解決にはなりませんが、極端に言うときっかけがまったくなければ誤飲をすることはないし、『誤飲はやっぱり良い方法だ』と犬が繰り返し覚えることを防げます」

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ゴミ箱を漁れないようにすることは、誤飲を防ぐための基本的な対策の一つ

 誤飲を防ぐためにすぐにできることは、まずきっかけをなくすこと。
 しかし、もし愛犬が誤飲を繰り返しているとしたら、それだけでは十分でない。愛犬の中にできてしまっている、「何かを口に入れる・飲み込むといいことがある」という方程式を崩さない限り、飼い主の隙を見て誤飲してしまうリスクは常につきまとう。
 対処療法だけでなく、愛犬の誤飲の原因を理解し、根本的に解決してあげることで、愛犬も飼い主もよりストレスの少ない生活を送れるだろう。

>>後編では、愛犬の誤飲のケースごとに、具体的かつ根本的な対策方法を解説します!

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