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2017.12.22

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.8】

遊び方がわからない

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。次々と起きる"どの飼育本にも載っていない"トラブル、アクシデント、ハプニング。心労で3カ月の間、毎晩見るのは犬の夢だけ......。今は笑って話せるけれど当時はそんな余裕ゼロ!途方に暮れながら過ごした日々は、まるで大海原を犬と一緒に漂流しているような気分だった......。
生後2カ月、散歩デビュー前のあお。眠っている時は天使、でも起きている時はイタズラ盛りの小さな野獣。その本能的欲求を満たしてあげるべく、充実した"遊びの時間"を提供しようと試みるも、これがまた難しい。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

まずは定番、引っ張りっこ

 もうひとりの飼育員が夜を舞台の稽古時間に取られ、あおとほぼ2ショット生活が続くことになった。実感したのは、犬と人はやっぱり別の生き物だということ。しかも、この世に誕生してまだ2カ月ちょっと。今ではこちらの言うことをかなり理解してくれるようになったが、この頃は言葉なんて理解しようとしない、自由な野獣。遺伝子に組み込まれた「噛む」という行為を駆使して襲ってきた。「食べ物を噛んで食べる」これは必要。「何かをくわえる」口は犬にとっての手のようなものだからこれもあっていい。けれど「人の手や足を噛む」のは人間にとって迷惑な行動。鋭く尖った乳歯で人の手や足をガブリ。痛くないわけがない。飼育本には犬の好きな引っ張りっこがかじる欲求を満たし、エネルギーを発散させるのにいいと書いてある。近くの量販店でオモチャを買い、早速試した。

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"なにこれ?!"

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とりあえず かじる

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 引っぱることが好きらしく、パジャマのズボンのヒモを見つけては、くわえて引っぱる。この場合、こちらはじっとしているだけで勝手に遊んでくれるのでいいのだが、引っ張りっこ用おもちゃの場合は、こちらも引っぱってやらないと遊びにならない。そこで困ったのが「どれぐらいの強さで引っぱればいいのか?」である。全力でやればこちらが勝つに決まっている。だがある本に「たまに負けてやらないと、犬はその遊びが面白くないと思ってしまう」と書いてあった。

 そうなの!? 確かに人間なら負けてばかりのゲームは面白くない。姪っ子は3歳で「かるた遊び」を覚えたが、我々オトナとやって、自分が取れないと「取らないで!」と泣きながら本気で叫び、あきらかにこちらが見逃してやっているのがわかっていても、自分がかるたを手にできる喜びの方を重視していた。犬でもそんな感じなのか......。たまに負けてやりながら遊んでやるか!

 遊び開始。と、あおはいきなりオモチャではなく、それを持っている僕の手を直接狙ってきた!!おもちゃ関係なしである。

「ガブ!」痛い!歯が細くて鋭いから皮膚に食い込む!

 ようやくあおがオモチャをくわえた。最初は恐る恐る、端の方を持って引っぱった。小さなあおはあっけなくこちらに引き寄せられる。それでもあおはオモチャを自分のものにしようと、必死に引っ張り返してきた!さらに、犬としてはいさぎが悪いというか、前足を手のように使ってオモチャを固定し、口の力と合わせて奪いにきた。引っ張り合いではなくただの奪い合いだ。「噛む欲求」は一体どこへ?それでもあおは楽しそうである。段々こちらもノッてきて、あおを振り回すぐらいの力で引っぱった。

「まだ散歩に行けないし、ここでエネルギーの発散だ!」と、けっこう引っ張りまわした。上の方向に引っぱるのは犬のカラダの負担になると、何かで読んだので、できるだけ平行に引っぱるようにした。僕とあおは身長差がかなりあるので(当たり前)、ひざまづいた状態で遊んだ。

 この遊びは盛り上がったが、やりすぎはあおのカラダにはよくないだろうと、5分ぐらいでやめていた。

遊びのバリエーション不足

 問題はこの遊びをやめた、他の時間をどう過ごすかだった。

 仔犬は一日の8割を寝て過ごすと、これまた何かで読んだ記憶があった。なので、あおがこんなに日中も起きているとは思わなかった。他にあおと一緒にすることがない......。この頃、自分は飼育員でありつつ、『外国人観光客を担当する旅館のスタッフ』のような感覚だった。言葉でのコミュニケーションがうまくとれない、でも日本に来て良かったと、思ってもらいたい。そんな『おもてなしの心』が宿ってしまっていたのだ。(飼育員としては犬に気を遣いすぎるダメなパターン)なので、お客様(あお)が暇そうにしているのを、見て見ぬふりはできない。

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退屈アピール

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遊んで視線

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遊んで噛みつき

「とりあえずオモチャを増やすか......」

 柴犬との暮らし上級者のブログには、『破れたスエットを切って結んでオモチャにした』という、とてもスマートなアイデアが書いてあり、なんかカッコいいので、それを作ってみようと思ったが、そもそも破れたスエット自体がなかったので、わざわざ破るのもどうだろうと、普通に売られているオモチャを手に入れることにした。噛んで遊ぶのだから、変なものは与えられないと、『オーガニック』という言葉の魔力に惹かれて『オーガニック 犬 オモチャ』で検索し、いくつか手に入れた。

【オーガニックコットン製のおもちゃ「ビフテキ」】

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「オーガニック」「日本製」「安全」などの言葉が、初心者ゴコロを刺激した。オーガニックという言葉は値段の高さも「まあ仕方ないか」と思わせる魔力がある

【オーガニックロープアニマル ベア】

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ヒツジやキリンもあったが、「あおだから青がいいな」と青いクマにした。さらに、カラフルなだんごにピラピラした布がついたものも買ってみた

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 ビフテキ、青いクマ、だんご三兄弟があおのお気入りになったらしく、いつも自分のそばに置いていた。この3つのおもちゃは2歳になる今もあおのお気に入りで、くわえたり、触れたりし続けている。なので、中にはすっかり形の変わってしまったモノもある。一番は青いクマ。

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こうだったのが今は......

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こう

知育ゲームに挑戦!

 ちなみに、時期が来たらおもちゃ以外でもやろうと思っていた遊びはあった。それは、何冊かの犬の本に載っていた「宝探し」。紙コップを3つ用意し、その中のひとつにフードを隠して、どの紙コップに入っているか、犬に当てさせる。当てられたら褒めて、ごほうびのオヤツを与えるという知育ゲームである。

 僕は紙コップを買い置きし、その日が来るのを待っていた。

 あおが3か月になったある日。その日も僕とあおはふたりきりだった。おもちゃに飽きて、伏せ寝(ふて寝に見える)を始めたあおが僕に無言で「あきた~」「ヒマ~」とプレッシャーをかけてきた。よし、これはもうアレしかない!僕はあおに声をかけた。

「あお!宝探しゲームやるか!」

 紙コップを3つ出し、その中のひとつにフードを隠して床に置く。

「この中のひとつにおやつが入っているぞ!当ててみて!」

 そう言いながら紙コップを並べていくと、あおは初めて見る紙コップ自体に興味を示し、置くそばから、コップをガシガシ噛み出した。

「やめろ!やめろ!やめろ!!」

 数秒であおは全ての紙コップを破壊した......。知育ゲームの道具になるはずだった紙コップは、ゲームに使用されることなく、ただゴミとなった......。

 噛むのが何よりも好きなあおに、そもそもそんなゲームができるはずがないことに初めから気付くべきだった。

「はい、撤収~」

 柴犬の知育ゲーム「宝探し」は開催中止。大体、こんな高度な遊びができる柴犬は何歳以上なんだ?!

 ......本を作った方にお願いです。ぜひ次からは「もしかしたらフードよりも紙コップを壊す方を選ぶ犬もいます」と注釈を入れて頂けると、こちらとしても心構えができて、ショックが和らぎます。m(_ _)m

(つづく)

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やたら噛むの大好き犬

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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