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2017.12.15

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.7】

クジラ、誤飲事件

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。次々と起きる"どの飼育本にも載っていない"トラブル、アクシデント、ハプニング。心労で3カ月の間、毎晩見るのは犬の夢だけ......。今は笑って話せるけれど当時はそんな余裕ゼロ!途方に暮れながら過ごした日々は、まるで大海原を犬と一緒に漂流しているような気分だった......。
あおに与えたおもちゃのクジラ。夢中でガジガジ......。どうやら気に入ってくれたようだ。何気なくおもちゃに目をやると、あるはずのクジラのシッポが......。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

与えて15分で即破壊......だけで済まなかった!

 犬を育てる上での注意点の一つとして、「誤飲」がある。

 ボタンや電池など、家の中にあるものや路上に捨てられているマナー違反のタバコの吸殻など。10月のある日(あお生後3カ月頃)、まだあおとの遊び方がよくわからなかった僕は、買ったばかりの手のひらサイズのクジラのおもちゃをあおに与えてみた。新しいもの好きのあおは、早速クジラで遊びはじめた。これまでけっこうな力で噛み、いくつかおもちゃを破壊していたが(顔が描かれているかわいいタマゴのおもちゃ、アヒルのおもちゃは即破壊)、固めのビニールでできていたクジラのおもちゃは、当分壊れないだろうと思っていた。

 その時、目を離していたわけではなかった。でもずっと見続けていたわけでもなかった......。

 夜のフードを食べ終わったあおにおもちゃを与え、僕は遅い夕食をとりはじめていた。遊んでいる間、あおは「小」も「大」もすることがなかった。その時間が飼育員である僕にとっての休憩時間。あおはクジラを抱え込み、静かにガジガジやっている。ひたすらクジラを噛んでいる。

 おもちゃを買ってきても、ひと遊びしたらすぐに飽きてプイ......という事になると、買ってきたこちらとしてはけっこうショックである。

 よっぽど気に入ったんだなぁ、よかった買ってきて。

 食事の途中だったが、すっかりクジラにハマっているあおのそばに行ってみた。「楽しい?」そう話しかけると、あおはこちらを見上げ、またかじりだした。ふとクジラを見ると......ん?!あ!!えーーー!

 クジラのシッポが、ない!!! 慌ててあおからクジラを取り上げた。

 え?!与えて15分足らずで?! 破片は? 無い......うそだろ......ウソ......誤飲?!!

 小さな破片だったら排泄されるからきっと大丈夫。でもクジラのシッポ部分がごっそり無い!まずい......けっこうな大きさだ。かじって細かくなっていればまだいい。でも、そのまま飲み込んでいたら......!!

 前から誤飲については調べていた。大きなものを飲み込んだ場合、腸閉塞になる危険があるので、開腹手術をしなくてはならないかもしれない......。

 うわーーどうしよう!

緊急電話

 大体あおはいつも、僕が一人の時を狙うように次々と新しい騒動を起こしてくれる。この日も、"もうひとりの飼育員"は仕事で金沢に泊まり。家にはいなかった。下手に電話をしても、向こうとしても「どうしよう」しか言いようがなくて、ただ心配するだけだ。目の前にはおもちゃを取り上げられて、フテ寝のようにペタッとしているあおがいる。

 なんとなく元気がないようにも見えてきた。どうしよう!!!!時計を見るともうすぐ23時。ネットで"犬 誤飲 おもちゃ 破片"で検索。すると出てくるのは"腸閉塞""開腹手術"そして"病院へ..."の文字。テーブルの上では、せっかく温め直したのに、食べ損なった鶏の唐揚げとみそ汁がどんどん冷えていく。

 あー、なにもかもが、あーーー!だ。

 やっぱり病院に連れて行くしかない! 多分出てもらえないだろう......でも!藁にもすがる思いで、かかりつけの先生に電話をかけた。数回のコール。先生は......出てくれた!!

「夜分遅くにすみません......先生!誤飲してしまいまして......」
 こちらは不安丸出し。すると先生は
「今、病院から離れたところにいるので......」
 やっぱりダメか。救急病院を教えてもらおう......と思った。が!
「戻りますから、23:15くらいに病院集合で」
 うそ!やった!助かった!!いや、まだ助かっていない!

病院へ

 急いでパジャマから外出着に着替え、あおをサークルからクレートに入れた。ありがたいことに病院は歩いて2分の距離。待ち合わせ時間まであと10分あるが、クレートにあおを入れ、揺らさないように歩くとしたら時間がかかるかもしれない。ならば、行って外で待っていよう!せっかちに、家を出た。

 病院に着くともう灯りがついていた。もう先生いる!さすが!!

「先生、こんな時間にすみません!」
「大丈夫ですよ~」
 事情を説明し、破壊されたクジラを見せる。
「あおちゃん、けっこう硬いのにやっちゃったね。じゃあちょっと待っていてください」

 先生はあおを抱え、診察室の奥へと消えた。

 しばらくして先生はレントゲン写真を持って戻ってきた。

「よく見えないな~これかな~」
 僕もどれぐらいの大きさのものを飲み込んだのかわからないので、なんとも言えない。
「吐かせちゃったほうがいいかな~」
「お願いします」

 先生はあおに何かを飲ませた(勝手に食塩水だと思ったが......)。

 しばらくすると、あおの体が震え始めた。あおの顔が苦しげにゆがむ。あおにとって、おそらく生まれて初めての感覚。こみあげてくる吐き気にどう対応していいのかわからないのだろう。

「どこに吐いてもかまいませんから。大丈夫ですよ」

 診察室の床をふらふらと歩くあお。今まで経験したことのない不快感だろう。さっきまであんなに元気だったあおは、まるで別の犬に見えた。全身の色が白ではなく不健康な灰色に見える。こみあげてくる吐き気に小さな体が震えている。そしてみるみる体は膨らみ、あおは、吐いた。小さな体を震わせながら、あおは何度も吐いた......。

 クジラなんて買うんじゃなかった。もっとじっと見ていればよかった。そうしていればこんな目に遭わずに済んだのに、ごめんあお。ごめん。

 先生が吐いたものを調べる。
「あ、出た、よかった」

 無事、あおがかじったクジラのしっぽが出ていた。やはりけっこう大きかった。この大きさだと、詰まる可能性もあったようだ。

 脱水症状を防ぐため、あおにとって、これまた生まれて初めての点滴を打ってもらい、帰宅。時間外もいいところの、遅い時間に応対してくださった先生に心から感謝。生まれて初めて吐き、生まれて初めて点滴を打たれたあおは、さすがに元気がない。

 その夜、あおが心配だった僕はサークルのそばのソファーで寝た。多分大丈夫だろう、でもどんな異変が起きるか分からない。あおはまだいつもの元気なあおではなかった。目を離すのが怖かった。いつでもすぐに対応できるように外出着のままあおのそばで横になった。

 疲れたあおはいつしか眠っていた。僕はうたた寝を繰り返しながらも、あおを観察した。何も起きませんように......。

 願いは通じ、朝がやってきた。

 目を覚ましたあおは、昨夜とはあきらかに顔色が違った。犬にも顔色があるのか。初めて知った。ほとんどいつものあおに戻っていた。多めのお湯でしっかりふやかした、おかゆ状態のフードを、いつもの半分の量与えた。あおはゆっくりと口をつけて、完食した。


 あおが小さな体を震わせながら、健気に頑張っていたその時、もうひとりの飼育員は何も知らずに寿司を喰らい、温泉に浸かって金沢の夜を満喫していたという。帰ってきた飼育員に昨夜の報告をした。

「それは大変だったね~」

 まるで海の向こうの話を聞いたような顔であった......。

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まだ手のひらに乗る小ささだった

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問題のクジラ(どこか悲しげ)

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出てきたシッポの残骸と

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2年ぶりにクジラと対面!

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だから、シッポをかじるな!

(つづく)

担当編集M:最近、誤飲に関するトラブルをよく聞きます。中には、亡くなってしまったコも......。ということもあって、近々"誤飲"についての企画も進行中です。みなさんも、気を付けてくださいね。

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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