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2017.12.18

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.6

家庭犬にトレーニングは必要か

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。大型犬の飼い主の方は、毎回引っ張られながら散歩に行くのはイヤだな......と思い初めて、「犬のトレーニング」や「犬のしつけ」を考えるようになる方が多いと思います。しかし小型犬の飼い主の方は、引っ張られても力では負けないので、トレーニングという概念をお持ちでない方の方が多いのではないでしょうか。今回は、家庭犬におけるトレーニングについて、お話ししたいと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

すべては飼い主の考え方次第

 大型犬に引っ張られても動じない人であれば、それは特に苦にはならず、引っ張られて歩くこと自体に問題意識は持たないでしょう。しかしご家族がいる場合、奥様やお子さんたちがご主人のいない時に散歩へ行くことができるかと聞かれれば、答えは「NO」ではないでしょうか。

 私がまだドッグトレーナーとして仕事を始める前のこと、シベリアン・ハスキーと毎日自転車で散歩しているのを見たご近所の奥さまが、しばらくご主人が出張で散歩に行かれないので、自分の家の犬の散歩を代わりにやってくれないかと頼まれたことがありました。このお宅では愛犬の引っ張りが強いために自転車で散歩に行っているから、ご主人でなくては散歩ができないとのこと。ちなみに、犬種はオスのラブラドール・レトリーバーでした。

 小型犬を飼っているご家庭で、自宅のインターホンが鳴るたびにけたたましく吠えたり、散歩の途中で目に映る他の犬を見ては吠えながらクルクル回る愛犬を見て、何とかしなければいけないと思うか、その場だけだからと気にしないでいるかは、飼い主さん次第です。

 

 いろいろなところで見聞きすることが多くなりましたが、「犬の問題行動」というのは犬が悪いのではなく、人間の捉え方です。周りにあまり民家がないエリアや、治安の悪い場所であれば、人を見るたびに吠える犬が家にいても問題にはならないでしょう。気を遣う相手もなく、不審者が来たら教えてくれる犬がいれば逆に重宝がられるはずです。しかし、これが都会のマンション住まいの場合、外廊下を歩く足音を聞くたびに吠え、エレベーターが開くたびに吠えていたら、おそらく飼い主さんはとても困ってしまうのではないでしょうか。つまり、環境と飼い主さんの意識で問題行動かどうかは決まってくるわけです。

ドッグトレーニングとは何か

 一般的にドッグトレーニングと言うと、日常のマナー、例えば「オスワリ」「フセ」「コイ」「マテ」などを教えたり、トイレのルールを教えたり、おおざっぱに言えば人間社会で暮らすためのルールを教えることです。そしてそれらのマナーを、家の中だけでなく、いつでもどこでも、ハンドラー(飼い主)に言われたらできるようにすることを指しますが、犬と暮らし始めるとさまざまな事件が起きて、なかなか自分一人では対処できなくなってくることがあります。そこで、そういったことを直すこともトレーニングの中に含まれてきます。もちろん、先述ように、飼い主さんに直そうという意識が無い場合は必要ないかもしれません。

 問題行動への対処として、以前の教え方では「飼い主さんのやってほしくない行動が出た際に、痛い思いをさせてやる気をなくさせる」という手法が多かったようです。引っ張ったら引っ張り返して犬に痛い思いをさせて、やらなくなるのを待つ。吠えたら大きな音をたててびっくりさせ、吠えると嫌なことが起こると教える。ただしこれらの手法は一発で効果が出なければ、犬が馴れてしまうのであまり役に立ちません。一発の効果とはどんなものでしょう。きっと、すご~く痛かったり、びっくりさせてしまったりすることなのではないでしょうか。もちろん、そんな方法ばかりではなかったでしょうが、どちらかというと後手後手に回った対処方法が多かったようです。

 では、今はどんな方法が多いのでしょうか。犬の行動学や学習理論など、さまざまな研究が進むにつれて、トレーニングの手法も変わってきています。まず、なぜその行動が出るのかを考えるところから始まるわけです。犬種の特性によってある種の行動が出やすい場合は、出にくい環境を作ることから始めることもあります。

 例えば牧羊犬は、追いかけるのがお仕事ですから、動いている物に対する動体視力は並外れています。リビングの窓際にケージが置いてあれば、外を行きかう自転車や人、よその犬、場合によっては庭を横切るネコなど、気になるものが通るたびに大騒ぎをする可能性があります。その場合は、ケージの場所を変えることも一つの方法です。

 また、外出時にそういうシチュエーションに何度も遭遇することがわかっていれば、愛犬を座らせたり、あるいは、遠くを通る刺激物に慣らしたりしてから、少しずつ近づいていくという方法もあります。

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車や自転車など、往来の多い場所では落ち着いて座っていてくれると安心

 実際にあった話です。ボーダーコリーを庭で飼っていらしたお宅で、日がな一日フェンス越しにバイクや宅配トラック、自転車が行きかうのを見ていた犬は、道路に面したフェンスに沿って、何かが通るたびに吠えながら走って追いかけて行く行動を取り始め、最後は近所迷惑だから飼えないと放棄されました。

 問題と思われる行動が出始めてからでも、根気よく教えていけば直らないことはありません。トレーニングというよりリハビリテーションと言った方がいいかもしれません。つまり時間がかかるということです。しかし、愛犬と一緒に試行錯誤を繰り返しながら、納得のいく方法で改善させることはできます。吠えること、噛むことなどにはみんな理由があるので、その理由を見つけるところから始めるわけです。

トレーニングの効果とは

 日常のマナーを教えること一つをとっても、犬たちに力づくで教えるのではないので、犬たちは考えることを学んでいきます。何をすれば褒めてもらえるのか。何をしたら褒めてもらえなかったか。そんなことを学んでいきながら、犬は自分で考えて答えを見つけていきます。

 先ほどの、庭を走り回っていたボーダーコリーは、飼い主さんとの関わりが薄く、毎日庭で退屈していたことから、自分で「追いかけるゲーム」を編み出してしまったのです。右方向から自転車が来ればフェンスの右側に走って行き、吠えながら自転車を追いかけて庭の端に辿り着くころには、自転車はまるで犬から逃げていくかのようにいなくなる。うるさいバイクやトラックも、こうして追いかければいなくなる。犬はそんな風に学習したのではないでしょうか。

 もし、こんな兆候が見られたときに、飼い主さんが犬のスイッチがマックスになる前に犬を呼んで、戻ってきた犬と一緒に遊んだり、ご褒美をあげたりして続けていたら、犬は追いかけることより、飼い主さんと遊ぶ方を選んだかもしれません。

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幼い子どもと出会うたびに「飛びつくな」と言い続けるより、「フセしてお利口さんにしていよう」と褒められて育った犬は自分から伏せる行動をとります

 犬は自分にとってメリットのある方を選びます。嫌なことからは逃げようとします。楽しいことは大好きです。そんな犬の気持ちを読みながら、犬にやって欲しくない行動ではなく、やって欲しい行動をとってもらうようにうまく学習してもらうことが飼い主さんにとっても大きなメリットになるはずです。

 そんな学習の手助けをしていると、飼い主さんもだんだん犬の考えていることがわかってきます。なんで今吠えたんだろう。何かを要求しているのか、何かに警戒しているのか。それならどうすればいいのかを飼い主さんもわかってくるようになります。ただ「吠えるな」と言っているだけではなんの解決にもなりません。

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犬が吠えるには理由がある

 我が家の見習いがある朝散歩の帰り道、角を曲がって突然吠えました。周りには特に誰もいません。彼の視線の先を見ると、そこには昨日までなかった大型バイクがカバーをかけて置かれていたのです。そこで私はリードを緩めて私だけ少しバイクに近づきました。見習いは相変わらず腰を少し引いて吠えています。私は「バイクがあるのねぇ」と言いながらバイクのカバーに触って普通にしていました。すると見習いは自分からそっとバイクに近寄り匂いを嗅いで、何事もなかったかのように歩き出しました。翌日の彼は同じ場所にバイクがあっても無視して通り過ぎていきました。多分自分には関係ないものと納得したのでしょう。

おわりに

 犬をトレーニングするということは、犬に考える力を与えることです。それは日常生活の中でも、何か起きた時に自分で処理する力になります。人間の子どもと同じで、手を出し過ぎると学ぶ機会を無くしてしまいます。学んだ犬は多少のことでは動じません。経験値の高い犬は環境が多少変わっても普段通りでいることができるのと同じです。

 同様に、愛犬と一緒に学んだ飼い主さんたちもさまざまな状況での対処が素早くできるようになりますし、自然に意識改革もされていきます。困ってからの対応ではなく、予測しながら犬の行動を観察することができるようになるのです。犬が集まるような場所で、マナーの悪い犬がいた時は、自分の犬を素早く呼び戻して難を逃れることもあるでしょう。

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飼い主に呼ばれるといいことがあると学習している犬は、自分から飼い主にアイコンタクトを取ってくるようになる

 「オスワリ」や「マテ」などを教えることだけがドッグトレーニングではありません。その過程で犬に学ぶ力を身につけさせてあげることがポイントです。言われたことを理解しようとして考えることを学ぶと、自然と落ち着くことも学んでいきます。退屈してイタズラばかりしているような犬ならなおさら、トレーニングのチャンスをあげることで行動が変わってくるかもしれませんよ。愛犬とのコミュニケーション不足でお悩みの方は、ぜひ愛犬と一緒に何かすることから始めてみませんか。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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