magazine

  1. トップページ
  2. MAGAZINE
  3. 犬の店頭販売禁止がついに決まった!

2017.12.28

ブログ        

オーストラリアの犬事情 vol.4

犬の店頭販売禁止がついに決まった!

オーストラリアのビクトリア州では、「ペットショップで子犬の販売禁止法」が決まった。2018年7月から店頭の命はすべて保護された犬や猫だけになりペットショップは里親との出会いの場になるのだ。

#Lifestyle

Author :写真=山﨑睦 文=五十嵐廣幸

犬の店頭販売の禁止決定

 2017年12月15日オーストラリア・ビクトリア州議会は「商業的に繁殖された犬のペットショップでの店頭販売の禁止法」「パピーファクトリーの廃止法」を正式に可決した。このニュースはオーストラリアのテレビや新聞各紙が大きく報じた。これは同年9月にアメリカ・カリフォルニア州法で決まった「商業的に繁殖された犬、猫、うさぎのペットショップでの店頭販売の禁止(2019年1月施行)」と共に、動物を愛する者にとって2017年のビッグニュースと言っていいだろう。

 現在、メルボルンでは子犬、子猫を店頭で売っているペットショップを見かけることは多くない。それは、犬や猫たちがまるで宝石か洋服のように透明ケースの中で販売されていることに多くの人が違和感を感じた結果だといえる。

 オーストラリアで全国展開しているペットショップ、ペットバーンでは、何年も前から20以上の保護団体と協力して店内で猫の里親の募集を行っている。2017年12月25日現在、全国の115店舗がアダプションセンターを兼ねており、25,297匹の譲渡が成立している。その譲渡方法や金額は保護団体の規定によって違うが、全ての猫は予防接種、避妊や去勢、マイクロチップが施されている。

 しかし、そのように保護犬や保護猫に対して意識が高いともいえるオーストラリアにおいても、地方のペットショップや蚤の市などのマーケットでは子犬、子猫を売っていることも事実である。今回、州議会が「ペットショップでの商業的に繁殖された子犬、子猫の販売禁止」を法律にしたことは、売る側だけでなく、我々犬を買う側にもその行為が「法律違反」であることを伝えることになった。

パピーファクトリーの廃止も決定

 パピーファクトリー(Puppy Factory)は、文字通り子犬繁殖工場である。パピーミル(Mill :製造所、小屋)やパピーファーム(Farm:牧場、農場)とも同義だ。このパピーファクトリーの廃止も「子犬の店頭販売禁止法」と同時に可決された。

 オーストラリアのRSPCA(王立動物虐待防止協会) のパピーファクトリーの定義は、「犬として動物のあるべき行動、社会及び、生理学的なニーズを満たすことができない不十分な条件下で、激しく集中的な方法で犬を繁殖させる場所」とされている。

 15日の法案が決まる4日前、動物虐待の罪で起訴されていたパピーファクトリー持ち主の男女に各$10,000(オーストラリアドル)の罰金、そして女には300時間、男には150時間の地域奉仕活動と10年間の動物飼養禁止が言い渡された。また、この繁殖施設で押収された66頭の犬の内、60頭はすでに里親が決まったという。
(*パピーファクトリー、パピーファームの詳しいことは、Googleで「puppy farm」と検索すればショッキングな画像を含めさまざまな情報を知ることができる)

 今回の「パピーファクトリー廃止案」が可決したことにより、ビクトリア州では、ペットショップでの販売だけでなく、地域情報誌やインターネットを通じての犬の売買なども防止できると考えている。

171220_02.jpg

オーストラリアでのブリーダー選び

 今後ビクトリア州で犬を飼い始めるには、次の2つの方法で犬を入手することになる。

①保護犬の里親になる
②ブリーダーから子犬を譲り受ける

 では、オーストラリアのブリーダー選びとはどういうものだろうか?

 Dogs Victoriaは1877年に設立されたビクトリア州の純血種犬のブリーダー、その犬の所有者を取りまとめる団体で、ここに正式登録されてない氏名または犬舎は正式なブリーダーとして認められていないことになる。つまりバックヤードブリーダーと呼ばれる素人の繁殖者とみなされる。

 Dogs Victoria はブリーダーから犬を手に入れる際、飼い主になる人は最低でも以下のことを実行するように推奨している。

  • ・多くのブリーダーに直接出向き、話を聞くこと
  • ・必ず母犬や父犬を直接見せてもらうこと
  • ・ブリーダーの犬が健康であり、清潔で面倒がよく見られているかなどを確認すること
  • ・しっかりと餌を与えられていること
  • ・子犬が活発でフレンドリーであること
  • ・鼻水や目、皮膚、耳の病気がなく、ノミなどが見られないこと
  • ・ブリーダーに対して沢山の質問をすること、またブリーダーからもあなたに「その犬を責任もって育てられるか」「どのように育てて貰いたいか」という考えからたくさんの質問をされること

 また、ブリーダー側は飼い主になる人物に対して、以下の7項目を提示することを課している。

  • ①ワクチン接種証明書と、そのワクチンが有効であること(それらは子犬の8週齢以下の売買を禁止されることの証明でもある)
  • ②Australian National Kennel Council(オーストラリア国立ケネル協議会)の登録書
  • ③虫下しの飲み薬などで治療、または予防した時にその有効期限と使用頻度を知らせること
  • ④給餌チャートの提示
  • ⑤子犬の将来の性質、気質、体の大きさ、及びそれらのケアに対しての情報の提示
  • ⑥その犬、または犬種特有の健康に影響を及ぼすことが知られている遺伝子疾患、または病気の有無(たとえばブルマスティフでは獣医によるHip とElbowの検査結果の提示が必須)
  • ⑦飼い主に対して、その犬の所有者の責任、子犬のケアと福祉、適切な管理に必要な時間と施設があるかどうかの確認(つまり飼い主は犬の社会化ができるか?充分な運動を提供できるか?適切なフェンスがあるか?犬にとって充分なスペースと安全を確保できるクレートなどがあるかどうか?)

 また、ほとんどのブリーダーは、定期的に飼い主との間で連絡を取り合うことを条件とし、犬が健康を害した時、しつけや訓練方法に関しての疑問や質問、なんらかの事情で飼い続けられなくなった時も含めて情報の共有をすることや、同じ犬舎出身の犬と、その飼い主はファミリーであるという認識を持つことも求められている。

171220_03.jpg

子犬を待つ時間が必要

「犬が欲しい!」「犬を飼いたい」と思っても、オーストラリアの健全なブリーダーでは、すぐに犬を手に入れることはまず不可能だろう。少なくとも半年以上、または1年、1年半待つことは珍しくはない。それは、出産が母犬のカラダにとても大きな負担をかけるため、頻繁に子犬を産ませないからだ。そのためブリーダーから犬を買いたい人は、子犬が生まれるまでの間、そのブリーダーと交流しながら犬のことを勉強する。ブリーダー直伝の子犬用フードのレシピを習ったり、犬に必要な用品を吟味し始めたり、庭のフェンスを直し、釘やネジなどの尖ったものが無いかと家中をチェックしながら新しい家族を迎え入れる準備をする。

 私は「犬を迎え入れるまでの待つ時間」は、特に新米の飼い主にとって重要であり、必要不可欠であると思っている。もちろん特定の犬種を決めるまでに、未来の飼い主はその犬種の特性、必要な運動量、どんな行動が得意であり不得意であるか、どのくらいの居住スペースが必要なのかなどを理解しているだろうが、子犬が来るまでの時間を通じて私たち飼い主は具体的な「子育てプラン」を立てる必要があると私は考えている。

 例えば、子犬が家にきたら、留守番の時間は長くても2、3時間を超えないようにしてあげてほしい。もし仕事などで長時間、家を留守にするのであればドッグシッターに毎日みてもらうことが必要だろう。なぜなら子犬は人間の赤ちゃんそのものだからだ。赤ちゃんには当然、親が必要である。おっぱいを飲み、オムツを取り替え、口や手に取る危ないものを監視することが必要だし、突然体調を崩すこともある。子犬も同様なのだ。7カ月齢から8カ月齢ぐらいまでは、餌を通常3回以上に分けて与える必要があること。トイレを教え清潔を保つこと。なるべく多くの犬たちと過ごしながら、犬社会を学ばせること。飼い主以外のたくさんの人たちに会わせること。自分の家だけでなく、さまざまな環境で過ごすこと......。また、飼い主と一緒にパピースクールに通い、それが終われば犬のマナーを学ぶためにBasic Obedienceを習う必要もあるだろう。そうして、子犬は人と暮らす社会を学ぶのだ。

 子犬を手にするということは、その小さい命を保育園児、幼稚園児、小学生へと成長させることである。子犬がこれらの時間を充分に提供されないまま成犬になった結果、人や犬に対して吠え続ける、極端に怯える、攻撃的な性格になってしまうことは珍しいことではない。

171220_04.jpg

 新米お母さんが10カ月という妊娠期間、赤ちゃんについてさまざまな知識や情報を得る努力をする。それは赤ちゃんのためだけでなく、自分のため、家族のため、そしてこれからの未来のためだろう。その期間、これから訪れる生活をイメージしながら計画を立てたり、名前を決めたりして新しい家族の訪れを待つ。同じ人間同士であっても不安や心配を打ち消すため十分準備するのに、それが「犬」になると、衝動的に買ってしまったり、気軽に犬をプレゼントしたり、ろくに勉強や準備のないまま犬を飼い始めてしまう人があまりにも多い。犬を飼いたい人は、ぜひ「待つ時間」を経験して欲しい。

 今回のオーストラリアの法案をきっかけに「犬を手に入れること」について、改めて考えてもらいたい。

 犬を手に入れるもう一つの方法「保護犬を迎え入れる」については、次回書こうと思う。

◎プロフィール

170611_05.jpg

五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

動物福祉の世界をまるごと応援するBMP(バンプ)

ホームドクターとの連携が「健康寿命」のカギ

ホームドクターとの連携が「健康寿命」のカギ
動物福祉の世界をまるごと応援するBMP(バンプ)