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2017.11.24

ブログ        

コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.4】

自信がなかったこと

―――犬とは無縁の世界にいた放送作家(歴30年の)舘川範雄さんが、初めての愛犬に翻弄される日々を綴る新連載がスタート!―――

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。次々と起きる"どの飼育本にも載っていない"トラブル、アクシデント、ハプニング。心労で3カ月の間、毎晩見るのは犬の夢だけ......。今は笑って話せるけれど当時はそんな余裕ゼロ!途方に暮れながら過ごした日々は、まるで大海原を犬と一緒に漂流しているような気分だった......。
いよいよ始まった、あおとの生活。かわいいかわいい、小さな白クマのぬいぐるみとの穏やかな生活は、1日ともたず幕を閉じることに。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

夜中のパトロール

 あおがうちに来た日。初めてフードを与え、食べ終わった器を洗ったのが、穏やかな暮らしの最後だった。フードを食べ、水を飲めばその次に起こる事は生き物であれば皆同じ。「排泄」である。犬を飼う前の心配事、というよりも自分にやれるのか?というよりも勘弁してほしいこと、それは"出されたもの"の処理。犬を飼うなんて思ってもいなかった頃、知らんぷりしている犬の横で、その処理をしている姿を見るたびに「あれだけは勘弁だな~」と思っていた。「何も出さない犬がいたら飼いたいな~」と、半分本気、半分冗談で言うたびに「だったら飼いたいって言うな!」とみんなにツッコまれていた。

 飼う事を決めてから、YouTubeでトイレトレーニングの映像をいくつも見た。「ワンツー」や「チッチー」と声をかける事もその時に知った。おじさんトレーナーが赤ちゃんに話しかけるように「はい、ワンツー、いい子~」なんて言う動画もあって、≪こんな声を出すのは恥ずかしいからやめよう≫、と思っていたが、まさか自分も「はい、ワンツー」と猫なで声?で排泄を促すのが日常になるとは思ってもいなかった......。

 50代になって初めて柴犬を飼ったという方のブログを読んでいたら、仔犬が初めて部屋でおしっこをした時、そのニオイが強烈だったと書かれていて、≪そうなんだ~ヤだな~≫と、思っていた。犬を飼った事があるという人たちが言っていた、犬自体のニオイにも耐えられるのか心配だったし、大量に抜け落ちるという噂の毛も、≪あ~ヤだな~、どうしよう≫と思っていた。

 メスだからオスのように足をあげてする事はないだろうと思っていたが、初めて立ち会う「排泄」に緊張した。

 トイレシートを敷いたサークル。あおはそこで最初の「小」をした。飼い方の本で読んだ通りに、あおを褒める。ブログで読んだような強烈なニオイはなく(トイレシートの消臭効果もあったのか)これなら大丈夫かも......とホッとした。問題は「大」だ。サークルから出して遊ばせている途中、あおの動きが突然止まった。なにやらおしりを持ち上げている。(まさか!!)時すでに遅し、あおのしっぽの下から、"かりんとう"のようなものがカーペットの上に落ちた!!「うわ~!!やられた」と、あおはそのかりんとうに鼻を近づけ、ペロっ。

「うあーーー!」

 あまりの衝撃に声が出た。これが噂の食糞か!?柴犬はきれい好きって本に書いてあったぞ!なのになんだこれ??意味がわからない。

 それからは、あおが歩くたび、その姿をじっと目で追い、少しでも怪しい動きをしたら抱き上げてトイレシートへ運ばなくてはならなかった。ちょろちょろ歩く後ろ姿が常に怪しく見えてくる。おしりの様子をジ~っと見ながら、ひたすらつきまとう。あおが急に止まるたびに身構え、再び歩き出し、胸をなでおろす。もう仕事など手に付かない。

 仔犬は「大」も「小」も回数が多い。つけ始めたばかりの飼育ノートには、「夜中、小1回」「8:30頃、小」「9:50、小(失敗)」「13:00過ぎ、小」「15:00頃、小」「17:10、小」「18:00頃、小・大」「不明、小」「23:00頃、大」(※「頃」という、アバウトな記録が時々みられるのは、その時間を記録した、もうひとりの飼育員の性格による)。

 とにかくカラダに入れたらその回数だけ出す。健康な証拠だが、それがシートの上でない事もあるし、目を離したすきに出したはずの「大」がどこにもない事もある。また、「大」を1回で出しきらずに、出したと思って安心していると5分から10分後に突然し始める。全てがシートにできないのなら、こちらも覚悟を決め対策を練る事ができるのだが、シートでちゃんとする時もあるものだから、「まだ2カ月なのに、この犬は天才じゃないか?」と喜んでしまう分、失敗した時のショックはかなり大きい。が、一回してくれたら数時間は安心していられる。あんなにイヤだと思っていた「大」を、いつしか待つようになっていた(もうひとりの飼育員はこの頃からそれを「お宝」と呼んでいた)。

 しかし待つとなかなかしてくれないもので、午前0時を回ってもしてくれない時は、確実に我々が寝ている時間にするパターンとなる。そうなったらあの「パクッ」という、恐ろしい瞬間が待っている。

 あおがしないうちは眠れなかった。 一方、もうひとりの飼育員は「したらしたでしょうがないでしょ」と、とっとと眠りにつく。そんな心の強さを持ちあわせていない僕は、連日、夜中に何度も「あおパトロール」に出かけた。

 ある日のパトロールは夜中の3時頃「小」発見!トイレシートを交換。けれどまだ「大」はしていない。しかし次にこちらが起きたのは朝の5時過ぎ。僕は睡魔に負けていた。「まずい!」リビングへ急ぐと、あおが寝ている横のトイレシートに微かな「茶色」を見つけた。よーく見てみるとシートの他の部分もところどころに「茶色」が。やられた!!あおはシートの上でちゃんとしたのにも関わらず、興味本位なのか、それとも本能的に居場所がわからないようするためか、単に腹が減ってなのか、"ソレ"をパクっとやっていた。失敗した!うかつだった!

 自己嫌悪。次の日から僕は【夜中のパトロール】を2時間おきに強化した。

 目覚まし時計をかけるわけではない。気力で2時間おきに目を覚まし、寝室からリビングへ向かった。少し暗くしてある灯りの中、目をこらしてサークルの中のトイレシートを見る。「大」も「小」もしていない。あおは僕の気配を感じて目を覚ましている。「ごめん寝てよ」と小声で言って寝室に戻る。朝までこの繰り返し。我々飼育員に与えられる安息の時間は、あおが寝ている間だけだった。

【飼い主たちが「寝てれば天使」とよく言うのが分かるシリーズ】

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どこでも眠る

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「窓辺のあお」と呼ばれていた頃

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ちょうどこの幅におさまるサイズ

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目を開けたまま器用に眠る時も

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(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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