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2017.11.17

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.3】

ようこそ、我が家へ

―――犬とは無縁の世界にいた放送作家(歴30年の)舘川範雄さんが、初めての愛犬に翻弄される日々を綴る新連載がスタート!―――

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。次々と起きる"どの飼育本にも載っていない"トラブル、アクシデント、ハプニング。心労で3カ月の間、毎晩見るのは犬の夢だけ......。今は笑って話せるけれど当時はそんな余裕ゼロ!途方に暮れながら過ごした日々は、まるで大海原を犬と一緒に漂流しているような気分だった......。
前回、無事対面を果たした飼育員2人が1週間後の引き取りを約束して帰路に着くものの......。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=株式会社浅井企画

やっぱりあおを迎えにいこう!

 何の経験もない、飼育アイテムも心の準備も整っていない我々には、初めての犬をいきなり引き取る勇気はなかった。葵ちゃんのお母さん(今回のあおとの出会いの仲人)に、準備が整うまで預かりますと言ってもらい、我々はその言葉に甘え、1週間後に引き取りにいく約束をした。その間に心の準備を整え、必要なものを買い揃え、万全の体制で迎えに行こうと、"もうひとりの飼育員"と決めた。

 我々は葵ちゃんの家に、近い未来の我が家の住人(?)となる「あお」を残して、帰路についた。

 車中で、そして帰宅しても、あの手のひらサイズの感触が残っていた。生きている証の小さな呼吸音が耳の奥で聞こえる気までしてきた。あれがうちに来るのか......。じわじわと現実味が沸いてくる。と、"もうひとりの飼育員"が、ぶつぶつ言い出した。

「ああ、早くあおに会いたい」
「ああ、あおが今うちにいたらな」

 は?昨日まで「だって11月に来るって言ってたよね!?」と、突然来ることになった状況にまだ納得できない口調だったのに、この変わりようである。
 でもその気持ちわからなくもない。いや、わかりすぎる(やっぱり連れて帰ればよかったかな......)。あと一週間。長い......確かに長い。クレートが届くのは月曜日。最短で迎えに行くとしたらいつだ?もうひとりの飼育員は舞台の稽古と通常の仕事、ダブルで多忙、ふたりのスケジュールが合うのは3日後の火曜日の午後だった。これを逃すと週末まで迎えに行ける日はない。

「やっぱり迎えに行こう!」

 ちなみに、クレートをバリケンネルにした理由は、あおが来ることになってから予習のために読むようになっていた柴犬ブログ「yamatoのひとりごと」の影響。このブログには役に立つ情報と柴犬生活の楽しみ方が丁寧に書き綴られていて、毎日読むのが楽しみとなっていた。その中に、【大は小を兼ねると最初に柴犬の成犬サイズにピッタリの「バリケン200」を購入したが、仔犬には『100』というワンサイズ下のものが良かった】と書かれていたので(どうやらカラダに対して大きすぎるとクルマでの移動中、犬が中で滑ってしまうらしい)最初から100を注文した。このブログを読んでいなかったら、おそらく僕も大きなサイズを買ってしまっていただろう。

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仮サークルの出入り口上部のダンボールはクレートを合体させた時に、仔犬だと抜け出せるぐらいの隙間ができてしまうので、それを塞ぐためにつけた

 リビングをいきなり占拠したサークルとクレート。これから完全に犬中心の生活になる事を実感する。組み立て終わったサークルを見ながら思わず自分に「大丈夫か?」とつぶやいてしまった。

あおがきた!

 2015年9月15日火曜日。夕方、我々は待ち合わせをして葵ちゃん家を目指した。クルマには届いたばかりのクレート。車に酔う犬もいるらしいが、あおは大丈夫か?もし吐いたらどうしよう。それよりこのクレートの中で小をしたらどうしよう。そもそも犬の小も大も処理したことすらないのだ。ついついあれこれ考え、あれこれ不安になってくる。一方、もうひとりの飼育員は僕とは逆で「まあ大丈夫でしょ」と余裕である(だって君も犬飼った事ないよね?)。もちろん心の中だけで言った。

 数日前にお邪魔した葵ちゃんのお宅に到着。リビングに案内されると、そこにあおはいた。

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うごいてるよ~

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と思ったら寝た

(その日葵ちゃんは用事があって会えなかった)葵ちゃんのお母さんとおばあさま(といってもとてもお若いが)にこの3日のあおの様子を聞く。
 葵ちゃんのお母さんは細かく飼育メモを取っていてくれた(※以降、このメモを参考に、あおの生活ノートをつけることになる)。

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 体重1.5kgのこの日の朝は、『フード30gとミルク20mlが食べきれない』少食~。シャンプーまでしていただいていて、至れり尽せり。感謝しかなかった。

「ご迷惑おかけしました。お世話になりました」

 あおをクレートに入れ、料理上手の葵ちゃんのおばあさまにお土産として手料理をいただいて(その前はいなり寿司をいただき、その味に感動。しばらく我が家ではいなり寿司がブームとなった)我々は帰宅した。あおは移動中クレートの中でぐっすり眠っていて、車酔いはしなかった(よかった!)。

 リビングにクレートを運び込み、扉を開けた。ついに、我が家に"生き物"が、"犬"が、"あお"が来たーー!!!

 あおはこの新しい環境にどんな反応をするのか。しばらく、家の空気に慣らす。特に怯える様子もない。我々新人飼育員はサークル内に、お湯でふやかしたフードと飲み水を用意した。

「あお、ごはんだよ」
 あおは何の迷いもなくフードに近づき、夢中で食べ出した。

「食べてる~」
 ぬいぐるみが動き、懸命に食べている。生き物を飼った事のない僕にとって、それは衝撃的だった。自分の家で今、仔犬が食べている。フードの匂いは、人間にはウッとくるような肉々しい匂いだ。異種との暮らしとはこういうものなのか......そんな事を思いながら我々はあおの食事を観察した。

 用意したフードはあっという間になくなっていく。最後は器に顔だけでなく、足まで入れてむしゃむしゃ食べていた(それが「同じ味のモノなんて食べたくないし」と、時々見向きもしなくなるなんて、この時は想像もしなかった)。

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「よかった食べてくれて」
 事前に予習で読んでいた「柴犬の飼い方」の本には、「仔犬にはあまりかまわず、そっとしておくことが大事」と書かれていたので、遊びたい気持ちを抑え、あおをクレートに誘った。しばらくするとあおはあっさりと寝息を立てていた。

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 飼育本には、「家に来たばかりの仔犬は慣れない環境に夜鳴きする事も多い」と書かれていたので覚悟していたのだが、そんな事はまったくなく、あおはあまりにあっさりと我が家になじみ、深い眠りについた。

 これが記念すべき「柴犬漂流生活」の一日目であった。

(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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