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2017.11.03

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コントみたいな犬との暮らし【柴犬生活漂流記 vol.1】

犬を飼う覚悟

―――犬とは無縁の世界にいた放送作家(歴30年の)舘川範雄さんが、初めての愛犬に翻弄される日々を綴る新連載がスタート!―――

2015年・秋。「あお」と名付けた柴の仔犬を迎え入れ、生まれて初めて「犬の飼育員」となった「僕」と「もうひとり」。次々と起きる"どの飼育本にも載っていない"トラブル、アクシデント、ハプニング。心労で3カ月の間、毎晩見るのは犬の夢だけ......。今は笑って話せるけれど当時はそんな余裕ゼロ!途方に暮れながら過ごした日々は、まるで大海原を犬と一緒に漂流しているような気分だった......。
前回のプロローグに引き続き、連載1回目となる今回は、あおを迎え入れる前のお話。

#Lifestyle

Author :写真・文=舘川範雄 協力=(株)浅井企画

あおとの出会いの前の前

「僕も犬、いつか飼ってみたいと思っているんですよ」

それは本番前の何気ない雑談の中だった。初夏のような6月のあの日、僕は初めて撮る短編映画のロケ現場、横浜のとある公園にいた。出演者の一人、菊池亜希子さんがフレンチブルドッグを飼っているという話から、そんな会話の流れになった。犬を飼うなんて、「いつか世界一周してみたいですね」くらいの現実味のないものだった。「犬、飼ったことある?」と聞くと、他の出演者も皆、「あります」「実家で飼っていました」と、全員が犬を飼ったことがあるという。主人公を演じる子役の女の子は、今まさに飼っているという。しかも柴犬を。

「犬を飼っていて楽しい事はなんなのか?」「一人暮らしでも犬は飼えるのか?」「やっぱり犬は臭いのか?」など、犬のことを知らない僕からのドーでもいい質問に、みんなが答える形で雑談は進み「でもいろいろ大変だし、まあ、いい出会いがあれば飼ってみたいな」と、いつもの言い訳で話をまとめ、話題は他に移った。

 犬を飼ったこともなければ、抱き上げたことも、撫でた記憶もないのに、なぜか犬を飼うことへの憧れはあった。一番は関根(勤)さんの影響だ。関根さんも40代で念願だった犬との暮らしを実現させた。同じ年代に入り、自分もそんなことができるようになるのかな、とぼんやり思っていた。

 もうひとつは「散歩」。運動不足解消のために始めたウォーキングとジョギング。どうせ外に出るならひとりじゃなくて、相棒と一緒だったら楽しいだろうなと思いながら歩き、走っていた。でも、実際に飼う勇気はまったくなかった。なので、これまで「世界の犬カタログ」なんて本を、飼ってみたいなと思う度に何冊か買っては眺めて終わらせていた。夢物語で終わらせておくのがちょうどよかった。

 しばらくして、さっきの「犬の雑談」をただ聞いていた、子役・今瀬葵ちゃんのお母さんに話しかけられた。

「私、以前柴犬のブリーダーをしていたことがあって......」
(え~!?なぜ今このタイミング~?ずっと会話に入ってこないので興味がないのだと思っていたのに----)
「知り合いに犬のブリーダーがいるので、ご紹介できますけど......」

『いつか世界一周してみたいですね』は、業界の「今度ごはんでも」と同じぐらい現実味のない話で......。でもこれが出会いなのか?縁なのか?戸惑いながらもその時は「じゃあもしそうなりましたら、ぜひ」と、積極的なようで、とても曖昧な返事をしつつ、一応連絡先はお渡しして、2日間の撮影を終えた。

葵ちゃんのお母さんからの電話

撮影が終わり、1週間が過ぎた頃。後輩の芸人が出演する舞台を観た後、僕は新宿御苑駅に向かっていた。観劇中オフにしていた携帯電話の電源を再び入れると、見慣れない番号の着信が表示された。誰?もしかして、葵ちゃんのママ!?留守電メッセージを聞いてみると、予想通り。家に帰って落ち着いてから電話をしよう......と一瞬思ったが、せっかち気質、その場ですぐに電話をかけていた。

「お電話頂きまして......」

「......先日の犬のお話なんですけれど、知り合いのブリーダーと連絡が取れまして、どうされますか?先方から希望を聞いて欲しいと言われまして。引き渡しはいつごろがご希望ですか?」

 来た......ついに覚悟を決める時が......。これが今まで経験したことのなかった、噂のトントン拍子というものか?家にいる「もうひとり」は元バックパッカーらしく、座右の銘が「経験できることならなんでもやろう!」。先に覚悟を決めていた。僕も人生の流れを変えてみたいと思っていた矢先だった。

「秋以降はスケジュールに余裕ができるのですが......」
 8月は関根、小堺両氏の舞台があり、犬を迎え入れる余裕はなかった。

「今からお願いすると、9月頃に生まれますから、ちょうどいいですね」

「え?犬ってそんなに早く生まれてくるんですか?」

「犬は2カ月で生まれてきます」

 当時はそんなことも知らなかった。でも、何かに"犬は生まれて3カ月くらいは親や兄弟と一緒に過ごす"と書いてあったことを思い出し、9月に生まれて、うちにくるのは11月頃......ちょうどいい!それまでに犬についていろいろ勉強して、必要なものもじっくリ吟味して用意しよう。我々の背中を押してくれた葵ちゃんのお母さんに感謝しつつ、僕はその時、覚悟を決めた。清水の舞台からの眺めは、こういうものなのか......。思い切って飛んでみた。

「この御縁を大切にしたいと思います。よろしくお願いします!」

 こうしてついに、ついに!我が家に犬がくることになったのだった!

いきなりの電話

 木曜日の午後、家に篭って書き物をしていると、やたらと眠くなるので、その日は環境を変えてみようと、近所にできたスタバで作業をしていた。しかし場所をどこにしようとやっぱり眠くなる......。ウトウトとしかけていた時、着信で電話が震えた。葵ちゃんのお母さんからだった。

「もしもし、さっき連絡がありまして」
 そろそろ我が家にやってくる犬が生まれる頃だと、うちにいる「もうひとり」と話していた。そうか、ついに生まれたか!

「......今週末に引き渡しをしたいというんですけれど......」

「は?」

耳を疑った。いや、耳を疑う余裕すらなかった。ズバリ、意味がわからない。話している葵ちゃんのお母さんも驚いているようだ。

「私も知らなかったんですけど、犬はもう生まれていたようで」

「え~!?生まれてたー??」
 どういうこと?

「それで今週末に引き渡しをしたいということで......」

 困った!!まだなんの準備もできていない。荷造り終わってないのに引越し屋さん来ちゃったよー!だ。またタイミングが悪いことに、この日「もうひとり」は撮影で金沢に行っていて連絡も相談もできない!

「もし今週末が難しいようでしたら、うちにも犬はいますから、仔犬を預かることはできますので遠慮なく言ってください」

 葵ちゃんのお母さんの言葉に甘えるか?でも週末のスケジュールは多分大丈夫。だけど心の準備と犬を迎え入れる準備が全くできていない!!うちに連れてくる勇気、全然出ない~!

「とりあえず、週末伺います!」

 電話を切るやいなや、車に乗って、11月になってから探せばいいと思っていたサークルとクレートを探しに出かけた。クレートは(毎日チェックして予習していた柴犬ブログを参考にして)バリケンネルにしようと思っていたので、近くのペットショップへ行ってみると......ない!!確かお台場にペットショップが何軒かあったはず!問い合わせるが、ここにもない!!すっかり周りは暗くなり、路肩に停めた車の中でスマホでネット検索。やっとお目当てのモノを見つけて購入ボタンを押した。でも届くのは週明け!!土曜には間に合わないーー。さらに前々からこれにしようと決めていたサークルは、さらに届くのが先になることがわかった。サークルがないと迎え入れることは無理だ(と、本に書いてあったので)、仮住まいにはなるが、(そして、いずれ本当のサークルが届くので散財にもなるが)近くの量販店で、小さなサークルを購入した。

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サークルとクレートを合わせたら隙間が!「ここから逃げたらどうしよう!!!」と、慌てて段ボールで塞いだ。今見ても見栄えが悪い

 とりあえずの準備が終わったところで、金沢にいる、「もうひとり」にメールをした。
<犬が来ちゃう......どうしよう>

 彼女はこのメールを帰りの新幹線の中で読み、いきなりの展開に思わず「え~~~!!!」と大きな声をあげ、隣の席で寝ていた人が驚いて飛び起きた、とあとから聞いた。

 そして二日後。9月12日(土)快晴。まだ夏の暑さが残る午後、僕たちはまだ「犬と暮らす人間」としての心構えがまったくできていないまま、期待と不安で頭の中がごちゃごちゃのまま、対面場所に提供してもらった葵ちゃんのお宅のドアを開けた。(つづく)

◎プロフィール

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舘川範雄 (たてかわ のりお)
1966年9月19日生まれ。1987年4月から作家活動に入る。
「コサキン」「SMAPxSMAP」「ポンキッキーズ」「スクール革命!」などテレビ、ラジオで多数の番組構成を担当。また関根勤主宰「カンコンキンシアター」の他、オリジナルコメディーやミュージカルの作・演出など、活動は多岐にわたる。
インスタグラム(ao20150721)で白柴「あお」が毎日、犬の目線で日々の出来事を投稿中! 

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