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2017.11.30

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犬の飼い主に求められること vol.9

犬がいない非日常を楽しむために

私たち飼い主がこの社会で生活する以上、大きなイベントなどで犬と一緒に過ごせない非日常が必ずある。今回は日本への里帰りを通じて飼い主も犬もお互いに心配しすぎない日々を作ることの大切さ、そして日本でのドッグダンスのレッスンを通して直接習う楽しさを届けてみたい。

#Activity / #Lifestyle

Author :文・写真=五十嵐廣幸 写真提供=白石かえ、三井惇、ピースワンコ・ジャパン

パートナーのいない非日常を楽しむために

 私は一年に一度の割合で日本に里帰りをする。目的の一つは両親に顔をみせることであるが、今回は東京ドームでの「桑田佳祐Live Tour 2017 がらくた」、docdogライターでもある三井惇さんから「ドッグダンスを習う」などメインイベントは盛りだくさんだった。

 

【2017年11月9日(木) 出発日】
 午後8時過ぎ、犬を預けるためにいつもの犬のデイケアへ連れていく。餌は一回分を小袋に入れておいた。二つ用意した犬の器には明日の朝晩の餌をスタンバイ。毎食分に分けることは、あげ過ぎを防いで相手の手間も減らせる。また手作り食の場合は、衛生面を考えて個々に冷凍ができることも大きな理由だ。滞在中、怪我や病気になった時のために以下の二つをお願いした。

・私と連絡がつかない場合も含め、万が一の時は最善の治療をしてもらいたいこと
・かかった治療費は立て替えてもらい、必ず支払うことを約束

 また、渡航中の事故などで、もし私が戻れない場合は愛犬の世話をし続けて欲しいことを確認して、いざ日本へ。See you soon my lovely dog!

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メルボルン・タラマリン空港。夜の便は寝坊の心配がなくていい

【2017年11月10日(金) 日本到着】
 メルボルンを出発したJAL774便はノンストップで、朝8時過ぎに成田国際空港に到着。空港からそのまま都内のホテルに荷物を置き、中学時代の親友がやっているラーメン屋に向かう。なにもかも一年ぶりの日本、一年ぶりのつけ麺である。

 毎日、犬とべったりな私でも留守中の犬の心配はほとんどしない。今頃、犬は庭で遊んでいるだろう。小川に連れていってもらい、水遊びを楽しんでいるかもしれない。遊び疲れたら、他の犬たちと一緒にリビングの床で寝るはずだ。愛犬は泊まることにも慣れている。彼女にとってデイケアはもうひとつのHome。これはその環境を楽しむために少しずつ練習した結果だ。

 飼い主の旅行中でも、愛犬が「飼い主と過ごす時と同質の運動や安心感」を得られる環境は大事だ。はっきりと言えば、飼い主が遊ぶことを理由にそのしわ寄せが犬にいき、十分な運動がないまま狭いケージ内で待たせ続けることに私は違和感を持つ。

 旅行中のパートナーがいない「非日常」をストレスなく、健全に過ごせるための方法を見つけることができれば、犬もそして飼い主自身も、その心配を大きく減らすことができるのではないか?私たち飼い主は「小学生のこどもを修学旅行へ安心して送り出せるように」安全のための準備を怠らないこと、いってらっしゃい!と勇気をもつこと、勇気もたせることが大事だと思う。

(この日の予定: 歯科検診、理髪店で髪の毛を切る、友人たちと再会)

Oscar's Law (オスカーの法律)

【2017年11月11日(土) 滞在2日目】
 買い物先で偶然、子犬子猫がいっぱいのペットショップを見つけてしまう。多くの人で賑わう店内。私は外で立ち止まって暫くの間その様子を見ていた。そういえば、日本に出発するギリギリまでOscar's Lawについて書いていたのだ。

Oscar's Lawとは
1. パピー・ファクトリーの廃止(パピー・ミル、パピー・ファームと同じ意味)
2. ペットショップやインターネットなどのオンラインでの動物の取引の禁止
3. 保護施設やシェルターから、犬の譲渡を促進すること

 Oscar's Lawはオーストラリア全土で運動をしている団体名、活動名である。オスカーとは、パピー・ファクトリーで二度救われた小型犬の名前。そのオスカーをシンボルとしたOscar's Law に刺激を受けた、多くの人たちによってオーストラリア・ビクトリア州の生体販売店はほぼ無くなった。この日本もグローバリゼーションを目指しているのだろうが、その意識は未だに鎖国状態のようにも感じる。

犬好きの証、そしてウレション

【2017年11月12日(日)  滞在3日目】
 ピースワンコ・ジャパン世田谷譲渡センターに遊びに行く。昨年オープンした時にも、伺ったことがある。フレンドリーな犬、シャイな犬、どの犬もとてもキュートで魅力的だ。犬たちと時間を楽しく過ごす。保護犬に限らず、犬と接する上で大事なことは彼らから挨拶があるまで待つことだと個人的に思う。人間同様、犬だって突然覆いかぶさるように近づかれたら、すごく怖いはず。犬が近づいてきたら、ゆっくりと手を差し出して「こんにちは」と匂いを嗅いでもらい、時間をかけて仲良くなることが大事。センターで販売しているオリジナルTシャツとピースワイルドジャーキーを購入。買ったジャーキーは担当者の方に許可を貰い、犬たちのおやつとして食べてもらった。

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世田谷譲渡センターで里親を待つ犬たち

 犬が好きでも飼うことができない。ペット不可の物件だから飼えない。そういう方もぜひ、譲渡センターや譲渡会に遊びに行って時間の許す限り犬たちと過ごしてみたらどうだろうか?「犬を飼うこと」だけが犬好きの行動ではない。いろいろな事情を考えて飼わない勇気をもつのも犬好きの証、ボランティアとして犬の散歩や世話をすることも立派な犬好きの証。犬好きだからこそ、あなたが行けば犬たちはしっぽを振って迎えてくれるはずだ。

(この日の予定:家族全員で食事)

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東京ドーム「桑田佳祐 がらくた Live」興奮しすぎて「イガラシ、ウレション寸前」

ついにドッグダンスを習う

【2017年11月13日(月) 滞在4日目】
 日本に里帰りをしようと決めた時、一番初めに連絡をしたのはドッグ・トレーニング・インストラクターの三井惇さんだった。世の中にはたくさんの犬とのアクティビティがある。Sheep Herdingと呼ばれる羊追い、ディスクドッグ、アジリティ、今流行りのノーズワーク、そして私が今一番気になっているのがドッグダンスである。

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 ドッグダンスは愛犬とのコミュニケーションそのもの。しかしオーストラリアに住んでいる私は、犬を簡単に日本に連れてくることはできないので、今回は三井さんの 愛犬ニコル(ブラック&ホワイトのボーダーコリー)を臨時パートナーとしてレッスンをお願いした。

 ドッグダンスの魅力は、なんといっても「犬と人間との調和・ハーモニー」だと思う。ハンドラーが求める動きに対して、犬は正しくキュー(合図)を理解して行動する。そこには人と人、または同じ言葉を持つという共通項ではなく、犬とハンドラーとの「大きな信頼関係」が土台にある。そしてパートナーと一緒に練習し、築き上げた動きが「ダンス」として映し出されるのだ。その動きはフィギュアスケート、シンクロナイズド・スイミングの息のあった演技そのものである。

 ドッグダンスが多くの人にオススメなのは、ドッグダンスの根本がobedience(服従訓練)にあるという点だ。この服従訓練というのは簡単に言えば、「リードを引っ張らないで散歩ができる」「呼んだら戻ってくる」などの犬が身につけるべき基本。私たちで例えるならば、「箸を正しく使う」「はじめましてなどの挨拶」といった当然の所作だ。ドッグダンスを習うことは、同時にその基本中の基本をマスターできることでもある。

 またリードを使わないドッグダンスは、ハンドラーとして大きく成長できることも魅力の一つであろう。ハンドラーは犬に対して常に「楽しい」を伝え、人間目線ではなく「犬の目線」になって正しく基本を教えることができる。それは私たちが犬という動物と暮らす上で、なによりも大切で身につけるべきスキルだからだ。

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習うことは楽しい

 私はどんな習い事でも、プロから直接教わることが好きだ。それは犬のことも同様で、その道の達人が試行錯誤、経験して得た凝縮したものや、犬からの応え(ある作用に対する犬の反応)を飼い主ひとりで悩むことなく、ズバリと教わることができるからだ。そして直接習うことは、冷静で客観的な視点で判断してもらえる。「何が必要なのか?」と犬だけでなく、自分自身の問題が明確になるのだ。

 今回はプライベートレッスンということもあり、ドッグダンスを直接見たことがない私は、特別にお願いをしてダンスを見せてもらった。

 三井さんとニコルとのダンス、その全てのコミュニケーションはキューと呼ばれる三井さんの静かな言葉で成立している。三井さんと私との距離は5メートルも離れていないのに、その言葉は聞き取れないほど繊細である。三井さんの足と足の間をスムースに潜り抜けるニコルのかわいらしさ。見事なサイドステップでの移動、遠隔操作とも呼ばれる、ニコルだけが後退しながら移動し、くるりとカラダを回転する技。これらはまさにダンスそのものだ。CDプレイヤーから音楽が消えるのと同時に、ダンスも静かに終わった。そこにいた全員が、素敵なペアに向けて拍手を送った。

「ハンドラーとパートナー(犬)の間にフィフティフィフティの関係が無ければ、犬と一緒に何かするというのはとても難しくなります。反抗したいのを無理矢理抑え込んでいれば、あとで必ずしっぺ返しがきます。そのため犬が進んでやりたくなるように、日々のトレーニングの中で関係性を築いていかなければなりません。演技の間、次から次へとハンドラーから出されるキューを正確に聞き取り、瞬時に反応することが要求されるドッグダンスは犬種による特性を超えて、ハンドラーとパートナーが創りだす作品と言ってもいいでしょう」

 これは「犬はどうやってダンスを覚えていくのか?」にある三井さんの言葉だ。どのくらいの飼い主が、犬との健全な関係を築くためにアクションを起こしているだろうか?私たちの周りで見かけるドッグランや散歩の風景をとっても、犬に対して可愛がるだけ、一方的に与えるだけ、犬への強引な命令、飼い主中心の考えや行動、そして自分の犬にさえ無関心な人が多いように感じるのは、私だけだろうか?

(レッスン後の予定: 犬座談会と白石さん宅で大宴会。ごちそうさまでした!)

【2017年11月14日(火) 帰国】
 午前9時過ぎに成田空港第2ターミナルに到着。預け入れ荷物二つ(なんと合計46kg)と、膨れ上がったリュックサック。重すぎる!!!!分厚すぎる犬図鑑、サザンや桑田佳祐のDVD、新米に味噌、醤油。そして凝縮された思い出をもってメルボルンに向けて発進!愛犬が待ってますぞー。

 日本で食べられなかった牛丼は機内食で堪能。うまい!

里帰りを通して思うこと〜飼い主の社会化〜

 私たち飼い主も当然、犬を飼っていない人たちと同じように同僚や友達との付き合い、習い事や出張、冠婚葬祭などの出来事がある。これらが「犬を飼っているから」と出席しないことが許されればいいだろうが、そうはいかない状況も多いはず。今回の「両親に会いに行く」という里帰りも、「犬が寂しがるから日本に行けない、両親に会わない、会えない」という選択は、飼い主としては十分かもしれないが、人として不十分な気がする。逆に、犬を1カ月もに2カ月も他人に預けっぱなしにすること、留守中の犬の運動を犠牲する、犬のストレスを無視するなどは飼い主として不十分とも感じる。

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 私を含め、犬を愛する者が陥りやすいのが、生活のほぼ全てが「飼い主だけの目線」「極端な犬オタク」になりがちなところだ。しかし飼い主でありながら、この社会で「客観的な目線」「公平さ」を保つには、犬と同じように、私たち飼い主自身も社会化が必要であること、飼い主自身が犬に依存しすぎないことも重要ではないだろうか?

「犬を飼う・犬の飼い主になる」ということは「行動を我慢することではなく」、犬を飼わない他の人と同じような行動範囲を持ちつつも、飼い主として正しい行動を起こすことではないだろうか。

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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