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2017.10.23

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.2

リードの使い方

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。
今回は普段当たり前のように使っているリード(リーシュ)の使い方についてお話したいと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

リードは命綱

 愛犬と散歩に出るとき、当然のように手に握るのはリードです。リードを見ると散歩好きの犬たちは大騒ぎしたりします。もちろんリード以外のグッズを見ても犬たちは反応するものですが、リードは一番わかりやすいかもしれません。しかし、いざリードが付けられると犬たちの様子はどうなるでしょうか。リードを引っ張ることなく、飼い主の傍を飼い主の歩様に合わせて歩くことが理想的だと私は思うのですが、中には子犬のころのように元気よく飼い主の前を走っていく愛犬を見て微笑ましいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。小型犬であれば、多少引っ張られても転ぶことはありませんが、これがシベリアン・ハスキーだったりゴールデン・レトリーバーであれば、腱鞘炎になったり、腰痛になったりと身体的な不調が現れてくるかもしれません。

 そもそも犬にとってリードとは何なのでしょうか。おそらく自由を阻害する物であると同時に、飼い主が傍にいることを実感できるものなのではないかと、私は思います。

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リードが張っていなくても飼い主がちゃんと後ろにいるか目視している若犬

 リードがあることによって、行きたい方向にいつも行かれるわけではないと犬が学ぶ第一歩がリードの存在を理解することです。リードは犬に意地悪をするためではなく、犬の安全を守るための大事なツールだと犬が理解するのは難しいかもしれませんが、リードが付いているときにやってほしい行動(マナー)を教えることはできます。したがって、リードを介して犬と引っ張りっこをするような状態は、リードの役割に反したものと言えるでしょう。

 リードが張ったら、それ以上には行かない。行くと危ないかもしれない。そんなことを犬に理解させていくためには、普段からリードが張っていない状態でいることを習慣にしていくことが一番だと思います。リードを介して犬と引っ張りっこをしているうちは、犬も引っ張りを止めません。しかし、もし岩にリードが繋がっていれば、犬も無理矢理引っ張るような無駄な行為を長く続けることはありません。飼い主が引っ張り返したり、あるいは引っ張る犬に付いて行ってしまうと、犬は躊躇することなく引っ張り続ける行為を繰り返すでしょう。

 小さい子どもが、いつも親の手を引っ張るように前を小走りしている姿を想像してみてください。車道に飛び出したり、曲がり角で止まらなかったりすれば、車や自転車とぶつかってしまう可能性もあります。このような状態では、親はとても子どもの安全を確保できませんよね。

リードがあっても無くても飼い主との距離感を保つ

 リードが付いている時にどうやって歩いてほしいかということを、犬たちに伝えるのと同様に、リードが無い状態でも上手に歩ける練習をする人はいるでしょうか。

 オビディエンス(服従訓練)やドッグダンスなど、リードを付けないで犬がハンドラーのすぐ横を歩くことが要求される競技においては、当たり前のようにリードを付けずに犬とハンドラーが歩く練習をします。しかし、一般の家庭では散歩時にリードを付けることが義務となっているため、敢えてリードが無い状況で脚側行進(犬がハンドラーの横を並んで歩くこと)を教える人はいないかも知れません。しかし、リードが付いている時だけ傍にいる練習をしていては、リードが無いときに犬をコントロールすることは難しいのではないでしょうか。

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リードが付いていなくても、呼べば戻って行動を共にしてくれると危険を回避しやすいですね

 日本の、特に都会においてはリードを離すことなどほとんど無いから必要ないと言われるかもしれませんが、ドッグランであったり、あるいは旅先であったり、犬をリードに繋がなくてもいいエリアに入った時、安全のために傍にいて欲しいと思った犬が、リードを離した途端どこかにとんで行って戻ってこないのでは困りますよね。

 リードのあるなしに関わらず、愛犬が飼い主との距離を確認し、呼ばれればすぐ戻り、飼い主の傍で待機できれば飼い主はいつも愛犬の安全を確認することができるでしょう。そのためにはリードが緩んだ状態で飼い主の横を歩く練習をすることに加え、リードが無い状態でも同様に飼い主の傍を落ち着いて歩く練習をしておくことをお勧めします。犬たちは頭がいいので、リードが繋がっているときとそうでないときをきちんと理解しています。リードのあるなしによって態度を変えることもあります。だからこそどんな状況であっても飼い主のキュー(指示)があれば、飼い主の傍に戻って落ち着いていることができるように日ごろからリードが緩んでいる状態や、リードが付いていない状況で一緒に歩く練習をしておくと安心ですね。

リードの長さがポイント

 ここまでリードが愛犬を護るための大事なツールであると共に、リードに頼りすぎてはいけないと書いてきましたが、最後にリードの使い方を間違えると危険な場合があることをお伝えしておきましょう。

 犬も人間と同じで気質、性格などに個体差があることは周知のことですが、当然のことながら好き嫌いもそれぞれ異なります。誰にでもフレンドリーに対応できる犬もいれば、ひとつひとつ石橋をたたきながら確認していくタイプ、できれば周囲とあまり関わりたくないタイプなどさまざまです。

 飼い主さんとの散歩の中で、飼い主さんと並んで平常心で散歩ができる犬であれば、リードの長さや、リードのあるなしに関係なく、まったく問題は起きないでしょう。向こうから犬が近寄ってこようが、吠えかかってきそうな犬がいたとしても、相手にせず飼い主さんとの時間を優先してスルーできる。私個人としては大変理想的なパートナーだと思いますが、なかなかそうできない犬が多いのも現実です。特に若い犬はいろいろな刺激に負けてしまい、飼い主への集中が取りづらいものです。

 遠くに犬が見えただけで、ジタバタしたり吠えたりしながら興奮してしまう犬。遊びたくて飼い主を引っ張って行こうとする犬。いわゆる『マナーが良くない犬』は普通にいます。それは犬が悪いのではなく、「世の中には私たち以外に沢山いろいろなものがあるけれど、すべてがおまえと関係があるわけじゃないから、私が気にしないときはおまえも気にしなくていいんだよ」ということが、まだ理解できていないことが原因と言ってもいいでしょう。

 そんなとき飼い主がリードを引っ張れば犬は引っ張り返し、無理矢理引っ張れば犬にストレスをかけて事態を悪化させてしまうかも知れません。そこで重要になるのがリードの長さです。リードが短いと飼い主との距離は必然的に近くなりますが、逆に犬が考えて行動する距離もほとんどなくなってしまいます。気になるものがあってちょっと立ち止まっても、飼い主が2~3歩離れればリードが張ってしまい、物理的に犬はそれを確かめることができなくなります。また、怖いものと遭遇したとき、それを克服するための時間が必要な犬にとって、短いリードでは怖いものから距離を取ることができません。逃げられないとわかると犬は吠えたり噛んだりという自己防衛本能が出て、思わぬ事故を引きひきおこしてしまうかもしれません。

 犬が気になるものを自ら確かめたり、安全を確認したりするためには、リードが張った状態でいつも飼い主がすぐ後ろにいる状況ではなかなかできません。犬が自分で自信を持って行動するためにはある程度のリードの長さが必要です。飼い主から1メートル以上離れたとしても、自分の足でしっかり立ち、呼ばれれば自分から戻ってくるという習慣を付けて行かないと犬は自分で考えるのではなく、飼い主が引っ張るから傍にいるということが常態化してしまいます。もしリードが無くなり自分を引っ張るものが無くなればおそらく犬はどこかに行ってしまいすぐには戻ってこないでしょう。

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初めての散歩で子どもと遭遇した子犬。リードが緩んでいるので、自分で飼い主の後ろに隠れて様子を見ています

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自分の意思で飼い主の陰から出てきて、子どもの方に寄って行こうとしている子犬

 子犬や周囲の刺激に対して免疫の少ない犬の場合、私はロングリード(5メートル)を使います。長いとリードさばきは難しくなりますが、リードが張らない距離で犬が自分の意思で考え、行動することを教えていくのに効果的だからです。もちろん呼び戻しの練習にも使います。短いリードでは犬との距離が取れず、犬が自分から呼ばれたら戻るという行動を身に着けづらいためです。

おわりに

 都会でなければ、犬たちはリードの無い状態でも飼い主との距離を測りながら上手に散歩ができる練習をすることは可能でしょうが、なかなかそういう環境に暮らしている幸運な犬は少ないものです。リードが張った状態が当たり前のように飼い主を引っ張って歩くのではなく、その場その場の状況に合わせて、飼い主に寄り添ったり、あるいはちょっと離れたりしていても、飼い主との距離を確認しながら散歩ができるようになるといいですね。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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