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2017.10.10

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トレーナー直伝!愛犬との暮らしに役立つワンポイントアドバイス vol.1

家でできることは外でもできるようにする

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。これまで、ドッグダンスについてあれこれお話させていただきましたが、今回からはドッグダンスや犬に関わる仕事、犬との生活の中で気づいた、愛犬との暮らしに役立つさまざまなことを、ご紹介していきたいと思います。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

飼い主さんの素朴な疑問、「家ではできるのに」

 公園などで犬連れの方が、愛犬に「オスワリ、オスワリ、オスワリって言ってるでしょ」と何度も声をかけながら、最後は「家ではできるのに、なんで外だとやらないの?」とつぶやいている姿をみかけることがあります。それは、"家でできるのに、外でやらない"のではなく、"家ではできることを、外でやる練習をしていないから外ではできない"だけなのです。

 犬を家族に迎えると、一番初めに教えたくなる「オスワリ」。一度できるようになると、飼い主はもう「オスワリ」は完璧だと思い込んでしまいます。しかし、家の中という慣れた環境で、周囲に刺激もなく、飼い主に意識を集中しやすい場所でできた「オスワリ」が、果たして散歩中の道端や犬たちが楽しそうに走り回るドッグランでできるかと言えば、答えはNo。練習していないことは、犬だってできないのです。

 では、外でもできるようになるための練習とは、どういうものでしょうか。
「オスワリ、オスワリ!」と連呼して、その結果犬ができなかったことが繰り返されていけば、犬はできなくてもかまわないと学んでいきます。
 できないことをできるようにするためには、ハードルは少しずつ上げていかなくてはいけません。30cmのバーが跳べたからといって、次に1mのバーを跳ばすのは無謀ですよね。30センチの次は35cm、その次は40cmと少しずつ高くして成功体験を積んでいくことがポイントです。30cmを飛び越えてせっかく自信がついたのに、1mで失敗してしまえばやる気をなくしてしまいます。
 家の中でオスワリができたら、これから散歩に出ようとする玄関の外でもオスワリの練習をして成功させます。急にドッグランの中で座らせるのではなく、公園のあまり犬が接近してこない場所を選んでオスワリをさせてみる。次は、向こうから犬が歩いてくる状況でチャレンジしてみるなど、さまざまな状況で練習を積み成功体験を増やして初めて「オスワリ」が完璧になるのです。同時にハンドラー(飼い主)との位置関係も、重要になってきます。いつも向かいあって「オスワリ」と声をかけていたのが、急に並んで歩いているときに「オスワリ」と言われると、犬はハンドラーの前に回り込んで座ろうとします。犬にとっての「オスワリ」の景色は、"ハンドラーと向かい合って、ハンドラーが自分を見て「オスワリ」と言いながら人差し指を立て、前かがみになっている"と刷り込まれているからです。この景色がひとつでも変わってしまえば、当然犬は混乱してしまうのです。

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家の中でできたオスワリを外の静かな場所でできるようにする

「オスワリ」ひとつとってもいくつもの工程が必要になるのですから、「フセ」や「オイデ」も同様に一段ずつハードルをクリアしていかなければ完璧にはなりません。「別に完璧でなくてもいい」とあきらめないでくださいね。なぜなら、こういった日常マナーは芸ではなく、愛犬の安全を確保するために教えておきたい大事な行動なのです。

 例えば、散歩の途中で小さい子どもが「わんわん」と言いながら愛犬に近づいてきたとします。愛犬が子どもを苦手と感じないタイプであれば、飼い主はきっと微笑みながらその様子を傍観しているでしょう。しかし、小さい子どもの行動は予測がつかないものです。例えそばに保護者がついていたとしても、子どもの急な動きを制御できるとは限りませんし、愛犬が興奮して子どもに飛びついてしまうかもしれません。小さい子どもやお年寄りに中型犬以上の犬が飛びつけば当然転倒という事態も招くおそれがあります。そんなとき、愛犬を座って待たせておくことができれば事故も未然に防ぐことができるのです。

 また、何かの拍子に愛犬のリードが手から離れてしまった場合でも、呼び戻し(オイデ)ができていれば、自転車や車に当たったり、あるいは驚いた子どもが走り出して事故にあったりという悲劇を避けることもできます。

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他の犬がいても、飼い主が少し離れても、落ち着いて待っていることを練習する

 犬を飼うということは、愛犬のことだけではく、周囲のことも考えなくてならないのです。もちろん周囲に迷惑をかけることになれば、愛犬の死活問題にもなりかねません。とどのつまりトレーニングは、愛犬のためといっても過言ではないのです。

練習をしていれば、どこへ行っても完璧?

 ドッグスポーツや競技会に参加しているペアは、日ごろさまざまな状況を想定しながら繰り返し練習を重ねていますが、だからといって本番で必ずパーフェクトな演技ができるとは限りません。それはなぜでしょう。簡単です。練習とまったく同じ環境ということは、絶対ありえないからです。

 例えばあるドッグスポーツの競技に参加したとしましょう。やるべき練習を重ね、競技会場にも何度か足を運んで場馴らしをしたとしても、その日の風向きや地面から立ち上がる匂い、周囲の犬たち、音響の音量など、さまざまな要因が犬の集中を切らしてしまうかもしれません。それでも今まで重ねてきた練習によって、犬たちは平常心を保ちやすくなっているはずです。

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初めての場所や周囲の環境の変化によって犬も緊張します。

 先日の都立公園で行われたドッグダンスのデモも、周囲の観客や犬の吠え声など、多くの刺激にあふれる中、日々練習を重ねてきた犬たちが登場。100%のできではなかったとしても、ハンドラー(飼い主)とアイコンタクトを取りながらハンドラーの声に耳を傾けて頑張っていました。素晴らしいことです。

 実はその日、ドッグダンスのデモのあとに鷹匠のパフォーマンスもやっていました。鷹が放たれ鷹匠のもとに戻ってくるはずが、園内の木にとまったとたん地元のカラスたちに騒がれ、しばし移動できなくなってしまうというハプニングが起きました。
 その後しばらくしてから鷹は一度別の建物の屋根の上に退避し、鷹匠のもとに戻ってくることができましたが、その時のデモのアナウンスでも、鷹が新しい環境に慣れていないことや、地元カラスとの予想外の攻防などについて説明していました。
 見知らぬ場所や慣れない場所は、犬だけでなく鷹も苦手というわけです。

すべては愛犬のため

 ここまで、犬に伝えたいことを確実に身に付けてもらうための手順を簡単にお話してきましたが、それはなにも競技でよい結果を出そうとする人間のためだけではありません。

 犬のストレスサインには、「吠える」や「匂い嗅ぎ」などがあります。言われたことがわからない。どうしていいのかわからない。そんな時も犬は吠えたり、匂いを嗅ぎにふらふらしたりすることがあります。愛犬になにかやってもらおうとしているとき、鼻鳴き(キューキュー言う)や、匂い嗅ぎが出始めたらそんなサインです。愛犬を「できる」状態にさせてあげることは愛犬に自信をつけさせ、無用な負荷をかけないことにも繋がります。わかりやすく伝え、理解させ、納得してもらうことで、愛犬との信頼関係も深めていかれるのではないでしょうか。
 家の中では阿吽の呼吸で通じ合う仲になれたとしても、外や刺激の多い場所ではなかなかお互いの気持ちが伝わりづらいこともあります。そんなときはいつもと違う環境だということを理解してあげると、犬にも優しく接してあげられるかもしれませんね。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●HP:http://wanbywan.com/
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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