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2017.10.19

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犬の飼い主に求められること vol.6

あなたが愛犬を捨てないために

殺処分ゼロや保護犬に多くの人が関心を持ち始めてきている。家族同然に犬や猫などの動物を愛している飼い主がいる一方、飼育放棄される犬が後を絶たない状況がある。私たち飼い主は、「犬を捨てないための具体的な方法」を考えておかなければならない。「なぜ飼い主は犬を捨てるのか?」を知り、それを防ぐために飼い主としてやるべきことを考えてみたい。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=sarii、docdog編集部 文=五十嵐廣幸 協力=特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

買うこと、飼うことを考える

 自分の飼っている犬や猫を「捨てないこと」ってそんな難しいことなのだろうか?

 その寿命である約15年という期間、「その命と過ごすこと」ってそんなに大変なのだろうか?

 犬や猫を「買う」ことはとても簡単だ。しかし「飼いつづける」ことは容易なことではない。「飼い主」は、その動物に適した環境を、犬であればおおよそ15年の間ずっと提供し続ける必要があるからだ。その動物にとってなにが必要なのかを理解すること、犬種の違いを知ること、その個体の性格の違いを飼い主が把握し、考え、行動する。それが飼い主の役目であり、その義務と責任はとても重い。

 具体的に言えば......

1.散歩
 朝と晩、最低一時間程度の散歩へ室内犬でも小型犬でも毎日行く必要がある。それは雨であっても、寒くても関係ない。気温が高ければ、朝早い涼しい時間帯に散歩をするなどして、犬のからだの負担を考える必要もある。

2.しつけ、訓練
 犬がこの人間社会でトラブルを起こさず過ごすには、「訓練が必要」である。犬の大きさに関係なく、人に飛びついたり、吠え続けたり、うなったりすることがないようにすること。また、他の犬と喧嘩せずに過ごせることも「訓練」や「練習」を通して、「犬も飼い主も」一緒に学ぶ必要がある。これらの訓練や復習は、終生続くものだと思っている。それは、私たちが鉛筆で文章を書いていないと漢字の書き方を思い出せないのと同じで、犬も飼い主もその動作の基本や、犬に伝えるための視符や声符のタイミングを忘れてしまうからだ。

3.留守番
「犬の留守番を考える」で私の考えを述べたが、犬が寝ているからといって10時間もの長い間ひとりぼっちで待たせることは飼い主として避けるべきだろう。犬は人と生き、人と多くの時間を過ごす必要がある動物であるからだ。もし犬を飼うのであれば、その留守番時間は6~8時間を限度とするように飼い主がなんらかの対策をしなければいけない。留守番中に犬が靴を齧った、ソファーを壊したといって犬を叱る飼い主もいるが、それは間違いだ。そもそも飼い主は、犬に退屈な時間を与えるべきではないからだ。

4.医療費
 犬や猫が怪我や病気になれば、費用はもちろんのこと、場合によっては自分で看病する時間も必要になる。つまり、会社や学校を休む必要だって出てくるのだ。手術にでもなれば40万円以上の治療費が発生することだって珍しくない。私は動物保険に加入しているが、月々の保険費用は5000円ほどで治療費の8割を会社が負担してくれる。私の契約しているプランの場合、犬の年齢があがるごとにその保険費用も比例して上がる。医療費や保険代、それらの費用をあなたは犬を飼っている期間ずっと保時している必要がある。

5.餌、消耗品
 犬の餌にあてる金額は人間よりも高いように思う。人はワンコイン以下で済ませられるものも存在しているが、犬にとっては毒になる食べ物もあるので「人の残りものをあげる」というわけにはいかない。犬にとって必要な栄養素、エネルギーを考えて犬用の餌を与える必要があるのだ。また室内で排泄場所を設けている場合は、トイレシートなどの消耗品代も考える必要があるだろう。

■参考記事
>>正しく知っておきたい、愛犬の食事について<前編> 人と犬の食事は別の基準で考えよう
>>正しく知っておきたい、愛犬の食事について<後編> 科学的に食事を捉えて、健康管理へつなげよう

6.時間的、場所的な制約
犬を飼うと、多くの人にとって長い日数の旅行は簡単ではなくなる。急な出張なども断る必要が出てくることもあるだろう。また土曜日、日曜日などの休日は、平日、濃密に過ごせなかった犬と一緒に過ごすためにその時間の多くを使うことになる。はっきり言おう「犬の散歩や遊びで、自分の時間が無くなる」という考えの人に、犬や猫などの動物を飼うことは不向きだ。「犬と過ごす時間も私の時間である」と感じられなければ、犬との時間はあなたにとって「無駄な時間」「自己犠牲」でしかないからだ。それは犬との散歩や遊びだけでなく、具合が悪い時の看病の時間をも「犬と過ごせる貴重な時間」という感覚が飼い主には必要なのである。

 ざっと考えてもこれだけのことを、犬が生きている15年間、毎日あなたは実行し続ける必要がある。周りの人は海外旅行に行けるのに自分は行けないと僻むことなく、犬と楽しめることを選択できるか?値段が高くても犬との旅行やアクティビティにお金を出せるのか?雨が降っているから散歩にいかない。ではなく、雨が降っていても犬は散歩に行く必要があるのだ。犬を飼うということは、犬を人間の生活に合わせるのではなく、人間が犬の習性、生活に歩み寄るということなのだ。

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雪の上を疾走するカツは元保護犬だ。今では仲間の犬たちと元気に走り回って過ごしている

どうして犬は捨てられるのか?

 平成28年度に飼い主が自ら施設に持ち込んだ犬の数は4,663頭、猫は11,061匹である(*1)。
所有者不明で引き取られた、つまり「どこかに捨てられた」犬の数は36,512頭、猫は61,563匹。
犬と猫を合わせて11万3799頭。そのうち犬の殺処分は1万424頭、猫は4万5574匹、合計5万5998の命を私たち人間の手で殺した事になる。この数は東京都千代田区の人口とほぼ同じである。

「私は絶対に愛犬を捨てることなんてしない」「この犬は私の家族だから」多くの飼い主はそう言う。私も同じように思っている。ではどうして、実際に飼い犬や猫は捨てられるのだろうか?「実際の捨てる理由」を知り、私たち飼い主自身が「捨てないため」の「具体策」を練る必要があると私は考える。

*1 環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室webサイトより

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 下記のデータは、私が2017年2月にドッグアクチュアリーで「飼い主が犬を捨てる理由」という記事を書いた際に得た「飼い主が自分の犬を施設に持ち込む理由」だ。

1.飼い主が介護のために老人ホームに入居、または飼い主が死亡のために犬が飼い続けられない
2.犬が人を咬むから
3.生活保護を受けるから
4.産まれた子どもにアレルギーが出たため

 これらの理由に対して、飼い主のみなさんは具体的にどんな予防策、防止策をとっているのだろうか?

・私はまだ若いし健康だから
・私の犬は人懐っこいから咬まない
・私は仕事をしているから決まった金額が手元に入ってくるから
・私には子どもがいないから

 こう答える飼い主が多いかもしれない。私にはこれらの発言や自信は「形がないもの」「不安定なもの」にも思える。つまり、「捨てる理由」が自分に起こった際、今までの自信や発言は崩れ落ち、結果的に犬を捨てることに繋がってしまうのではないだろうか?

 例えばあなたが、

・会社に向う途中、事故で身体が不自由になってしまったら?
・交通事故で死亡したら?
・突然病気になったら?
・会社が倒産したら?
・リストラされたら?
・シングルマザー、ファーザーになったら?
・ペット可の賃貸物件が見つからなかったら?

 それらを考えれば、

・自分が死んだら、この犬はどうなるのか?を具体的にイメージすること
・定期的な収入がなくても犬の治療費を出せるような経済的な余裕を持つ必要性
・離婚や死別などで子供の養育費を捻出しながらも、犬を飼い続けるにはどうするか?

 飼い主は、「愛犬を捨てないために」真剣にその方法を探り、すぐにその答えを得る必要があるはずだ。
 では、捨てる理由の一つにある「アレルギー」は、やっと授かった子どもに、犬のアレルギー反応が見られた場合、あなたはどうやって「犬を捨てない」選択を見つけることができるだろうか?

想いや気合いだけでなく、方法を手にすること

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 私は自分の財布の中にこのような「緊急時の愛犬の引き取り先カード」を入れている。万が一、私が出先で交通事故にあって死亡した時にも、記載されている緊急連絡先に伝えられて、私の愛犬はひとりぼっちの家で帰らない私を待ち続けなくて済む。また私の住むオーストラリアの犬登録証には、任意であるが、第二の飼い主を記す項目がある。これは飼い主と連絡がとれなかった場合、私の犬が「飼い主不在で」保健所に連れて行かれるのではなく、記入された第二の飼い主へ連絡され、愛犬を引き取り、飼うことになっている。

「子どものアレルギー」の場合も同様に、信用のおける人を見つけ、愛犬を大切に育ててもらえるのであれば、「犬を手放した」と第三者から言われても、その後の「愛犬の暮らし」は大きく違うはずだ。愛犬を保健所や保護施設に運ぶことを絶対に阻止すること、愛犬の命の安全を確保し、その先の幸せのために行動する。それが、飼い主のやるべき大事なことではないだろうか?

 突然の事故や病気、そしてテロ、不測の事態が起こることも考えて、私たち飼い主は自分以外、家族以外の「もしもの時の犬の飼い主」を見つける必要がある。もちろんその相手も、生活事情や、住宅などの環境変化が予想される。だから一年に一回は「もしものことがあったら、私の愛犬を面倒みてくれる?」と再確認をする必要もあるだろう。そして「万が一」が起こった時のためにも、愛犬が人に吠え続けたりしないこと、呼べば戻ってくることなどの基本の訓練や社会性を身につけることは新しい家庭で自分の愛犬が気持ち良く受け入れてもらえることに繋がるはずだ。

「犬は家族の一員だから絶対に捨てない」と、多くの飼い主は言う。しかし、もしかしたら、「犬を捨てた飼い主」も私たちと同じようにその犬を家族と思って暮らしていたのかもしれない。もし、その飼い主が、愛犬を捨てないための防止策を考え、第二の飼い主を探していれば......。そう考えると、私たち飼い主に今、必要なことは家族である犬や猫の命を育て続けられる環境、方法を飼い主自身が見つけ出し、持つことだと思う。

みなさんは「万が一」のとき、どうやって愛犬の命を守りますか?

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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