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2017.10.13

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シェルターボランティアで学んだこと vol.17<最終回>

Who rescued who? 救われたのは誰?

犬たちのために何かをしたい!という思いから飛び込んだシェルターでのボランティア。シェルターの活動は犬たちを救うためのものですが、実は救われたのは私自身だったように思います。

#Lifestyle

Author :写真・文=古川あや

犬と向き合うときに思い出す言葉

 多くの犬たちと接するシェルターでのボランティア活動、そして受講した様々な講習から多くのことを学び、犬全体への理解度も素人なりに高まりました。トレーニングの方法、犬の扱い方など実用的なことは今も参考にしていますし、「犬と接するときの心の支え」としていつも胸に留めている言葉があります。
 それは、シェルタードッグトレーニング講座のときの講師の一言です。

「名前を呼んだり、コマンドを出したりしても犬が反応しないときは、他のことに夢中になっているだけで、無視してるんじゃないんだよ」

 つまり、犬は他のことで頭がいっぱいになってしまってるだけで、言うこと聞きたくないなとか、無視してやろうとか、意図はしてないというのです。じゃあ犬を夢中にさせているものは何なのかを探るために冷静に観察をすると、犬が思うように動いてくれないという情けなさや悲しみは消えていきますし、どんな場合にコマンドが聞こえなくなってしまうのか理由がわかれば、対策を立てることもできます。

 犬と意思の疎通ができなくなってるときは、犬の心を占めている「モノ」より、もっと魅力的なことを示すというのがアドバイスでしたが、カギはいかに犬たちをワクワクさせるような存在になれるか!! 遠くからやってくる犬や何ともいえないいい匂いより、リードを持ってる私の方がもっと気になる、そんな存在になるにはどうすればいいのだろう、こんな気持ちを常に持つようになりました。

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人間の食生活が反映される犬の好物

 シェルターは私にとって「犬」のいろいろな姿を知る場であったと共に、アメリカ社会や文化に触れる場所でもありました。ボランティアがとても身近であること、思いのほか犬を捨てる人が多いこと、都市部では小型犬の方が人気であることなどなど。

 そして、飼い主の食生活が違うと、犬たちにもこんな違いがあるんだと妙に納得したことが、多くの飼い主が犬の好物として「ピーナッツバター」「ホットドッグ(用ソーセージ)」を挙げるということでした。3回目でご紹介したように、ナイラボーンの周囲にピーナッツバターを塗ったものはシェルターの犬たちも夢中になっていましたし、とっておきのご褒美として登場するのが「ホットドッグ」でした。ホットドッグというとパンにソーセージを挟んだものを想像されると思いますが、ここでいうホットドッグとは具である細長いソーセージのこと。

 犬にピーナッツバター? 塩分のあるホットドッグ? と最初はびっくりしましたが、何しろアメリカ人は子どもも大人もピーナッツバターやホットドッグ好き。私たち日本人が納豆を愛犬に与えるのと同じ感覚かもしれません。ただし、ピーナッツバターの中には犬に有害といわれるキシリトール入りのものもあるので、成分表のチェックは必須で、ホットドッグは塩分が気になるのでほどほどにしたほうがよさそうです。

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プレイグループの一コマ。犬同士の距離の取り方も興味深かった

犬を愛する仲間との出会い

 一緒にボランティアをした仲間との出会いもかけがえのないものとなりました。犬について、仕事について、アメリカ社会について、たわいない会話からたくさんのヒントをもらいましたし、メンバーのプロのトレーナーから犬の扱い方やトレーニング法のミニレッスンも受けました。

 シェルターの犬たちのために無理をするなく、融通しあって活動したことはよい思い出となっています。プレイグループは平日のみなので、週末には犬たちのストレスも溜まりがちです。土曜日にはドッグウォーキングのボランティアに行くように心がけていましたが、複数のボランティアが何度か散歩に連れ出すとしても1回あたり20分程度の散歩ではやはり運動量は足りません。

 2日間もプレイグループがない=エネルギーの放出ができないということですから、休みあけの月曜日のシェルターは賑やかです。賑やかなだけならいいのですが、エネルギーあふれる犬の場合は興奮が高まり、問題行動につながりかねません。ちょっと気をつけてあげたい、そんな犬がいるときは、「土曜日の午前中、だれか一緒にプレイグループしませんか?」とメーリングリストで誘いあって、週末にもプレイグループを行うこともありました。普段とは違うメンバーとのプレイグループはまた新鮮で、参考になりました。

 帰国がきまったとき、もうシェルターでのボランティアができないということがとにかく残念でした。

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「愛犬」好きから、「犬」好きへ

 以前お伝えしましたが私が飼っているのはラブラドー・レトリーバーなので、レトリーバー種との付き合いがほとんどでしたが、シェルターボランティアを始めてから、サイズ、外見、性格と実に多様な犬たちと接することになりました。

 かわいらしい小型犬の意外に強気で活発なところ、ハウンド系の運動能力の高さ、闘犬のイメージが強いピットブルの優しさや繊細さなどなど。発見はほとんどがポジティブなもので、いかに見た目や一般的なイメージに支配されていたか、犬好きといいながらも、それまでは単なる「愛犬」好きだったということに気付きました。

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一見コワモテだけど、とても優しい女のコ。無事に譲渡されていきました

 今は自信を持って「犬好き」だと言えます。愛犬好きから犬好きになると、他の犬への目の向け方や接し方も変わってきますし、自分の犬を冷静に見つめることができ、関係性もよりよくなっていくように感じています。

 受け入れてもらえるかな? と不安を抱きつつ始めたボランティア活動で、多くの犬、そして人と出会い、とても充実した時間が過ごせました。

 保護犬に関するスローガンに「Don't shop, adopt」というものがありますが、「Who rescued who?」というのもよく見かけます。里親さんになられた方、ボランティアとして保護犬に接する人の中でよく交わされる言葉で、飼い主のいない犬を救ったつもりだったけど、たくさんの愛や恵みをもらったのは私たちの方だった、という気持ちが込められています。

 私も同感です。犬たちは私の世界を広げ、さまざまな形での刺激を与えてくれ、友だちや仲間をプレゼントしてくれました。心細いこともありましたが、思い切ってチャレンジしてよかったと思います。ボランティアしたいという方は、ぜひ最初の一歩を! Who rescued who? を実感できると思います。

 17回にわたった体験記は、今回でおしまいとなります。おつきあいくださりありがとうございました。

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