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2017.10.20

知っておきたい犬のストレス<後編>

愛犬にストレスを溜めさせないためには?

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

日常生活の中で愛犬にストレスを溜めさせないために、気をつけるべきこととは?ストレス自体は必ずしも悪いものではありませんが、愛犬のキャパシティを超えるほどの大きなストレスがかかると、蓄積したりトラウマとして残ってしまったりするようです。ストレスとは何かを解説した前編に続いて、この後編では、普段の生活の中でどんなことに気をつければいいのかを、東京大学の特任助教・荒田明香先生に聞きました。

写真=大浦真吾 文=山賀沙耶

#健康

ストレスに強い犬と弱い犬、何が違う?

 ストレスとは一般的に、刺激に対する生体の反応全般を指す。人間にしろ犬にしろ、日常的にさまざまな刺激を受け、それによって小さなストレスの増減を繰り返しているのが、平常の状態だ。ところが、大きな刺激が加わって極端に増えてしまったストレス値が下がりきらず、そこに次のストレスが加わって蓄積してしまうのが、ストレスが溜まる状態と言える。

 それでは、犬がストレスを溜めないために、最も大切なことは何だろうか。
「ストレスを溜めないためには、そもそものメンタルキャパシティ(許容範囲)を大きくしておくことがいちばんです。そのコのメンタルキャパシティが大きければ、それぞれの刺激に対応することができるため、自然と刺激に慣れていったり、多少のストレスであれば乗り越えられたりします。逆に、キャパシティがないのに大きな刺激を与えて慣れさせようとすることは、かえって逆効果になってしまいます」
と荒田先生。

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 メンタルキャパシティを大きくするために必要なことは、幼少期に適切な母性行動を受けることと、子犬期の社会化。また、妊娠中の母体の栄養状態や環境、遺伝なども関係していると言われている。
 つまり、メンタルキャパシティは1歳になるまでにほぼ決定しており、成犬になってから変わることはほとんどない。「前のコと同じように育てたのに、問題行動が表れてしまった」という場合、犬によってメンタルキャパシティが異なることが関係している可能性が高い。

成犬になってからもストレス耐性はつけられる

 それでは、ストレスを溜めがちな愛犬に対して、成犬になってからできることはないのだろうか。
 実は成犬になってからでも、少ない刺激から慣らしていき、ストレス耐性をつけさせることはできる。ただ、もしすでにストレスサインが強く表れているようなら、それはストレスが多すぎて器から溢れ出てしまっている状態だ。まずは、ストレスを引き起こすストレッサーを減らして、キャパシティを作ってあげる必要がある。

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「例えば、他の犬が苦手な愛犬に対して、愛犬の体調が悪いときに、無理に散歩に連れていき、苦手な犬に出会って、しかりながら、無理やりあいさつをさせようとしたとします。この場合、体調不良というベースラインのストレスに加えて、苦手な犬、しかられる、無理やりあいさつさせられるなど、さまざまなストレッサーが同時に加わっているため、キャパシティからはみ出して攻撃的な行動に出てしまうこともあります。ところが、ストレッサーのいくつかを軽減してあげるだけで、他の犬に会っても攻撃的にならずに済むこともあるのです」

 そもそも他の犬に会うという苦手な状況を避けることで、一時的にストレスを減らすことはできる。しかし、極端に言えば、災害時に他の犬たちと一緒に収容されたときなど、避けることができない状況になったときに、ひどいストレス状態に陥ることになる。
 いざというときのために少しでも他の犬に慣らすためには、ストレッサーを減らし、他の犬という刺激の苦手度をできるだけ低くした状態で、嬉しいことが同時に起きるようにすることだ。具体的には、まず愛犬の体調を改善する、しからない、あいさつを強要しないなどしたうえで、あまり苦手でないタイプの犬が遠くに見えたときに、ほめてオヤツを与える。愛犬がこの状態で相手の犬を気にしなくなったら、少し距離が近い状態で、あるいは同じ距離でも苦手度がやや高いタイプの犬を見た状態で、同様の対応をする。いきなり大きな刺激を与えるのではなく、このように小さめの刺激から地道に練習していくことで、本当の意味で「慣らす」ことができる。また、この場合の目標は他の犬と仲良くすることではなく、他の犬がある程度近い距離にいても気にしないでいられることである、という点も念頭に置いておきたい。

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 ストレスを溜めがちな犬の場合は特に、苦手なことや新しいことを体験するときには、受け入れやすい状況を作って少しずつ慣らしていくという地道な過程が必要だ。それをつい飛ばして無理をさせてしまいがちだが、一度トラウマになってしまうと、そこから回復させるのは何倍も難しいことなのだ。

旅行などの新たな体験をストレスにしないためには?

 犬にとってある刺激がストレスになるかならないかには、受ける刺激の内容だけでなく、刺激の受け方も関係している。例えば、旅行のようにさまざまな刺激が混ざっている状況について考えてみよう。

「旅行先に、犬連れOKのロープウェイに乗って山の上に行くと、自然の中でたくさん遊べる場所があるとします。この場合、例えばロープウェイに乗るのは少し怖かったけれど、飼い主さんにたくさんほめてもらえたし、乗車中はおいしいものがもらえ、上に着いたら自然の中でたくさん遊べたなど、途中に愛犬にとって多少ストレスになりかねない刺激があっても、最終的に楽しかったという気持ちで終われれば、トータルではいい体験になり得ます」
 ポイントは、怖い思いよりも楽しい思いのほうが上回ることと、途中に少し怖いことがあっても最後に楽しいことが待っていること。この2つがクリアできれば、愛犬にとっても飼い主にとってもよい経験となるはずだ。

 逆に、犬にとって受け入れにくく、ストレスになりかねないのは、冒険好きな人間が求めるような、極端にいいことと悪いことが交互に起きるような状況。怖いことや危険の原因を、犬は理屈で理解できないため、それを乗り越えられないまま、トラウマとして残ってしまう可能性がある。

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「そもそも、旅行に出かける前に、普段の愛犬の行動から苦手なものを把握して、その体験は無理そうだなと思ったらあきらめることも必要です。現地に行ってからも、せっかく来たんだからと無理させず、きつそうだなと思ったらやめさせてあげる余裕を持っておきたいですね」
 その刺激が愛犬にとってストレスなのかどうかは、極端に言えば、愛犬が自らそれを選択するかどうかでわかる。クルマで出かけた経験のある犬が、次にクルマで出かけようとしたときに自ら乗るようであれば、それはいい思い出として愛犬の中に残っていると判断できるのだ。

 犬のストレスについて、2回にわたって見てきた。
 犬の場合でも人間の場合でも同じだが、ストレス自体が必ずしも悪いものというわけではない。大切なのは、ストレスを生む刺激を、愛犬が乗り越えられる形で経験させてあげること。愛犬にとってどんな刺激がストレスとなり得るのかを理解し、避けられるものは避け、慣れさせたほうがいいものには少しずつ慣らしておけば、ストレス度がマックスになりかねない非常時にも焦らずに済むだろう。

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>>知っておきたい犬のストレス<前編> 愛犬のストレス度に気付いていますか?




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