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2017.09.20

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知られざるドッグダンスというスポーツを覗いてみよう vol.4

競技としてのドッグダンス

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。前回までドッグダンスの歴史や楽しみ方、メリットなどをお話してきましたが、今回は競技としてのドッグダンスや、ルーティン(演目)の作り方などお話しましょう。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

ドッグダンス競技とは。

 初回のコラムでも書きましたが、私がドッグダンスを始めた頃は、まだ日本での正式なドッグダンス競技は開催されていませんでした。
 2004年11月、初めての競技会が横浜で開催されたとき、競技会のジャッジとセミナーの講師として来日したのが、チャップリンのルーティンで有名なDr. Attilaでした。ドッグダンス(フリースタイル)界で彼のルーティンを知らない人はおそらくいないのではないでしょうか。

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2004年開催のフリースタイル競技会会場。初開催ということでローカルTV局も取材に来ていました

 情報も少ない中、個々のドッグダンスファンシャーたちがそれぞれオビディエンスをベースとして独自に練習をしたり、あるいは仲間と練習会を開いたりして少しずつ盛り上げてきたドッグダンス。初開催以降2年に1度だった競技会も現在は年に10回以上の競技会が開催されるようになりました。10回と言うと少ないように感じますが、広い屋内を利用することから場所が限られることもあり、4月~5月、10月~11月のシーズン時には毎週どこかで競技会やファンマッチが開催されるほどになっています。

 競技会とファンマッチの違いは、なんでしょうか。大きな違いは二つあります。一つは、競技会では採点されて順位が付くこと。これはどんな競技でも当然のことですね。もう一つはドッグスポーツならではのモチベーター(トリーツやおもちゃ)が、競技会では使えないことです。およそ2分から4分間の曲の間、ハンドラーのキューに集中しながら一緒にステップを踏み続ける犬へのご褒美は、ハンドラーの声掛けのみとなります。

 一方ファンマッチの場合、ご褒美や集中力をあげるためにトリーツ(おやつ)やおもちゃなどをあげることができます。慣れない環境の中でハンドラーも犬も緊張してしまい、いつものようなパフォーマンスができないことは当然あり得ることです。そんな時パートナー(愛犬)をリラックスさせてあげたり、モチベーターを見せて集中力をアップさせたりすることによって、成功体験を積ませてあげることがファンマッチではできるのです。

 競技会によっては、主催者が競技とファンマッチの両方のカテゴリーを同時に開催している場合があります。ハンドラーや犬のレベル、あるいはルーティンの仕上がり具合によって、競技に出るかファンマッチに出るか選べるので、エントリーのハードルは高くありません。私もまだまだ未熟な若い犬と出る時は競技ではなくファンマッチを選び、細かいムーヴやトリックの正確さよりも、競技リングという普段とは違う環境の中で、スピーカーから流れる大きな音を聞きながら、犬と一緒に遊ぶ感覚でファンマッチにエントリーしたりします。

競技の評価方法とは

 ドッグダンスでは一体何を評価され、採点されるのでしょうか。

 他のドッグスポーツを見ると、ディスクであれば制限時間内でどれだけの距離を走り、何回キャッチできたかを評価し、アジリティであればすべての障害を正確にどれだけ速くクリアしたかを評価します。どちらも数値になって出てくるのでとてもわかりやすいですが、ドッグダンスはどうでしょうか。

 それぞれのルーティンタイムが異なり、曲も異なり、組み込まれるトリックやムーヴの種類や数もそれぞれ。単純に見ると、観ている人の嗜好に左右されそうな気がしますね。しかし、「この人のルーティンは楽しそうだ」や「犬の動きがかわいかった」では主観的になってしまいます。確かにジャッジの主観はゼロではありません。「傾向」は必ずあるので、頻繁に競技会が開催される欧州では、その競技会のジャッジの好みに合わせてルーティンの手直しをすることもあるそうです。しかしそればかりでは公平さを欠いてしまい、競技者のオリジナリティが損なわれてしまう可能性も出てきますので、評価の基準は明確でなければいけません。

 では、どんなことが公平に評価されるのでしょう。まずドッグダンス競技には、大きく分けて二つのカテゴリーがあります。HTM(ヒールワークトゥミュージック)と、フリースタイル(日本ではMFということがあります)です。HTMはヒールワークと言うくらいですから、犬がハンドラーの近くにいるヒールポジションを維持しながら動き続ける動作が主体になります。つまり、ハンドラーと犬が離れてしまったり、犬だけが跳んだり、回転したり、足の間をくぐったりしてはいけないと決めている競技団体もあります。ヒールポジションでずっと動き続けるとなると単調になってしまうと思われがちですが、ヒールポジション自体が最低でも8つ。主催団体によっては16ポジションや32ポジション、あるいはハンドラーの周囲360度が全てヒールポジションとしている団体もあるので、さまざまなバリエーションで動くことができます。

 ここでHTMの評価の基準となるのは、ポジションの数や正確さだけでなく、動きの方向や速度変化などの多様性です。もちろん曲にマッチしていることも評価に含まれます。

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ハンドラーの左ヒールポジションを維持しながらサイドステップを踏むパートナー

 一方フリースタイルはHTMと対照的に、ハンドラーと犬が離れる遠隔作業や、犬に危険と思われる動きでなければどんな動きでも取り入れることができます。愛犬のオリジナリティを見せるルーティンを作る腕の見せ所とも言えるでしょう。ただし、競技リングの50%から70%動かなければいけないので、当然のことながら、一つの場所でトリックばかりやっているというわけにはいきません。フリースタイルに求められるものは、動きの多様性と犬と一体感を持って音楽に合わせて流れるように動く技術です。さらに、ハンドラーと犬の動きだけでなく、ハンドラーの衣装(コスチューム)が曲のイメージに合っているかということも評価に含まれてきます。

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ハンドラーの持つステッキを跳び越えるトリック

 元々が欧米で始まったドッグスポーツなので、競技の規定も欧米の主要団体の規定に準ずる形で日本の競技団体もルール作りをしていますが、それぞれ微妙に違うために、同じルーティンで違う団体の競技に出ると評価されなかったり、場合によっては失格となってしまったりすることもあるので、エントリー前には必ず競技ルールを確認する必要があります。

 そんな状況を受けて、ドッグダンスルールの統一化をめざし、今年FCI(Fédération Cynologique Internationale/国際畜犬連盟)に初めてドッグダンス部門が登録されました。
この規定の中には競技としてのドッグダンスのルールが明確に記載されていますが、特に今回目を引いたのが、採点項目の中に、「Animal welfare(動物の福祉)」が加えられたことです。今まで欧州の主たる競技会においては評価基準となっていたPresentation(表現力)、Content(構成)、Artistic Interpretation(芸術的解釈)の3項目に犬の健康や安全性を考えたAnimal welfare(動物の福祉)が加えられたことで、奇をてらったトリックを追及するのではなく、犬に優しい動きを重視するようにという歯止めが加えられたと言ってもいいでしょう。今後は国内の競技ルールも、統一されてくるかもしれません。

ルーティンの作り方

 競技会の細かいルールばかりを気にしていると、なかなかルーティンを作ろうという一歩が踏み出せなくなってしまいそうですが、まず愛犬と一緒に体を動かしたくなるような好きな曲を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。イヤホンで好きな曲を聴きながら愛犬とお散歩。足取りが軽くなりそうな気がしてきませんか?

 元々は「しーんと静まり返った雰囲気で、ちょっと暗いイメージが付きやすいオビディエンス(服従訓練)を、音楽にのせてやってみたらもっと楽しくできるのでは?」と始まったドッグダンスですから、日常生活でも、音楽が流れている中で愛犬と一緒に作業するというシンプルなところから始めるといいのではないでしょうか。

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BGMの感覚で、音楽を聴きながら一緒に愛犬と歩いてみては?

 実際に曲が決まったら、愛犬ができる動きをピックアップしてみます。左側のヒールポジションしかできないのであれば、左側のポジションで前進しながら回転の動きを入れてみたり、愛犬が付いて来やすい向かい合わせのポジション(フロント)を入れてみたり、途中でオスワリをさせてオテやオカワリを入れてみたりと、ドッグダンスを始めていなくてもできる動きは意外とあるものです。少しレベルが上がったら、ハンドラーの足の間を縫うように歩くウィーブやジャンプ、サイドステップやバックステップなど、さまざまな技を増やしていくといいでしょう。

 最初はBGMのようにただ音楽が流れる中で、愛犬と動いてみるのもいいでしょう。そのうち、「このフレーズにはこの動き」といったイメージが湧いてくると思います。あとはパズルのように、曲のフレーズの中に愛犬との動きをはめ込んでいきます。もちろん競技を目指すのであれば、競技会場全体を意識し、スタートはどこからで、最後はどこでポーズを取るとか、ジャッジ席に愛犬が見えるようにルーティンの振付を考えるとか、細かいことは色々と出てきますが、それはあとから考えても十分です。曲が長ければ途中でカットしたり、途中をカットして帳尻を合わせてみたり、そんなことを考えるのも楽しいものです。

 ハンドラーのキューを聞いて愛犬が一歩を踏み出したり、ハンドラーのキューで上手に足の間をくぐって歩いてくれたりすると、それだけで楽しくなります。愛犬がハンドラーの声に耳を傾けながら動いてくれた時は、その都度褒めてあげることができるので、オビディエンスのような堅苦しさはありません。

 ある程度動きが決まってきたら、観客席から愛犬が見えるように動く方向をデザインしていきます。せっかくかわいいサイドステップをしている小型犬が、ハンドラーの足に隠れて見えなくては残念ですよね。会場の隅っこで小さく動くのではなく、リングの中心やリング全体を広々使って動いてみましょう。一人きりだと人前で何かを披露するのが恥ずかしくても、頼もしいパートナー(愛犬)と一緒なら意外と恥ずかしくないものです。

 最後は曲のイメージに合った衣装を考えるのですが、衣装ばかりが目立ってしまい、肝心のパートナーが隠れてしまっては意味がないので、衣装を着けての練習も欠かせません。

 最初から競技会を目指しても構いませんが、愛犬にもあまりプレッシャーをかけずに済むモチベーター有りのファンマッチから始めてみませんか? 愛犬との共同作業で、ちょっと人生観が変わるかもしれませんよ。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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