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2017.09.29

正しく知っておきたい、愛犬の食事について<後編>

科学的に食事を捉えて、健康管理へつなげよう

岡田ゆう紀 獣医博士(DVM PhD)/獣医師/動物鍼灸師

臨床栄養学の専門医岡田ゆう紀先生に学ぶ「正しい犬の食事」。前編では犬の食事はイメージではなく栄養素として考えるべきであることをお伝えしました。後編では多くの愛犬家が利用しているドッグフードの選び方、与え方について紹介します。

文=古川あや

#健康 / #食事

信頼できるドッグフードメーカーとは

 愛犬には元気に長生きしてほしいから、栄養のバランスの取れた食事を与えたいが、犬の食事は飼い主の判断に委ねられているので責任も重大だ。いろいろな選択肢はあるが、「封を切ってすぐに与えられる市販のドッグフードは犬に必要な栄養がバランス良く構成されている完全バランス食です」と岡田先生はドッグフードの利用を勧めている。しかし「完全でバランスの取れた良質なドッグフード」の選択には注意が必要だという。

「フードのパッケージやHPの情報からは信頼できるかは残念ながらわかりません。直接メーカーに電話して、フードの開発をしている人のバックグラウンド、どういう品質管理を行っているか、どのような第三者評価を受けているか等の細かなことを聞き、最終的には工場を見学しないと、本当の評価はできないんです」

 気になるドッグフードがあれば、メーカーにこれらのポイントを質問してみるのはいいかもしれないが、規模が大きく、長年にわたってフードを作っている実績のある会社の場合は比較的安心だと考えていいそうだ。

「大きい会社であればあるほど、失敗したときのコストやリスクが大きくなります。アメリカの場合、ペットフード会社のバックには有名企業がついているので、リコールなどが起きた場合には有名企業の信用問題にもつながります。また、長年フード作りをしている会社は、それだけ信頼される製品を作ってきた実績があるということです」

 専門家がフード開発に関わっている/研究施設があって、最新の栄養情報を発信しているというのも判断材料になる。

「栄養バランスのとれたドッグフードを作ることはとても難しいことなんです。例えばアメリカでは獣医師にも専門医制度が取られていて、臨床栄養学の専門医がいます。こういった専門家が自社の研究施設で研究開発に関わり、最新のサイエンス情報を発信しているような会社なら安心だといえます。また、ペットフードやペットに必要な栄養素に関するガイドラインを発表しているAAFCO(=Association of American Feed Control Official米国飼料検査官協会)が提唱する給餌試験を行っているメーカーも信頼できると考えていいでしょう」

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原材料から栄養バランスは読み取れない

 原材料のトップに記されているものが肉類だと安全、○○ミール、コーン等が入っているとよくない、酸化防止剤が入っているなんて論外、というフード選びのチェックポイントが広く知られているが、これらは必ずしも正しいとはいえないそうだ。

「原材料ではなく、栄養素としてドッグフードを見ていく必要があります。鶏肉には70%もの水分が含まれているので重量としては多くを占めていても、実際のタンパク質量はかなり少ないんです。粉状にしたチキンミールやミートミールを嫌う方もいますが、凝縮されているのでタンパク質量は高い。また、コーン等の穀物はコーン、粉砕コーン等、形状によって違う材料として表示して、目立たなくする場合もあります。見せ方のトリックがあること頭に留めていただきたいですね」

 また、酸化防止剤については、ドライフードには絶対に必要なものだと岡田先生は断言する。

「ローズマリーやビタミン剤等を代用するフードもありますが、その効果について書かれた論文はなく、どれくらい効力があるかは未知数です。防虫剤みたいなものを食べさせたくないという気持ちもわかりますが、使用されているのはFDA(=Food and Drug Administrationアメリカ食品医薬品局)が安全性を認めている容量内です。空気に触れるのですから、酸化防止剤を使わないと、ガン等の要因となる活性化酸素ができてしまいますし、風味も落ちます。冷静に、総合的に判断することが大切です。それでも嫌だということならば、完全な家庭食をその場で作ってその場で食べる、または、缶詰のウェットフードを使うことをおすすめします」

ドッグフード、正しく与えていますか?

 吟味して選んだ栄養バランスのとれたフードでも、個体によって合わない場合もある。

「下痢、吐くという症状が出た場合には、他に寄生虫などの問題なければフードの切り替えが原因ということになります。油分量であったり、食材へのアレルギーだったりの影響で、隣の犬にいいから家の犬にもいいということはありません」

 フードの切り替えは1週間ほどかけて、徐々に新しいフードの比率を高めていき、食いつきや便、毛艶の状態をしっかり観察しよう。

 フード量を決める際には、メーカーが示している給餌量を参考にするが、○kg〜○kg、○○○g〜○○○gと体重にも給餌量にも幅がもたせてあるため、個々の適量を判断しづらいことは否めない。

「体重ごとの給餌量の目安は、係数を使った計算式で求められていますが、これは50%のコにしか当てはまらないという前提があります。同じ量を与えていても、燃費がいいとどんどん太っていき、悪いコは痩せていくことになります。まずは袋に書かれている分量からスタートし、その後の体重の変化を見て、微調整していくことになります」

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 それぞれの個体に適正なフード量を見極め、健康な体づくりへとつなげていくためのポイントがいくつかあげられる。

●フードはグラムで量って与える
カップを使ってフードを計量している方は、1カップが実際に何gになるか量ってみてほしい。それぞれにバラツキがあることに驚かれるはずだ。
「どれくらいフードをあげているか聞くと、手で一つかみとか、1カップでもマグカップを使っているとかさまざまです。食事指導を行う場合、1日当たり何カロリー摂取しているか、が基準となるので、フードは量りを使ってグラム単位で与えましょう」

●犬の体重を定期的にモニターする
見た目ではなく数字で体重を記録することで、適正なフード量の見極めがスムーズにできる。ちなみに犬の体型はBCS1〜5(アメリカでは9段階)に分類できるが、上から見て腰にくびれがある、肋骨が触れるとすぐわかる状態がちょうどいい体型。この体型時の体重がベスト体重となる。ベスト体重から体重が減るようなら、フード量を増やす、増えるようなら減らすという微調整を行う。

●フードは目指す体重の分量を与える
「意外と知られてないことは、自分のコが太っていたり、痩せていたりする場合は、目指している体重のフード量を与えるということです。5kgのコを8kgにしたいのに、5kgのコ用の分量のフードを食べていればずっと5kgのままです。ダイエットさせたい場合も同じ。ただし、現在食べている量の20%程度までなら減らしても大丈夫ですが、それ以上の減量が必要な場合は、栄養素不足になることを防ぐためにはカロリー当たりの栄養素密度の高い病院処方食を取り入れるといいでしょう」

●トッピングやおやつは総カロリー内で
ドッグフードにお肉や野菜のトッピングをしている方やおやつを与えている場合は、それぞれのカロリーに注意しよう。
「摂取総カロリーの10%は何を与えてもいいので、お腹を壊さなければ野菜でもお肉でも何をトッピングしてもかまいません。ただ、トッピングやおやつのカロリー分、ドッグフードを減らしてください。総カロリーは理想体重の犬の場合、1〜2ヶ月与えてきたフードのカロリーを調べれば算出できます」

何を求めるのかをまずは自分で見極めて

 犬の食事選びについては誰もが頭を悩ませることだが、まずは自分がどんな食事を愛犬に与えたいかを考えることが第一歩だ。

「有機食品にこだわる人もいますし、地産地消をテーマにする人もいるでしょう。しっかりとした理念の元の選択ならば、飼い主さんの意見を尊重しながら、ペットの健康に支障がでないようにアドバイスしていくことは獣医師の役割です。ただ、周りの人がいいと言ったからとか、近所の人に勧められたから、パッケージが高級そうだからという理由で、安易に取り入れることは避けていただきたいです。
 ドッグフードでも家庭食でも、犬は人間とは違うことを忘れずに、"栄養素"や"カロリー"として科学的に捉えていけば、犬にとってよい食事を与えることにつながっていくと思います」

 毎日の愛犬の食事をこれまでと違う視点から見詰め直してみると、何か発見があるかもしれない。愛犬の健康のためにも食事選びの出発点に一度立ち戻ってみたいものだ。

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