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2017.09.27

正しく知っておきたい、愛犬の食事について<前編>

人と犬の食事は別の基準で考えよう

岡田ゆう紀 獣医博士(DVM PhD)/獣医師/動物鍼灸師

健康な体を作る大きな要素である「食」。みなさんは愛犬にどんな食事を与えていますか?犬は家族という意識の高まりと同時に、健康の基礎となる「食事」への注目度も高まっています。ドッグフードや手作り食など、さまざまな情報で溢れている今だからこそ、正しい知識を身につけたいものです。良かれと思って与えていたのに......ということにならないように「食事の基本」を岡田ゆう紀先生に聞きました。

文=古川あや

#健康 / #食事

食事は"栄養素"として考える

「人にとってよい食事が、犬にもいいとは言えないことをまず頭においてほしいと思います」と岡田先生。その違いはというと、食事を「栄養素」として見つめると非常にわかりやすい。例えば必須アミノ酸の違い。必須アミノ酸は体内で合成できないアミノ酸のことで、食物として経口摂取しなければならない栄養素。肉類、ナッツ、大豆などに含まれるアルギニンは犬にとっては必須アミノ酸で、もし不足すると高アンモニア血症を起こし、最悪の場合は命を落とすこととなる。一方で、人の場合は体内合成できるので経口摂取する必要はない。

「オメガ酸などの脂肪酸を加えること、そしてミネラル等の配合も注意しなければなりません。人と犬は生物学的にも腸の長さ、消化にかかる時間も違いますし、味覚を感じる味蕾の数も違うので、私たち人間の感覚でよい食事、美味しそうな食事が必ずしも犬にとっていいとは限らないんです」

 また、犬の食事には基礎栄養素である「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」「ミネラル」「ビタミン」がバランス良く含まれていることが前提となるが、「旬の素材を使った彩の綺麗な食事は飼い主さんの愛犬への愛情の表れだと思いますが、栄養面でバランスのとれたいい食事かというと、残念ながらそうは言い切れないんです」

家庭食のレシピ200を調べてみたら

 現在、アメリカに拠点を移している岡田先生によると、アメリカでも手作り食はブームで、書籍やインターネット上にいろいろなレシピが掲載されているそうだ。しかし、カリフォルニア大学デービス校のグループが200(教科書、書籍、インターネット)のレシピを調査したところ、必須栄養素のうち1つが必要量に足りないものが95%、複数の栄養不足があったものはなんと83%以上にものぼる。欠けていた栄養素の多くはビタミン、脂肪酸やミネラルであった。

「獣医師や動物栄養学の博士(Ph.D)が作成したものでも、何らかの問題がありました。完全でバランスの取れたレシピを提供していたのは、世界の臨床栄養専門界のトップであるショーン・ディレイニー先生が提供しているBalance It®というプログラムでした。家庭で手作りするのはこれほど難しいということです」

 不完全でバランスが崩れた食事を与え続けると、長期的には健康問題が生じる可能性があることを考えると、岡田先生が勧めるのは市販のドッグフードだという。

「臨床栄養のプロを顧問やスタッフに迎え、研究に研究を重ねて、分析に分析を重ねて製品化されたものがドッグフードです。食事は必要な栄養素を摂るためのものという視点で捉えると、ドッグフードは完全バランス食なんです」
(ドッグフードについては後編で紹介します)

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手作り食を与える場合の注意点とは

 栄養のバランスの取り方が難しい家庭食だが、どんな食事を与えるかは飼い主が決めることであり、美味しそうなものを与えたい、ドッグフードの添加物が気になるから新鮮なものをという考えも理解できるという岡田先生。

「手作り食を取り入れたい場合には、先ほど紹介した犬に必要な栄養素をバランス良く取り入れているショーン・ディレイニー博士の提供しているプログラムを100%お勧めしています。人間用の食材から摂るだけではどうしても不足してしまう栄養素については、サプリメントで補助しているのが特徴です」

 また、手作り食をしているご家庭では、非加熱の肉を与える生食を行っている方も多いが、公衆衛生の問題から肉は加熱してほしいと岡田先生。

「アメリカでは獣医師グループも栄養を専門とするグループも生食から生じる問題を常に指摘し、加熱して与えることを推奨しています。肉にサルモネラ菌やカンピロバクターなどの微生物がついていた場合、犬に症状はでなくても便と共に排出されると、子どもや老人、免疫系の弱くなる病気を抱えている人に感染してしまう恐れがあります。それでも、どうしても生食をという場合には、排泄物の管理を徹底して行うようにお願いしています。また生食が犬の健康に良い、という科学的根拠は未だ存在しません」

犬は肉食? 雑食?

 犬の祖先であるオオカミは肉食だったことから、内臓を含む生の肉を与える「生食」は根強い人気がある。実際、栄養の吸収がいいから便が少なくなった、毛艶がよくなった、皮膚の状態がよくなった、何よりも愛犬が喜ぶという声を耳にするが、生の肉食には「脂肪酸」が多く含まれているので、毛艶がよくなるなど、目に見える変化が現れるのはごく当たり前のことだそう。その一方で、長期的な視点にたったとき、よい食事かというと疑問だという。

「アメリカではよく、オオカミのように犬を育てたいと、生食を取り入れる方がいます。飼い主さんの願いは15〜20歳まで長生きてほしいというものですが、野生のオオカミは果たしてそこまで長生きできるのかを考えてほしいです。動物を早く成長させ、子孫を残させ、そして早く殺すというのが自然のあり方です。そう考えるとペットや愛玩動物として家族の一員になった犬に、肉食オンリーの生活がいいかというと、違うのではないかと考えています」

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 家庭食の場合、炭水化物の取り扱いにも諸説あるが、イモ類等の消化しづらいものは与える量や方法に工夫が必要だが、白米などの消化しやすいものは問題ない。

「ネコは穀物や食べ物によってくるネズミを捕食するために使われてきたので、今も肉食がメインとなる動物です。でも犬は早い時点で人間の残飯をあげられているので、かなり雑食に近づいてきています。オオカミと犬ではデンプンと脂質の代謝にかかわる遺伝子に違いがあり、犬のデンプン消化能力は高いことがわかっています」

 人の食習慣に近づいてきてはいるものの、栄養学、動物生理学的な視点からは、愛犬のためを思って取り入れた手作り食が、必ずしもベストだとはいえないというのは残念ながら真実のようだ。健康面を考えると、栄養素のバランスの取れたドッグフードが一番というのが岡田先生の考え。次回はドッグフードの選び方、与え方について紹介する。

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