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2017.08.16

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知られざるドッグダンスというスポーツを覗いてみよう vol.2

犬はどうやってダンスを覚えていくのか?

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。『ドッグダンスってなんだろう』では、ドッグダンスというスポーツの概略をお話しました。今回は「犬はどうやってダンスを覚えるのか」といった素朴な疑問をはじめ、ダンスとトレーニングの関係性など、より深くドッグダンスを知っていただくための情報をお伝えしていきます。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇

犬はどうやってダンスを理解するのか

 ドッグダンスを初めて目にした時、一体どうやって犬が音楽を聴きながらハンドラーと一緒にステップを踏み、さまざまな動きをしているのだろうと思われるのではないでしょうか。実際、体験会などにいらした方からも「犬が曲を覚えているんですか?」と聞かれることがあります。
 確かに、中には曲がかかると自分の出番だとソワソワする犬もいます。それぐらい練習を重ねているので、犬が曲を覚えているということはよくあります。しかし、すべての動きを覚えていて、ハンドラーがいなくても勝手にひとりで踊れるわけではありません。ハンドラーと一緒にスタートポジションに立って音楽が流れ、ハンドラーが声をかけて動き始めると、犬たちはハンドラーと一体となって動き始めるのです。

 次の疑問は、犬たちは全ての振りを覚えているのか、ということです。犬たちは流れの中で練習を重ねているので、ある程度の動きは覚えていることが多いのですが、基本的にはハンドラーが次から次へと出すキュー(合図)を確認しながら動いています。動画サイトの画面を見ているだけではわかりにくいですが、ハンドラーがアップになると、必ず口で何か言っているのがわかると思います。ひとつひとつのポジション(位置)や動き(トリックなど)の指示を伝えているのです。例えば、ハンドラーの左側を一緒に付いて歩いて欲しいとか、ハンドラーの右側に来てその場でスピン(回転)して欲しいとか、あるいは、ハンドラーからバックしながら5メートル離れて欲しいといったような指示をキューで伝えているのです。

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 キューは言葉で出すことがほとんどですが、声が届かないほど離れてしまうときはボディシグナル(手や体の動き)を使うこともあります。私の場合、犬が左側にいるときは「ヒール」、右側にいるときが「ツイテ」という言葉を犬に教えています。離れた犬を呼んだ時に、犬が近づいてきたとき「ヒール」と言えば犬は私の正面に来るのではなく、左側のポジションにつき、「ツイテ」と言われれば右側のポジションに入ってくるのです。
 ダンスと言うくらいですから、ハンドラーと犬はずっと動き続けているので、お互いの位置関係が変わることもあります。それでもポジションを伝えることで、パートナーはその場所に戻ってくればいいのだと理解します。また、「ヒール」で歩きながら犬だけ左に回転したりするときも、左回転のキューを出した後、「ヒール」と言ってあげると、犬は回った後に同じ場所に戻ってくればいいと理解し、スムーズに流れに乗って動いてくれます。

 こんな風に合図のキューを伝えながら、お互いの立ち位置や動きを確認し、音楽にのせてステップを踏んでいくのがドッグダンスなのです。

ドッグダンスが究極のオビディエンスと言われるのはなぜか

「オビディエンス」や「服従訓練」という言葉を聞いたことがあるでしょうか(参考記事;『飼い主と犬が基本を一緒に学ぶ必要性』)。「訓練」というと警察犬や災害救助犬、麻薬探知犬など、作業犬が仕事をこなすために厳しいトレーニングを受けるようなイメージがありますが、家庭犬のトレーニングも日本語にすれば「訓練」と言われているので、そう変わりはありません。また「服従」と言われると、何やら人が犬を服従させる上から目線のような印象を受けますがそうではありません。「オビディエンス」という言葉も、日本語にすると一般的には「服従」と訳されてしまうので、同じように解釈されがちですが、実は「自らすすんで」という意味があります。
 つまり、ハンドラーに言われたことに対して「すすんで応える」という意味なので、そこには「やらないと怒られる」や「やらないと痛い思いをする」といった意味はありません。かつての訓練法ではそういった力で教える方法も行われていましたが、現在は多くのプロたちが欧米の進んだトレーニング方法を学び、力ではなく犬が自ら好ましい行動を身につけさせる技法を使っています。すすんでやりたくなるような気持ちにさせることが、どのような犬のトレーニングにおいても非常に重要になっているのです。
 多くの作業犬がそうですが、ドッグダンスもリードを付けずに演技をするので、嫌なことを日常的にされていれば、犬たちはリードから放れた途端、どこかにいなくなってしまうでしょう。「オビディエンス」や「服従訓練」は「犬が人間社会で暮らすための基本のマナー」と考えるとわかりやすいかもしれません。

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 例えば「マテ」はオビディエンスでは必ず課目に含まれます。「マテ」なんて簡単にできる」と思われがちですが、他の犬が傍にいるような外的刺激が大きい場所での「マテ」は全然できなかったりする場合があります。ドッグダンスの演技の中でも同様で、特にハンドらーから離れた場所で作業をしてもらいたい時、その場で待てずにズルズルとハンドラーの傍に戻ってきてしまい、思うような演技ができないなんてこともあります。簡単そうに見える「マテ」をきちんと教える手法なども、オビディエンスの経験があれば犬にわかりやすく伝えていくことができるのです。

 ハンドラーとパートナー(犬)の間にフィフティフィフティの関係が無ければ、犬と一緒に何かするというのはとても難しくなります。反抗したいのを無理矢理抑え込んでいれば、あとで必ずしっぺ返しがきます。そのため犬にとってすすんでやりたくなるように、日々のトレーニングの中で関係性を築いていかなければなりません。演技の間、次から次へとハンドラーから出されるキューを正確に聞き取り、瞬時に反応することが要求されるドッグダンスは犬種による特性を超えて、ハンドラーとパートナーが創りだす作品と言ってもいいでしょう。これが究極のオビディエンスと言われる理由です。

愛犬との関係性を深めるドッグダンス

「愛犬に次から次へと指図をしてやらせるなんてかわいそう」と感じる方もいると思います。「ウチの犬は好きにさせてあげるの」という考え方だっていいんです。我が家の犬たちだって、ソファに乗ったり、ベッドで一緒に寝たり、日常生活は好きに過ごしています。しかし、人間社会の中で一緒に暮らしているので、すべてを愛犬の自由にさせてあげられるわけではありません。赤信号では止まらなければいけないし、車が来たら避けなくてはいけません。「リードを引っ張ればいいのよ」なんて言わないでくださいね。もしあなたが好きな物を買いに店に入ろうとするたびに、ぐいと引き戻されていたらストレスがたまりませんか?

 

 愛犬にこちらの気持ちを伝え、理解してやってもらうことは命令とは限りません。愛犬の安全のために飼い主が負うべき責任とも言えるでしょう。普段から意思の疎通ができていると、お互いのストレスは減るのではないでしょうか。名前を呼んでもこちらを向いてさえくれない愛犬に、一緒にステップを踏んで欲しいと頼んでも、おそらく聞いてはくれないでしょう。

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 ドッグダンスで使われるさまざまなトリックや動きを愛犬に教える時、それは子供に何かを教えるのと同じで力づくで覚えさせるのではなく、言葉のキューと動きをきちんと理解させるという作業が必要になります。その作業を繰り返す中で、愛犬が考えているプロセスを観察したり、迷っている愛犬をサポートしたりすることで、お互いの関係も築きやすくなります。

 暇そうに前足に顎を乗せてこちらを見ている愛犬と目が合ったら、まず一緒に遊ぶことから始めてみましょう。ボール?追いかけっこ?引っ張りっこ?愛犬が何に興味を示すか観察するところから始めると、愛犬のことが少しずつ理解できるようになるかもしれませんよ。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
●HP:http://wanbywan.com/
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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