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2017.08.09

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知られざるドッグダンスというスポーツを覗いてみよう vol.1

ドッグダンスってなんだろう

こんにちは。ドッグトレーニングインストラクターの三井です。普段はドッグダンスや基本のマナートレーニングをお教えしているのですが、今回の連載では約14年取り組んできたドッグダンスの世界をご紹介したいと思います。愛犬との日常生活におけるヒントもたくさんあるドッグダンス、「私にはダンスは踊れない......」とスルーしないで、ぜひこの世界を覗いてみてください。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真・文=三井 惇 

ドッグダンスはハンドラーと犬が共同で行うスポーツ

 docdog(ドックドッグ)の読者の方は、犬に関心を持たれている方が多いはずなので、ドッグダンスと聞いて違和感を覚える方はあまりいないと思います。しかし、犬を飼っていない人にとっては、全くイメージが湧かないものかもしれません。そういう方が「ドッグダンス」で検索すると、場合によってはとんでもないものを見てしまう恐れもあります。例えば、犬が音楽に合わせてひとりで二足歩行していたり、犬のちょっと変わった動きに合わせて音楽をBGMのように合わせているものだったり。しかし、実際の「ドッグダンス」はそうではありません。ハンドラー(人)と犬が音楽に合わせて一体感を持って動くスポーツが、いわゆる「ドッグダンス」や「ミュージカルフリースタイル」と言われるものなのです。

 もう少し具体的に言うと、犬がハンドラーの傍に付いて同じ方向に移動したり、シンクロしたり、あるいは離れていても、ハンドラーと気持ちが通じ合っているかのように演技をするのがドッグダンスと言われるものです。パフォーマンスの内容によっては静かに流れるような動きであったり、あるいはジャンプしたり走ったりとアクティブな動きが入っているものだったり、ドッグダンスはさまざまな要素が含まれるドッグスポーツのひとつと言うことができます。

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 ドッグスポーツと言うからには競技会も開催されており、特に競技会では、モチベーターとなるオヤツやオモチャを持たずに演技をするので、当然のことながらハンドラー自身がモチベーターにならないと最後まで犬を集中させておくことはできません。

 さまざまなドッグスポーツがありますが、大体はモチベーターがあります。犬本来の追いかけたい衝動や走りたい衝動、あるいは犬にとってお得意の嗅覚を上手に使って犬の能力を発揮させるスポーツがほとんど。もちろん、正確さを求める場合は、ただモチベーターを使ってテンションを上げるだけでは結果は出せませんが、ある程度までは犬のやる気を引き出しやすいものです。ところがドッグダンスはリングの中にハンドラーしかいません。いかに愛犬の気持ちを惹きつけていられるかが最大の課題といってもいいでしょう。

ドッグダンスの起源は1980年代の欧米文化

 最近では犬のイベントでよく目にするようになったドッグダンスですが、一体誰がいつ始めたのでしょうか。「ダンス」と言うくらいですから、日本が発祥でないことはすぐわかりますが、実は「ドッグダンス」という名称が使われるようになる前は、「ミュージカルフリースタイル」や「ケイナイン(犬という意味)フリースタイル」と呼ばれていました。音楽にのせて自由に動くと言った意味合いでしょうか。競技会などでは今でも「フリースタイル」という言葉が使われています。

 犬のトレーニング手法において日本の数歩先を行く欧米では、1980年代にはその兆しが見えていました。オビディエンス(服従訓練)のトレーニングを、音楽をバックに行ったデモンストレーションが最初だったと言われています。その後1990年代には欧米各国で突出したフリースタイラーたちが現れ、2000年代にかけては各国でフリースタイルの競技団体が立ちあがり、競技会が開催されるようになってきました。

ドッグダンスとの出会いは、偶然の出来事

 私のドッグダンスとの出会いは、2003年。たまたま見ていたテレビで、イギリスのMary Ray(マリー・レイ)氏とボーダー・コリーの演技が放送されていたことがきっかけです。まさに、画面にくぎ付け、身体が震えました。ハンドラーと犬が一体となって音楽に合わせながら動き、犬は集中をハンドラーから外すことなくいきいきとハンドラーに付いていきます。「一体どうやったらこんなことができるようになるんだろう。こんなことが自分の愛犬とできたらどんなに素晴らしいだろう」と、その時初めて思ったのです。

その時の動画はこちら。

 私は当時ボーダー・コリー3頭と暮らしていて、すべての犬たちにオビディエンス(服従訓練)を教えており、犬と一緒に作業することの楽しさはわかっていたつもりでしたが、それでもMary Ray氏と愛犬Quincyが演じるパフォーマンスは心に響くものがありました。

 ちょうどMary Ray氏のパフォーマンスを観た直後に、同じ犬種を持つ友人からの誘いがあり、私はドッグダンスの愛好家たちが集う月に一度の練習会に参加するようになりました。その頃日本でも音楽にのせたオビディエンス(服従訓練)や、個人的にドッグダンスのデモンストレーションはすでに行われていたようですが、大きな競技会という形ではまだ開催されていませんでした。

 しかし、練習会に参加するようになり、少しずつドッグダンスの輪が広がり始めた2004年11月、イギリスの有名なフリースタイラーAttila Szkukalek(アティラ・シュカレック)氏を招いたワークショップと競技会が横浜で開催されることになったのです。せっかく始めたドッグダンス、この機会を逃すわけにはいいきません。私は当時一緒にドッグダンスを始めた母犬と一緒に参加することにしました。参加ペア28組。関東だけでなく、九州や関西からの参加者も集った大きな競技会となりました。

 ところが、まだまだ歩き始めたばかりの日本のドッグダンス、もっともっと学ばなければ先に進むことはできません。そのためには、やはり海外からの講師兼ジャッジの招致は欠かせませんでした。結局二回目の競技会が開催されるまでにはさらにまた2年待たなければなりませんでした。

日本でのドッグダンスも徐々に広がりを見せている

 ドッグダンスは屋内の広いスペースが必要なために、本格的な競技会の開催回数は限られてしまいます。十数年前と比べると、現在では大きな競技会が年に10回ほど、初心者向けのファンマッチなどはそれ以上開催されるようになりました。ドッグダンスのファンが増えることは嬉しい限りです。

 それでもドッグダンスはまだまだとてもマイナーなドッグスポーツです。なぜなのでしょうか。「ダンスが踊れないから?」いえいえ、もちろんハンドラー(人)が音楽にのって体を動かせればそれに越したことはありませんが、基本は他の多くのドッグスポーツ同様、犬が主役です。犬の能力のすばらしさや愛犬のかわいらしさを引き出しながら、ハンドラーとの一体感やオリジナリティを表現するパフォーマンスなので、人間のダンス力を評価するものではありません。そうは言っても、なかなかドッグダンスに踏み切れない人は多くいらっしゃいますし、特に男性の方はなおさら。男性で犬の仕事に携わる方は少なくないのですから、ぜひドッグダンスにもチャレンジしていただきたいものです。

 個人的には、なかなか日本に根付かなかった理由のひとつには、当時の犬のトレーニング方法があったのではないかと思っています。日本のドッグトレーニングは長い間リードによるコントロールや、押したり引いたりする力による訓練法が主要な手法でした。ところがドッグダンスではリードは付けませんし、競技においては犬の動きを直そうと手や足で触ってもいけません。つまりリードが無くても犬をハンドラーに集中させることが大きなポイントになってくるのです。

 そうなると、リードを放した途端にどこかに飛んでいってしまう状態ではなかなか先に進めません。早くから、リードがついていなくてもハンドラーと一緒に歩く練習が必要になってきます。ハンドラーの横を上手に付いて来られない時はリードを引っ張ってコントロールしたり、太ももをバンバンと叩いて犬を呼ぶことに馴れてしまっていると、リードが無い状態で犬にこちらの依頼通りに動いてもらうのはとても難しくなります。

 しかし、日本のドッグトレーニング方法も進化し、上手にできたことを褒める「陽性強化」という手法やクリッカーを使ったトレーニング法が広まってきたことで、リードを持っていなくても愛犬に新しい行動を教えられることがわかってくると、ドッグダンスをやってみようと思う人が増えてきたのではないでしょうか。

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今では、日本からも欧米で開催される競技会Crufts(クラフツ)やOEC(OPEN EUROPEAN HTM & FREESTYLE COMPETITION)に参加するフリースタイラー達が出てきています。頼もしいことです

>>次回はそんなドッグダンスへの素朴な疑問についてお答えします。

◎プロフィール

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三井 惇
CPDT-KA(国際資格)ドッグトレーニングインストラクター。1997年に迎えたボーダーコリーと始めたオビディエンス(服従訓練)をきっかけに、犬の行動学や学習理論を学ぶ。2004年にドッグダンスをと出会ってその奥の深さに魅了され、愛犬家に広めたいと2006年からインストラクターとしてドッグダンスを教え始める。自身も一競技者として、オビディエンスやドッグダンスの競技会に参加。

●ブログ: Dance with Dogs
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●主な著書:『ニコルとドッグダンス』/エー・ディー・サマーズ

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