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2017.08.10

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犬の飼い主に求められること vol.4

散歩のルールと飼い主のすべきでない行動

前回までの「犬の飼い主に求められること」では尊敬される飼い主になるためにするべきこと、訓練の必要性、犬と飼い主の会話である散歩の重要性に触れてきた。今回は散歩でのルールやマナー、そして犬のストレスについて話をしたいと思う。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=sarii 文=五十嵐廣幸

散歩の基本は楽しく安全であること

「散歩にいこうか」そう愛犬に声をかければ、その尻尾を大きく左右に振りながら、心からの喜びと興奮をあなたに伝えているのがわかるはずだ。犬にとって散歩は毎日開催されるビッグなイベントでもある。しかしその興奮の中、一歩でも外に出ればそこには車や自転車、犬が苦手な人もいる世界があるのが現実。愛犬の安全を守りながら飼い主も一緒に散歩を楽しんでもらいたい。

 犬にとって散歩で大切なことは、なんだろうか?

・楽しむこと
・肉体的、精神的な欲求を満たすこと
・好奇心を満たすこと
・怪我などしないで安全に戻ってくること
・他の犬と喧嘩をしないこと、させないこと
・人に迷惑をかけないこと

 上記の基本を守り、散歩を「楽しい」で終わらせるためには飼い主はやるべきこと、注意するポイントがいくつかある。

オーストラリアで実際にあった事故をもとに

【事故1】
ヴェルベットのような美しい被毛を持つ犬、ワイマラナーがある日、オフリードも出来る公園で散歩をしている女性に飛びついた。どのような経緯で犬が飛びついたのかは定かではない。飛びつかれた女性は驚いて転び、怪我をした。その女性はその場で警察を呼び、飼い主を訴える手続きをした。結果は飛びついたワイマラナーは散歩などで外に出る際は永遠にマヅルの着用とオンリードであることが命じられ、飼い主には裁判費用と罰金約90万円の支払いが裁判所から言い渡された。

【事故2】
ゴールデン・レトリーバーは小型犬と遊んでいたが、それが攻撃に転じた。止めに入った小型犬の飼い主もゴールデン・レトリーバーに咬まれた。

【事故3】
2頭のウィペットは仲良く飼い主の男性と散歩をしていた。突然、ボーダー・コリーがそのうちの1頭の背中に咬みついた。結果ウィペットは9針を縫うことになり、今も他の犬に怯えながら飼い主と散歩を続けている。

【事故4】
3歳の子どもとお母さんがボーダー・コリーの散歩を公園でしていたところ、同じく散歩をしていたボクサー犬が興奮し走りまわり、3歳児を倒した。子どもに怪我はなかった。

【事故5】
赤ちゃんを連れたお母さん達が芝生の上でピクニックを楽しんでいた。赤ちゃんはピクニックシートの上で寝転んでいる。突然、散歩中のジャーマン・シェパードが、赤ちゃんや母親たちのいるシートの上を全速力で走り抜けた。

 これらの事故は、私がよく行くオフリードも可能な公園で起こった。そこは犬だけの遊び場、いわゆる「ドッグパーク」ではなく、赤ちゃんからお年寄りまで、散歩、バーベキューやピクニックを楽しめる公園だ。これらの事故はどうして起こったのか?犬の飼い主として、何をするべきなのだろうか?

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オフリード散歩の定義

 オフリード可能な公園では、飼い主は自分の犬の得意不得意が分かっているはずなのに、犬を自由にしてやりたいと、なんの躊躇いもなくリードを外す光景がみられる。そもそも犬をオフリードにしても良いとされる定義はどういうことだろうか?

・呼び戻しが完璧であること
・犬を目視できないほど遠くいかせないこと
・飼い主の1度もしくは2度のコマンドで、犬がその指示に従うこと
・犬が他の犬にしつこく付きまとわないこと、またその犬の行為を飼い主が管理できること
・人に対して飛びつく、吠える続ける、唸らないこと

 以上に表したように、オフリードで歩き回る愛犬に対して、飼い主は的確な指示を出すこと、そして犬もその指示に従えなければ、安全なオフリードの散歩は難しいだろう。一部の飼い主は誤解をしているようだが、オフリードの公園というのは、犬がなんでも自由にしてよい場所ではない。オフリード可能な場所とは、オンリード状態と同等にその犬の行動が、他の何者にも恐怖や不快を与えないということが求められているはずなのだ。

 私の考えるオフリードの定義とは、
「リードをつけている状態と同質、もしくはそれ以上の安全であること」
「飼い主がその犬の行動の全責任を取れること」である。

 しかし、実際にオフリードの公園でよく見る光景は......

・犬も飼い主も呼び戻しができない
・子どもの遊びに加わってしまう犬
・他の犬のボールを返すことができない犬
・他の犬にしつこく付きまとう犬
・公園の外に出てしまう犬
・喧嘩をしてしまう犬

をよく見かける。

 前回 の記事で、Area association(エリア・アソシエーション)という言葉を使った。それは、呼び戻しの場合、自宅の庭では一回の「Come」のコマンドで愛犬が戻ってくるのに、ドッグパークや海では何度呼んでも気が散って犬が戻ってこないという「場所やその環境、犬の状況によって、できる・できない」があるという状態だ。オフリードの公園では呼び戻しができない犬、飼い主をよく見かける。飼い主が5回も6回も名前を呼び続けたり、また何十回も「Come」「バイバーイ」「ご飯だよ」などと犬の気を引こうとさまざまな方法で呼んでいたりする。また戻ってこない犬に対して怒鳴り散らしている姿をみるのは、こちらまで気分が落ち込む。愛犬のため、他の犬のため、周りの人たちのためにもリードのクリップを外す前に、どんな状況でもあなたの犬が必ず一回の「Come」の声で戻ってくることを練習、復習を重ねながら安全な散歩をしてほしい。また戻ってこない犬には必ずその理由があることを飼い主は知るべきだ。これは次の機会に書こうと思う。

 さて、上記のオフリードの定義で「他の犬にしつこく付きまとわないようにすること」というのを挙げた。そこで読者の皆さんに質問をしたい。オフリード可能な公園でリードをつけて飼い主と一緒に歩いている犬に対して、リード無しのあなたの愛犬、飼い主のあなたは何に注意するべきだろうか?

オンリードでの散歩で飼い主が気をつけるべきこと

 こんな体験をしたことはないだろうか?
リードを外した散歩では愛犬はそんな行動はみせないのに......オンリードの散歩では

・他の犬にやたらと吠える
・他の犬に噛みつこうとする
・他の犬に向かって行こうとする

 これは多くの場合、犬がリードに「繋がれている」ことを知っているためにおこす行動と私は考えている。つまり犬はリードの長さである約1.2mしか「何かあった時には動けない」「逃げられない」ことを知っている。そして近づいてくる犬に対して「繋がれている自分は、いざという時に走って逃げることができない」「避難する十分な場所がない」というストレスが恐怖に結びつき先制攻撃という行動に発展してしまうのだ。

 よくある光景の一つで「うちの犬はフレンドリーだから」という言葉で一方的に近づいてくる飼い主がいるが、自分の犬がフレンドリーであるかよりも、相手の犬の気持ちを第一に考える必要があるはずだ。近づく際は「あなたの犬に挨拶しにいってもよいですか?」の一言をまず相手の飼い主に聞くことが絶対に必要である。その答えが「うちの犬もフレンドリーです」であったとしても、犬の挨拶 Meet'n greet(参考記事)の方法を守り、初対面の挨拶中にはジャンプしたり、遊び始めたりしないように飼い主はしっかりと犬の行動を見守る必要がある。

 正直に言えば、私は飼い主の言う「フレンドリー」という言葉を信用していない。フレンドリーという言葉は、その犬が全世界の犬とお互いにストレスなく仲良く過ごせた証明書ではなく、飼い主の「喧嘩したことがない=仲が良い」という思い込みの判断が多いからだ。当然、犬にも相性があり、他の犬と一緒に散歩をしていてストレスになる犬もいれば、気にならない犬もいる。苦手な環境や相手、その関係において犬にプレッシャーをかけ続けることは好ましくない。

 私の犬は、マグパイと呼ばれるカラスに似た白と黒の鳥に上空から何度か襲われたことがある。それ以降、場所や状況によって、犬はその鳥を怖がり、身を屈めるようにして私のそばから離れないようにして歩く。また苦手な犬に出会うと私の後ろに隠れるようにして歩く。そんな時に私は愛犬の首輪にリードをつけて「大丈夫だよ。私に任せとけ!」と声を掛けて一緒に歩く。

 犬にとって飼い主とリードで繋がれていることは安心に結びつくこともある一方、その散歩の環境や犬の心情によっては、そのリードが不安やストレスを増幅させてしまうことも飼い主は知ってほしい。犬の感じるストレスや恐怖がトリガーとなり、本気の攻撃に点じることがないように、飼い主は愛犬だけでなく、周りの犬のHELPのシグナルを受け取ってもらいたい。

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飼い主は何をすべきか?

 さて、先ほどの質問。
<オフリード可能な公園でリードをつけて散歩をしている犬に対して、リード無しのあなたの愛犬、そして飼い主のあなたは何に注意すべきか?>

 私の考えは、「リード無しの自分の犬は、リードのついた犬に一方的に近づきすぎることを避ける」「アプローチの方法を考える」というものだ。これはオフリードが「可能」な公園において、リードをつけて散歩をしている犬とその飼い主のペアには必ず理由があると私は思っているからだ。

 例えば、こんなことも考えられる。

・オフリードができない、したくない状態の犬であること
・オフリードに自信がない、好まない飼い主であること
・仔犬で体など未熟であること

 もっと具体的にいえば、

・その犬は手術をしたばかりや病気で激しい運動を控えるように言われているかもしれない
・その犬は、他の犬への攻撃スイッチが入りやすいのかもしれない
・その犬は、臆病であったり、他の犬が来た時に遠くに行かないようにと、飼い主はリードを使っているのかもしれない
・猫や野生動物などに敏感で追いかけてしまうのでリードをつけているのかもしれない
・ボールに夢中になってどこまでも走って追いかけてしまうのかもしれない

 事情はさまざまあるだろう。

 

 オフリードの定義にも書いたように、オフリードの犬はどのような環境や状況においても、「リードをつけている状態と同質、もしくはそれ以上の安全であること」が求められているはずだ。そう考えれば、この飼い主は、犬をオフリードにするよりも、犬を安全に散歩させるために飼い主は自ら「オンリード」を選択しているのであるから、その犬と飼い主の行動や姿勢を私たちは尊重するべきだ。またオフリードの自分の犬は自由に歩き回れ、いざという時に逃げることができるのに対して、相手の犬はたった1.2mしか動けないオンリードの状態を考えれば、自分の犬がその犬に近づくことで、オンリードの犬のストレスがさらに増すと考えられる。

 私はこういう場合、自分の犬に指示をだして遠回りをして歩くことや、自分の犬を一度呼び戻しヒールポジションに座らせ、その犬との距離を十分にとってから散歩を再開する、また場合によってはリードを付けるようにしている。犬同士のコミュニケーションにおいて、飼い主の心配しすぎは良くないが、自分の犬だけでなく、他の犬の行動を見守り、安全を考えることは犬の飼い主として必要な責任の一つだといえる。

 もちろんなんらかの理由でリードをつけて散歩をしている犬や、怖がりの犬でも何度も会って犬同士の関係がはっきりすれば、手順を踏んで挨拶し、遊ぶことは可能である。またその犬とも一緒に走り回れる可能性はいくらでもあるはずだ。念のために言うが、私はリードをつけている犬を避けろと言いたいのではない。多くの犬がストレスなく散歩をするためには、自分の犬だけでなく、他の犬の気持ちや恐怖心を無視してはいけないと伝えたい。そのためにはリードをつけている犬に対して強引なアプローチはすべきではないのだ。

 犬の散歩は「飼い主と愛犬」だけの行動だと考えがちであるが、散歩で外に出れば、犬はたくさんの犬と走りまわり一緒に遊ぶ。人の投げたボールやディスクをキャッチし、多くの人の声や音に反応をする。散歩コースの横では車や自転車が通り、犬が苦手な人も小さい子どもも歩いている。その中で犬が毎日楽しく散歩できるかどうかは、飼い主としての技術、犬だけでなく他の動物や人間も含めたバランスのとれた優しさと気配り、そして環境への配慮が必要である。

 犬を楽しませるため、犬が生きるこの環境を向上させるためにも、私たち飼い主は日々、犬のことを勉強しながら飼い主としての努力を怠ってはいけないと私は考えている。また、ひとりの飼い主と、その犬の行動が、どんな時も「飼い主の代表」「犬という生き物の代表」として見られていることも忘れないでほしい。

>>次回は、犬の用具を考える vol.2として、 <リード/リーシュ編>について書くつもりだ。

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

■関連記事
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