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2017.08.04

高齢犬の問題行動<後編>

高齢犬のQOLを保つためには?

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

トイレの失敗、分離不安、吠えなど、高齢になってから表れる問題行動には、具体的にどのように対処したらいいのでしょうか。問題行動を起こさせないための備えや、起きてしまってからの対処法などを知り、高齢になる前から準備をしておきたいものです。高齢犬の問題行動について、前編に引き続き、東京大学の特任助教・荒田明香先生に話を聞きました。

写真=スタジオさる 文=山賀沙耶

#健康

高齢犬ならではの視点で"動物福祉"を考えよう

 犬も高齢になると、痛みや病気、加齢による機能低下など、慢性的なストレスが増加しがちだ。そして、その慢性的なストレスが増えたことが原因で、問題行動が表れる場合もあることは、前編で紹介した(再度、前編の図を確認してほしい)。
 それでは、このベースラインのストレスを増やさないためには、どうすればいいのだろうか。それには、過去にも取り上げてきたアニマルウェルフェア(動物福祉)にかかわる「5つの自由」の観点から、高齢犬との暮らしを見直してみるといい。

(1)飢えと渇きからの自由 =高齢犬の体調や体質にあった食事内容、食事台の準備など食べたり飲んだりしやすくする工夫など
(2)不快からの自由 =家の中でつまずきやすい段差や滑りやすい床をなくす、トイレに行きやすくするなどの工夫、快適な気温や湿度に保つなど
(3)痛み、けが、病気からの自由 =病気や痛みを早期発見し、通院や投薬などの適切な治療を施すなど
(4)正常行動を発現する自由 =散歩や遊び、コミュニケーションなどを高齢になっても続けるなど
(5)恐怖と苦悩からの自由 =ストレスサインに気づく、安心できる場所を準備する、病院に慣らすなどの社会化を続けるなど

「5つの自由」の観点から見た、これらの高齢犬ならではの暮らしの工夫をすることで、高齢犬のQOL(生活の質)を保つことができるだろう。

 また、苦手な刺激が加わったときに問題行動という形で表れないようにするためには、そもそもの許容範囲を広げておくことも大切だ。そのために必要なのは、ズバリ「社会化」。社会化というと子犬期に行うものと思いがちだが、その後も継続して平気なことを増やしたり、苦手度を下げたりしておく必要がある。
 特に高齢になってから経験する機会が多く、しかもストレスレベルが高いくなりがちなのが、病院に行くことと、獣医師などの他人に触られること。高齢になればなるほど適応能力も落ちるため、なるべく早いうちから慣れさせる練習しておくようにしよう(その練習方法に関してはこちら)。

獣医師の診断も飼い主の情報が頼り

 高齢になってから起こる問題行動の原因は、認知症の他に、痛みや病気、生理的機能の低下などさまざま考えられる。それでは、その原因を突き止めるためには、どうしたらいいのだろうか。実は、高齢犬の行動の変化には痛みや病気などが潜んでいることも多いため、まずは獣医師に相談するのがおすすめだ。
「獣医師に相談するときには、飼い主さんの主観や想像上の犬の気持ちだけでなく、できるだけ客観的な情報を伝えるよう心がけてください。例えば、『悲しくて鳴いていた』と飼い主さんがおっしゃったとしても、本当は痛くて鳴いていたのかもしれません。さらに、回数や量などの具体的な情報をいただけると、可能性のある病気を絞りやすく、診察もしやすくなります」
 と、荒田先生は話す。

170803_02.jpg

具体的には、獣医師が求めているのは、例えば以下のような情報だ。
■いつ = 時間帯、何をしたときなど
■どこで = 場所、状況など
■何に・誰に = 対象など
■どのように = ようす、変化の程度など
■どのぐらい = 回数、時間の長さ、頻度など

 また、病気が原因である可能性を考えると、食事内容や食欲、水を飲む量、オシッコの回数・色、ウンチの回数・色・硬さ、吐いていないか、元気はあるかなどの質問に答えられることが望ましい。
 愛犬の状態の変化を判断するためには、普段一緒に生活している飼い主からの情報提供がとても重要だ。動物病院を訪れる前に、上記のような情報をメモにまとめておくといいだろう。

すべての犬に効果的な、認知機能低下を緩やかにする工夫

 ここまで、高齢犬の問題行動には認知症以外の原因がいろいろあることを紹介してきた。とはいえ、すべての高齢犬にとって、認知機能の低下は多かれ少なかれ起こることであり、それが大きな問題につながることもある。
 それでは、認知機能の低下を緩やかにするために、できることはあるのだろうか。

「高齢になってきた犬の認知機能を低下させないためには、過度なストレスにならない程度に、適度な刺激を与えることが効果的です。例えば、毎日基本の生活リズムは同じだけれど、散歩コースを少し変えたり、違う犬や人に会わせたりといった変化が、犬にとってはちょっとした刺激になります。もちろん、他の犬や人が苦手な犬の場合には、強いストレスになってしまうので、どう変化させるかは、愛犬の性格に合わせて選びましょう。
 また、例えばあまり歩けなくなってきたからと散歩に行かなくなってしまうと、脚の筋力が落ちてさらに歩けなくなるといった、老化の悪循環に陥らないようにすることです。もう年だからやめておこうと思わず、どうすればできるかを考え工夫するというのは、人間の介護の考え方と同じですね」

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脚を引きずってしまい、痛くて歩きづらそうにしていたコでも、靴を履かせることで再び歩けるようになる場合もある

 また、もし愛犬が認知症にかかってしまい、夜鳴きなどの問題行動で困るようなら、認知症用の薬や鎮静作用のある薬を使う、サプリメントを飲むなどの方法もある。まずは動物病院で相談し、愛犬の健康状態をチェックしてもらおう。
 犬も人間もみんないつかは老いるが、高齢になってもできるだけQOLは維持したいもの。人間より早く年を取っていく愛犬のQOLを保つためには、その変化を年齢のせいと放置せず、愛犬のようすをよく観察して、根本的な原因を理解し、取り除いてあげることが大切だ。

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