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2017.07.06

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犬の飼い主に求められること vol.2

飼い主と犬が基本を一緒に学ぶ必要性

犬の飼い主に求められること vol.1で「犬を飼うということは、上記に挙げたどの生き物より世話をする必要があり、たくさんの時間を使う」と書いた。家庭で飼っている金魚やイモリ、ウサギを訓練するということはまずないし、フェレットやインコを朝晩毎日散歩に連れて行くこともないだろう。今回は、犬を飼う上で必要な「訓練」について私の考えを述べる。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=sarii イラスト=yuma 文=五十嵐廣幸

犬の飼い主だからこそ持つ悩み

「犬がリードを強く引っ張る」
「犬が呼んでも戻ってこない」
「他の犬と遊ぶとスイッチが入りコントロールできない」
「犬がロケットのようにどっかにすっ飛んで行ってしまう」

 上記に挙げた犬の行動があると、飼い主の多くは「犬との散歩が楽しくない」「犬をコントロールできないから嫌だ」となりがちで、その問題を抱え続けるとしまいに「散歩に行かない」傾向が多い。これを私は負のスパイラルとも呼んでいる。

・散歩に行けない犬は運動欲求を満たされなくストレスを抱えてしまう
 ↓
・次の散歩で、たまった欲求やストレスが爆発し余計に呼び戻し等が出来ない状態を作ってしまう
 ↓
・さらに飼い主は散歩から距離を置いてしまう

 負のスパイラルに陥っている方、みなさんの周りにもいるのではないだろうか? そして、そんな犬に関する悩みを持つ人ほど、その犬の悩みを解決しないまま困っていたり、そのまま諦めるというパターンが多いと感じる。

技術や知識を得る必要が飼い主にはある。

 犬との暮らし、散歩を楽しむために飼い主はいろいろな技術を必要とする。

・犬がリードを引っ張らないように歩かせること
・犬がジグザグに歩かないようにすること(オンリード時)
・他の犬と喧嘩などをしないように準備すること
・犬を呼んだら飼い主のもとに直ぐに戻らせること
・人に対して吠え続けないこと(飼い主がその吠え続ける行為をやめさせられること)

 これらは犬のオフリード、オンリードに関係なく、常に求められる行動でもあろう。特に小型犬の飼い主の場合、何かあったら犬を抱きかかえて、その問題行動を解決しないまま終わらせてしまう場合が多くみられる。しかし、私はどんな大きさの犬でも、その間違った行動を正してやることが必要であると思う。またその方法を知ること、習得することは私たち人間が母犬やパックリーダーになるということ、言い換えれば犬から信頼してもらえる飼い主の姿なのだと考える。

 常に悩みの上位にある「犬がリードを引っ張って困る」というのは、ズバリ言えば犬の問題ではなく飼い主の問題と思える。それは飼い主であるならば、犬に対して「リードを引っ張ってはいけないよ」と教えなければならないからだ。違う例え方をすれば、ほとんどの犬は教えられない限りリードをぐいぐい引っ張りながら歩くものだ(犬に十分な散歩や運動を与えない理由等で引っ張ることを除く)。

 私はこれらの悩みを解決しながら、飼い主が犬と楽しく毎日を過ごすためには「犬と飼い主が一緒に」基本の服従訓練(Basic Obedience)を学ぶことが効果的だと考えている。それは、この訓練を通じて......

・飼い主と犬との関係性を明確にできること
・犬がこの社会で暮らすための必要な行動を身につけられること
・飼い主として必要な素質である技術やコミュニケーションの基本を習得できること

などが挙げられる。
 この基本訓練を学ぶことは、悩みを持っている人だけでなく、犬の飼い主全員がこれらをマスターすべきだと思う。なぜならこの服従訓練を通して、私たち飼い主は犬と人間が共存するために必要なルールも知ることができるからだ。

Basic Obedience授業内容

 犬との暮らし、散歩を楽しむために飼い主はいろいろな技術を必要とする。
 以下は、オーストラリアのドッグスクールにおけるBasic Obedienceの授業内容だ。

・Social walk
右手でリードを持ち、「Let's go」の掛け声(コマンド)で犬と飼い主が同じペースで歩く。犬はリードを引っ張ること、飼い主の前方、後方を横切ることをしてはいけないが、飼い主の左半身180度を動くこと、匂いを嗅ぐことができる。

・Sit at heel
「Sit」のコマンドで犬をヒールポジション(飼い主の左脚の真横)に座らせること。飼い主のつま先と犬の前足の位置が同じライン上にあることが望まれる。

・Meet'n greet
犬同士の挨拶。一回の挨拶に対して一頭ずつ行い、一回三秒を限度とする。お互いに匂いを嗅ぐことや、それを拒否することも当然あって構わない。挨拶中に犬はジャンプ、遊び始めてはいけない。

・Basic recall
短い距離での呼び戻し。初級クラスでは「戻ってきた犬は飼い主の正面で座る」までひとつの動作で求められている。

・Heel walk
脚側歩行。ヒールウォーク中に犬は匂いを嗅ぐことなく飼い主の左横について歩く必要がある。

 オーストラリアの多くのドッグスクールやドッグクラブ で、これらの基本動作を8週間から12週間でマスターする。上記の内容や求められるレベルの多少の違いはあるだろうが、日本のドッグスクールもこれと似た内容であるだろう。

◎ソーシャルウォーク図解

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犬は飼い主の前後を横切ってはいけないが、左半身側180度を自由に歩くことが出来る。リードは利き手に関係なく右手でしっかり持つこと。左手は犬がリードを引っ張る、飼い主の前後を横切ろうとした時のみ使い、犬の動きを正してやる。上記2点の矯正以外では左手でリードを触る必要はない。また長さが変わるフレキシブルリードの使用は好ましくない。

実例:Sit at heel

「Sit at heel」は、犬をヒールポジション(飼い主の左脚横)にオスワリをさせればよいのでしょう?と簡単なイメージを持つ人もいるかもしれない。しかしこの訓練のポイントは、犬に対して一回の声のコマンド(声符)*で犬をヒールポジションに着かせることであり、「sit sit sit」 というように3回、4回とコマンドを繰り返していけない。

 飼い主からの一回のコマンドですぐに犬が座らないことは

・犬があなたの言うことを理解していない、またはそれができない
・飼い主の指示動作が犬に十分に伝えらていない

と見なされ、その場合は飼い主が左手と右手、声を使いながら犬に座ることを教える必要がある。また飼い主の発声や動作を見直す必要もあるだろう。

 犬が左脚横に着いた際の飼い主の姿勢も大事で、前屈みであったり、犬を心配そうに見ることもよくない。これはその犬に対しても、自分がリーダーであることを示すためにも、飼い主は自信を持って立つというもう一つの大事なポイントでもある。

(*私の所属している、ドッグクラブでは手による視符と声符で犬にコマンドを伝えるが、ドッグスクールでは、声符だけが求められる)

大事なのは飼い主と犬が一緒に学ぶこと

 一部の飼い主の中には、「犬の訓練は犬のためにある」と思っている方もいるようだ。またその考えから、犬を完全にドッグトレーナーに預ける飼い主もいる。しかし、犬に「sit at heel」をさせたい時、その飼い主は、自分の犬に的確な動作や声の出し方で伝えることができるのだろうか? また、座らなかった時にどのように犬をガイドするのか? 間違った行為をどのような方法で知らせることができるのだろう。 

 犬の訓練をするということは、犬だけがその行為を学ぶということではない。飼い主が愛犬と一緒に楽しみながら、勉強し練習することにより、愛犬だけでなく飼い主自身の癖や動作を見直すことが求められている。またグループレッスンでは、他の飼い主や犬の動きを見ながら、自分に足りないところも見つけられるだろう。そして、他の飼い主も自分と同じような悩みを持っていることに気が付けるのは、大きな利点でもある。自分だけが悩んでいるのではないのだとわかるはずだ。

 犬は一頭一頭それぞれ個性を持っている。体の大きさや性別、犬種に関係なく得意不得意があり、頑固な犬、シャイな犬、集中力が持続できない犬などさまざまだ。飼い主と愛犬が一緒に訓練を受けることは、自分ひとりで行う訓練と違い、ドッグトレーナーの客観的な目で見て指示を仰ぎ、評価してもらうことはとても大事であると私は思う。

 私は、服従訓練というのは、この世界で飼い主と犬がもっと一緒の時間を過ごせるコミュニケーションの一つ、飼い主と愛犬の絆を強くする行為の一つと考えている。もしあなたが、犬の行動に悩んでいたり、犬との関係を見直す必要があると考えているのであれば、まずは信じられるドッグトレーナーを探し、基本を身につけることでその暮らしはもっと楽しいものになるはずだ。 

ヒールウォークはかわいそうなのか?

 ヒールウォークに反対する声、異議を持つ人がいることは知っている。私の中ではなぜだろう? という疑問がある。ヒールウォークでは「犬が匂いを嗅ぐことができなくてかわいそうだ」、またヒールポジションが「常に飼い主の左側に犬をつかせることで体のバランスが損なわれる」という意見もある。
 この場で今の私の気持ちを正確に伝えたいと思う。

 私が今までに習ったオーストラリアでのObedienceの授業では、一度たりとも「散歩中、犬は常に飼い主のヒールポジションを維持して歩きなさい」と教わったことはない。

 ここで、私の毎日の散歩を実例にして説明する。

 私は朝晩合わせて3時間から4時間近い時間をかけて、犬と散歩をしている。その間に私の犬が、ヒールウォークしているのは合計しても5分以下だろう。

 公園の駐車場に着いて、犬を車から下ろす。散歩コースがある公園の敷地に入るまで、私は犬にヒールウォークを求める。駐車場にはたくさんの駐車を急ぐ車が走っているからだ。犬が車にびっくりすること、運転する人から犬が見えない場合もあるだろう。また、散歩の途中のカフェに寄る時、店の前の歩道が狭くなるところがある。正面から来る通行人、よちよち歩きの子ども、そして他の犬とすれ違う時にも犬にヒールウォークを求める。私の犬はそれ以外の3時間55分の散歩の間、好きな時に匂いを嗅ぎ、私の周りをぐるっと周りながら自由に歩き、大好きな川に飛び込み、鴨やアヒルをみては興奮し、芝生の上を疾走しながらディスクを追いかけている。それでもそのたった5分のヒールウォークがかわいそうだと感じるだろうか?

 体のバランスが損なうという意見は理解できる。右利きの私がゴルフやテニスをすると、どうしても体は同じ方向の動きが増えてしまう。だから10回右手でスイングしたら、つぎに左手にラケットを持って同じスイングを敢えてする。これは腰痛防止や体のバランスを整えることとして、実際に私が教わったやり方だ。もしあなたが犬のバランスを心配するのであれば、例えばライトというコマンドで飼い主の右脚横に犬がつくことをトリックとして教えればよいだろう。これはSit at heelのやり方を知っているならば難しくはないはずだ。このような工夫を飼い主自ら取り入れることが、親であることであり、犬を育てることだと私は思うのだ。

 私の散歩中の実例でも分かると思うが、ヒールウォークだけでなく服従訓練は犬と飼い主がこの社会でマスターすべき行動の一つだ。それは愛犬のためだけではなく、周りの人や他の犬のため、そして犬たちが住みやすい環境のためでもある。犬が事故やトラブルを起こさないことだけが、この社会で犬の住みやすい環境を作る大きな基盤になり、唯一の影響力になることを理解してほしい。そのためには、多くの飼い主が愛犬の指導者になるべきなのだ。

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◎補足説明

・ドッグスクールは会社として運営されているものを指している。
・ドッグクラブは地域に密着した非営利団体を指す。

 インストラクターや事務員、検定員の全員がボランティアで構成されていて、多くの団体は毎週土曜日朝8時から開催され、Obedienceだけでなく、フライボール、アジリティ、ディスクドッグなど様々なトレーニングが行われている。費用安く、私が属している団体は一年間67ドル50セント(日本円で約7800円)で参加でき、毎週200頭以上の犬たちが一緒に訓練を楽しんでいる。

>>次回の「飼い主に求められること」は、散歩について書くつもりだ。

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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