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2017.06.19

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ワクチンのこと、しっかり考えてみませんか? <前編>

ワクチンの役割、意義についてまずは理解しよう

狂犬病や混合ワクチン、みなさんは毎年どうしていますか? 犬と暮らすうえで避けては通れないワクチン接種について、こうご動物病院の向後亜希先生にお話しを伺いました。前編ではワクチンの基本情報についてご紹介します。正しい理解と対応で、愛犬を伝染病から守りましょう!

#Healthcare

Author :写真=大浦真吾 文=古川あや 監修=向後亜希(こうご動物病院 院長)

ワクチンってどんなもの? なんのために接種するの?

 まずは基本の基本。私たちが毎年愛犬に接種させているワクチンっていったいどんなものだろう。

「ワクチンは伝染病を予防する注射になります。簡単にいうと毒性を無くしたか、または毒性を弱めた病原体が含まれています。それを体内に注入すると、体が持つ抵抗力で抗体が作られます。この抗体によって、伝染病を予防、またはかかったとしても症状を軽くすることができます。伝染病にかかると命に関わることもあるので、ワクチンの接種は必要です」

 犬ジステンパー、犬パルボウイルスなどは決して珍しい感染症ではなく、現在でもワクチン接種を怠ったために、感染症にかかり命を落とすという悲劇は実際に起こっている。

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ワクチン接種で予防できる伝染病

 現在、日本で接種されているワクチンは法的に年1回の接種が定められている「狂犬病」と混合ワクチンとして任意接種される「犬ジステンパー」「犬伝染性肝炎」「犬アデノウイルスⅡ型感染症」「犬パルボウイルス感染症」「犬パラインフルエンザウイルス感染症」「犬コロナウイルス感染症」「犬レプトスピラ感染症」がある。

 これらは大きく「コアワクチン」「ノンコアワクチン」に分類される。コアワクチンは致死的な病気を防ぐために、全ての犬が接種すべきであると考えらえているワクチン。狂犬病、ジステンパー、パルボ、アデノウイルスⅡ型、伝染性肝炎がそれにあたる。それ以外のワクチンはノンコアワクチンで、地域の環境、各個体のライフスタイルによって感染症のリスクがあると考えられる場合にのみ接種が必要だとされている。

 それぞれ、どんな病気なのか、向後先生が患者さんに配っている健康手帳を参考にまとめてみた。

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ワクチン接種の必要性

□ 狂犬病
 日本は世界でも珍しい狂犬病の発生していない「清浄国」だが、実は日本から狂犬病が消えたのは1957年で、過去には発生していた。特に戦後の混乱期には、牛、馬、豚などの家畜にも発生。それに対処するために1950年に狂犬病予防法が制定され、飼い犬の登録とワクチン接種の義務化、野犬の駆除によって清浄化されたという経緯がある。

 狂犬病のない国なのにどうして予防しなければいけないの?というのは、自然な問いかけでもあるが、
「日本は狂犬病清浄国ですが、周囲の国々では普通に発生しています。人やモノも行き来の多い現代では、常に感染の危機にあり、いったん発症すると大変なことになります。ですから万が一に備えておく必要があります」とのこと。

□ 混合ワクチン
 その他のワクチンは任意接種。一種のみを接種するのは一般的でなく、2〜10種がセットになっている混合ワクチンが主流だ。接種の際、どれを選べばいいのかその判断基準は気になるところだが。

「コアワクチンである "犬ジステンパー" "犬アデノウイルス感染症" "犬パルボウイルス感染症" "犬伝染性肝炎" に"犬パラインフルエンザ感染症"のワクチンが入った5種の接種が推奨されます。その他のワクチンについては、生活環境によって判断するといいでしょう」

 こうご動物病院で扱っているのは5種、5種にコロナウイルスを加えた6種、6種にレプトスピラ4種を加えた10種。

「シニアの犬などはワクチンを打つことによる体のダメージを考えて5種をお勧めしますが、基本的には6種を接種することが多いですね。アウトドアを楽しむ機会が多い方は、ネズミの尿や糞を介して感染するレプトスピラも接種しておくと安心だと思います」

 ちなみにほとんど外に出さない場合、伝染病に感染する心配はないのではないか、というとそうでもないようだ。

「パルボウイルスは便の中にウイルスが潜んでいます。割と強いウイルスなので、見えないウイルスがどこかに潜んでいて知らないうちに人間が家の中に運び込むという可能性もあります」

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副作用について

 ワクチン接種について最も気がかりなのが、アレルギー反応などの副作用だろう。代表的なものとして、死に直結するアナフィラキーショック(意識消失、ショック症状)、ムーンフェイス(じんましんによる顔面膨張)がある。

「アナフィラキシーショックは接種後すぐに発症します。すぐに対処が必要なので、特にワクチン接種歴のない子犬の場合は接種後30分ほど院内にいていただいています。ムーンフェイスについては、数時間後に発生しますので、ワクチンは午前中に接種し、その後も飼い主さんが様子を見ていられる日に予定することをお願いしています。症状が出ても病院が開いている時間ならすぐに対処できます」

 一度アレルギー症状が出た場合には、その後のワクチン接種の際には注意が必要だそう。

「もともと飼育頭数が多いということはありますが、他の犬種と比べて、ミニチュアダックスフンドはアレルギー症状に注意したほうがいいように思います。また、接種する種類が多い混合ワクチンほどアレルギーが出やすい傾向があるように感じています。何種を接種するかはかかりつけの獣医さんとしっかり相談することをお勧めします」

接種前後の注意点

 ワクチン接種は病気から犬を守るためとはいえ、病気の元を体の中に入れることでもある。接種にあたっては注意すべき点がある。
 まずは狂犬病と混合ワクチンは一緒に接種しないこと。犬へ過剰な負担となる。ワクチンのスケジュールとしては、狂犬病のワクチン接種を先に行った場合、混合ワクチンは1週間後以降に接種する。混合ワクチンを先に接種した場合、狂犬病ワクチンの接種まで1カ月はあけること。この間隔の違いは狂犬病が不活化ワクチン(死んだ病原菌を使っている)で、混合ワクチンは生ワクチンだからだそう。

 接種にあたっては犬の体調チェックを必ず行おう。
● 体調不良
● 発情中

 といった場合には接種時期をずらした方がいい。

 体調がすぐれない時にワクチンを接種した場合、アレルギー症状、熱が出る、下痢、嘔吐などの不調が出やすい。ワクチンの効果は1年ぴったりで切れることはないので、体調が戻ってから接種しよう。

● 高齢
● 持病がある

 といった場合には獣医師と相談を。狂犬病ワクチンの場合は「狂犬病予防注射実施猶予証明書」を動物病院で作成してもらい、市役所へ提出する。混合ワクチンの場合は抗体価測定をしながら接種間隔をあけるなどの対応も検討したい。

 接種後は急な体調の変化も起こり得るので以下の点に気をつけよう。

● ワクチン接種した犬を留守番させる、ワクチン接種後にドッグカフェやドッグランに立ち寄る、などは避けよう
● 当日の激しい運動やシャンプーは避ける
● 震え、ショック症状などアナフィラキーショックがでたらすぐに病院へ
● 顔が腫れる、痒がるといった異常が見られる場合にも病院へ

 

>>後編では子犬のワクチン接種プログラムなど、それぞれの個体にあった感染症予防について触れます。

◎監修者プロフィール

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向後亜希先生

獣医師。こうご動物病院(東京都多摩市)院長。西洋医学はもちろん、鍼治療、ホリスティック医療などのペットに優しい治療にも積極的に取り組んでいるほか、しつけ教室、飼い主向けの各種セミナーも開催している。http://www.kougo-ah.com

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