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2017.06.26

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犬の飼い主に求められること vol.1

犬という動物を知らなければ、犬を守ることはできない

現在の日本では、お金を出せばいろいろな生きものを誰でも簡単に買えてしまう。ペットショップでは、まるで宝石か洋服のように透明ケースの中に動物たちが"ディスプレイ"されている。犬や猫はその代表とも言えるだろう。飼い方についての説明も一様に、「散歩は少なくて平気、手間が掛からず世話も容易である」ことが強調されていて、まるで電化製品のセールストークのようで怒りさえ覚える。
私は今まで、色々な動物の世話をしてきた。山羊、馬、牛、兎、猫、モルモット、アヒル、ニワトリ、ウズラ、インコ、文鳥、金魚などの小魚類、カブトムシなどの昆虫、イモリ、ウーパールーパー、そして犬だ。ズバリ言おう、犬を飼うということは、上記に挙げたどの生きものより世話をする必要があり、たくさんの時間を使う。簡単に飼えるなんて思わない。
今回は犬という命を考えながら、犬の飼い主には何が必要なのか? 何が求められるのかを考えていく。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=sarii 文=五十嵐廣幸

犬はPack Animal

 犬の持っている強靭な顎や歯は、ウシやヒツジの骨すらも噛みちぎり食べることができる。犬は肉食(をメインにした雑食もできる)動物にもかかわらず、空腹でも飼い主である人間を食べることはない。人との散歩を一緒に楽しみ、ボールなどを使って一緒に遊べる動物だ。姿も大きさも全然違うのに、なぜ犬はこんなにも人間と親しくなれるのだろうか?
 どうして犬は、飼い主の指示を聞き、それを実行するのだろうか?

 犬はsocial pack animals または、instinctual pack animals と言われる。つまり本能的にグループの中で社会性を持つ動物だ。

Social:社会性、社交性
Pack:グループ、群れ
Instinctual: 本能

 犬は群れの中で自分のポジションを判断し、その上下関係を保ちながら生きる。これは犬の祖先であるオオカミの行動でよく例えられるので、聞いたことがある方も多いだろう。オオカミの群れの中にはリーダーが必ず存在し、下位のオオカミたちはそのリーダーに服従する。そのヒエラルキー(ピラミッド型の階級社会)があるからこそ、彼らオオカミは上手にコミュニケーションを使いながら群れで狩りを行ったり、子育てをすることができる。多くの人が小型犬を飼っている現代では、犬の祖先がオオカミだということを知っていても、あの大きな肉食獣のオオカミと自分の可愛い愛犬を結びつけられないかもしれない。しかし今、目の前にいるあなたの犬も、オオカミが持っているパックアニマルの血を引き継いでいるのは間違いない。

 犬が人間と仲良く暮らせるのは、犬の持つ社会と私たちの人間の社会が非常に似ている構成であるからと言える。私たち人間も、家族というパックを持っている。また会社や学校などもパックと言えるだろう。骨も砕ける顎や歯を持った肉食獣である犬が、たとえ空腹でも人と一緒に行動できるのは、犬が飼い主とその家族、そして人間を自分の属するパックとし、信頼しているからと言える。

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犬と正しく会話をする

 なぜ犬は飼い主の指示を聞くのか?

 それは、飼い主をパックリーダーとして認めているからだ。ではそのリーダーには、何が必要なのだろうか?

 一つは、犬と会話ができることだろう。つまり、犬に対して的確な指示を出せる事と言い換えられる。例えば、犬が間違った行動をした時には、その犬が混乱しないように正しく叱れること。コマンドを実行できた時や犬が正しい行いをした時に、賞賛の声(気持ち)を犬に伝えられる人に対して犬は心を許し尊敬すると私は考える。

 女性の飼い主に多い、「うちの犬は旦那の言うことは聞くのに、私の言うことは聞いてくれない」という悩みは、この典型的な例だろう。

 一般的に女性は、男性より高いトーンの声を持っている。犬の行動を正す場合にはCorrection tone(コレクショントーン)と言われる低く太い声で「ア゛ーー(「あ」に濁点)」という音を出して、その行動が間違っていると犬に伝える。この低くて太い声は、パックリーダーや母犬が子犬たちを嗜める時、その行動を正す時に使う唸り声を真似たものだ。

 そのため、「矯正をしたい」飼い主の声のトーンが通常の会話と変わらなければ、犬にはそのcorrection(矯正、補正)が伝わらず、混乱を与えるだけで、その行動は変わらない。いくら人間の言葉で「NO」や「ダメ」と言ったところで、その言葉に意味が伴わなければ犬はその行動が間違っていると理解できないからだ(簡単に言えば、あなたの恋人がゲラゲラ声を出して笑いながら怒っていても、こちらは怒っているとは受け取れない)。また、女性特有の高いトーンの声は、犬を褒める時に使うPraise tone そのものであり、これらは「楽しいことがあるよ!」という、遊ぶ時にも使う。つまり女性が自分の声のトーンを変えずに、犬にイケナイと叱っても、犬からすれば「飼い主は喜んでいる!私は良いことをしている!」と感じてしまうのだ。「犬が私の言うことを聞かない」という理由の一つはこれで、飼い主は犬との会話を習得する必要がある。

Pack Leaderは誰?

 一部の飼い主の中に、こんな人もいる。

「犬は私の友達だから同等だ」
「犬は子ども同然で、命令なんて可哀想でできないわ」
「私はこの犬を愛しているから、下に見ることなんてしない」

 ヒエラルキーがあることは当然であり、それが必要な犬に向かって、飼い主が犬とは同等だと接すれば、どうなるだろうか?

 犬は「リーダーではない飼い主の言うことを聞く必要はない」と考え、行動する。つまり、犬自身がその飼い主の上に立とうとするわけだ。そうしなければ、そのパックが外敵から襲われた時にはリーダーから守られないこと、リーダーの指示がなければ狩りも成功せず、パックは全滅することを犬は知っているからだ。

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 私は犬に対して指示を出さないこと、リーダーとしてその犬を導くことができない(しない)方が、犬にとって可哀想であると感じる。また、この人間社会ではさまざまな状況に応じて、飼い主が犬に的確な指示を出すことは必要であり、それによって未然に事故や怪我を防ぐことにも繋がる。

 誤解が無いようにはっきり伝えるが、ここでの指示、命令、立場というのは、餌を与える前に犬に何度もオテをさせることではない。また、犬に対して厳しく接しすぎたり、体罰を与えたり、怒鳴り声や威圧的な態度でコマンドを出すことでもない。そして、犬は人間より下等な生き物だという意味でもない。これら挙げた行動は、私たち人間が不条理と感じるのと同じように、それらが続けば犬自身の行動と気持ちはさらに混乱し、飼い主に対して不信感を覚えるはずだ。また、恐怖や痛みから人を咬むことなどで、自分の身を守ることを選ばざるを得ない状況を作ってしまう。絶対にしてはならない。

 私は犬と一緒に遊ぶ時、友達のように犬と接する。いい年したオッサンの私が、高い声を出しながら犬と一緒にはしゃぎ、一つのボールを使って遊ぶ。犬が寝ている時には、自分の子供のように優しい気持ちでその寝顔を見るし、寒い冬に丸まっていれば薄い毛布をそっとかける。リーダーになるからといって、その犬を道具のように扱うということでもなければ、そこに愛がないわけでもない。その逆で、犬という動物への尊敬、この犬を守るため、犬を犬らしく行動させるためには、飼い主である私がパックリーダーになることが必要不可欠だ。

 飼い主からの的確なコマンドや会話を通して、ヒエラルキーを明確にすることは犬を混乱させないことであり、それは犬が安心する暮らしに繋がる。そのためにも、私たち飼い主は犬のパックリーダーになる必要があるのだ。

>>次回は、どのようにして飼主はパックリーダーの素質を身につけられるか? について書こうと思う。

◎プロフィール

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五十嵐廣幸

オーストラリア在住。元dog actuallyライター。週末は愛犬と一緒にSheep Herding(羊追い)をして過ごす。サザンオールスターズ、クレイジーケンバンド、そして動物を愛す。犬との生活で一番大切にしているのは、犬が犬として生きるためのクオリティ・オブ・ライフ。

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>>犬の用具を考える vol.1 <ボール編> 犬とのボール遊びは、飼い主の責任で成り立っている




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