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2017.06.23

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シェルターボランティアで学んだこと vol.13

「4%」の現実

2年足らずのボランティア期間で、多くの犬たちと出会いました。私がボランティアをしていた2015年度を例にとると、その年、シェルターにたどり着いた犬は742頭にのぼります。

#Lifestyle

Author :写真・文=古川あや

 この742頭のすべてをシェルターが受け入れるわけではなく、実際に保護したのは665頭です。残りの77頭はというと、深刻な健康問題や問題行動を理由に飼い主などが安楽死を希望してシェルターへ連れてきて、その処置が行われた犬たちです。
 安楽死は日本であまり一般的ではありませんが、年老いて動けなくなったり、病気によって犬が苦しんでいたりする場合、その選択をすることは珍しいことではありません。シェルターでは犬だけを引き取るのではなく、安楽死する場に飼い主も一緒にいてもらい処置をすると聞いています。
 ただ、飼い主が安楽死を希望するからといって、その希望どおりになるわけではありません。シェルターの獣医師たちが「この子は治療をすればQOLを維持していける」と判断し、断脚などの治療後、里親に引き取られていった犬もいます。

受け入れた犬の96%が前向きな結果に

 保護した665頭のうち、実際に里親のもとに引き取られたのは417頭。無事に飼い主の元に戻ったコが217頭、他のシェルターに移動したコが24頭います。そして、シェルターに受け入れられた後に、28頭が安楽死されています。この安楽死というのは、やはり健康状態が深刻だったり、問題行動の矯正が難しかったり、譲渡に適さないと判断された犬たちです。

 シェルターの「positive outcome(前向きな結果)」は実に96%ですから、かなりがんばっている数字だと思います。そして、わたしたちボランティアが接するのは、譲渡に適したと判断された犬たちなので、こういった問題に直面することはほとんどありません。

 ボランティアを始めるにあたっての最初の説明会で、一人の女性が「このシェルターでは安楽死をしていますか」と質問を投げかけたことを覚えています。それに対するシェルター側の答えは、滅多にはないが、健康上や問題行動の矯正が難しい場合に限ってあるとのことでした。その時は「ここでも少ないとはいっても安楽死はあるんだ」と思いはしましたが、あまり深刻には受け止めていなかったように思います。

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ほとんどの犬が里親に引き取られていく、その一方で......

シェルター全体でケアをしたものの......

 ただ例外はありました。譲渡に適すると判断されたのち、問題が起きてしまった場合です。

 ハウンド系のまだまだ若い犬もその1頭です。詳しい経緯を述べることは避けますが、興奮しやすく、一旦興奮すると口で突く癖のあるコでした。顔や手には向かってきませんが、お尻を突くのです。とにかく過度に興奮させないように、自分自身が落ち着いて接することを心がけました。
 シェルター滞在が長引くにつれ、ケンネルの中に戻ることを嫌がるようになっていきました。シェルターの職員はもちろん、わたしたちボランティアも何とかよい方向に進むよう、さまざまなケアを行いました。

 私ができることはできるだけひんぱんに散歩に連れて出ること、ケンネルの中でできるだけ長く一緒に過ごすことしかありませんでした。ハウンド系の犬ですからとにかくにおいとりが大好きです。プレイグループの後などにシェルター近くの雑木林のある公園へでかけ散歩して、一緒にケンネルの中に入ってウトウトするまでマッサージして......。
 でもある日、ケンネル内にその子の姿がありませんでした。お世話をするスタッフを噛んでしまって、しばらくたったころでした。

 

「犬を家族にとシェルターにやってくる人は、犬とリラックスした、楽しい生活を送りたくてやってくる。大変だとわかっている子を迎えてくれる人はやはり少ない」

「今の状態で一般の人に譲渡することはできないと判断された」

「ケンネルに入るのをすごく嫌がるようになっていたことでもわかるように、ここでの生活は彼にとって苦痛だったから、それからは解放されたんだと思う」

 静かに説明してくれるボランティア仲間を聞きながらも、頭の中は「どうして」という思いでいっぱいでした。難しい状況に陥っていたことは承知していましたが、それでもまさか安楽死されるとは思ってもいなかったのです。

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Adopt, Don't shop

一人ひとりができることを

 里親になれない私に、シェルターの職員を責める気持ちはありません。その判断をした人の方がよほど辛かったに違いありません。浮かんでくるのは、どうしてこんな状況にまで至ってしまったのだろう、という思いだけです。

 

 最後にどうやったら私たちの社会は不必要な安楽死を減らせますか?という問いに対するシェルターからの答えを記します。

コミュニティー全体が次のことに責任を持って行えば、安楽死は減らせます
 ・避妊、去勢を行いましょう
 ・最後まで責任を持てるペットだけを飼いましょう
そして......
 ・ペットは買うのではなく、シェルターやレスキューグループから引きとりましょう

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