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2017.05.02

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進化版 成犬にも役立つパピートレーニングのすべて<後編>

子犬期を過ぎても大丈夫! 成犬の問題行動へのアプローチとは?

ドッグライフセミナーには東京、大阪会場で100人近くが集まり、鈴木ひろみ先生のお話に耳を傾けました。進化版パピートレーニング「レイドバックトレーニング」について紹介した前編に続いて、後編ではパピー期を過ぎた犬の問題行動を修復する際に留意すべきポイントについてまとめました。

#Activity / #Lifestyle

問題行動の種はパピー期にある

「パピートレーニングを早期の段階から始めた場合でも、生後8カ月から2歳くらいで何らかの問題が出てくることがあります。例えば、来客に激しく吠えかかるなどよくみられますね。その原因には、パピー期のアプローチで感情反応を無視した、あるいは気づかなかったことが考えられます。
 座ったり伏せたりという行動を本人が自ら使うのならいいのですが、誰かが近づいてきたからと、『オスワリ』と言って座らせるというように、強制的にオビディエンスに結びつけるのはよくありません。特に犬が環境反応に対して否定的な時(恐怖や不安を抱いている状態)に行うとストレスにつながります」

 パピー時代に学んだことは良くも悪くも一生そのままなのかというと、何歳になっても行動修正はできるという。ただ、どのような環境で、どれだけ学習が行われたか、そして犬の感情反応によってアプローチが違ってくる。

「ある問題行動が出ている場合には、その行動が出る前、つまりは問題行動が出ていない状態から手続きを始めます。その際にはボディランゲージを注意深く観察して、感情反応を読み取る事に集中することが重要で、時にはこの段階に時間を多く使います。これらの手続きはシンプルにはいきませんし、正直トレーナーとしての全知識と全経験をかき集めて計画を練って関わります。

 例えば、複数の犬が一緒に写真撮影のために並んでお座りをしている場合、どのように座っているかを見てあげてください。中には不快さを示している犬がいるかもしれません。"できる"ことだけに集中すると"心"が無視されてしまうのです」

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犬たちの距離が近く一見楽しい記念写真に見えるが、そっぽを向くなどストレスサインを出している犬も

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犬と犬との間に快適な空間があるため、ストレスのかかっていない集合写真

犬のストレスサインを見落とさない

 行動修正の際、どこからアプローチするかを見極めるために、まずは犬の行動をしっかりと読み取ることが必要。そして、行動修正の第一歩は、読み取った行動をレスポンデント(意識しなくても刺激に対して出る反応)、オペラント(学習の結果によって行う自発的行動)に分類すること。

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レスポンデント:筋肉の緊張/尻尾が立つ/耳が後ろに倒れる/眉間にシワが寄る
オペラント:うなる/吠える

「犬の感情が否定的なものに結びついている場合は、レスポンデントからアプローチし、オペラントを変えていく必要があります。筋肉の硬直はマイナスの情緒反応ですから、トレーニングはこの筋肉の硬直を軟らかくすることから始めましょう。筋肉の硬直が出なくなれば、オペラントの行動が変わり始めるんです。
 筋肉が硬直するのは、"痛い・怖い"などの否定感情と結びついています。原因となる対象物から距離を離し、どこから硬直が始まるかを観察します。リードを引っ張ることでやめさせるのではなく、まずはその原因を排除する、または緊張しない程度に距離を置くと考えてください。そしてそこから行動修正のプログラムを組み立てていきます」

行動修正はレスポンデント反応から

「実際にはレスポンデントとオペラントは同時に表出します。その際、生命維持のための生理的反応であるレスポンデント行動の方が、優位に働きます。だから、行動修正ではオペラントからアプローチしても、うまくいかないんですね。否定的なレスポンデント反応が出た時点でフードの効果は激減します。報酬としてのフードへの学習意欲はオペラント行動だからです。またショックカラーなどを用いた場合、それらの恐怖や痛みを避ける為に学習は起こりますが、別の形で問題が発生しやすいリスクを抱えます。

 すでに触れたように行動修正は簡単ではないが、問題行動を抱える犬にとっては運動や遊びに制限が加わりやすい。それを解消してくれるのがノーズワークだ。

「私たちが広めているノーズワークの取り組みは、100%レスポンデントから始まり、オペラントに移っていくんですね。ゲームを通して自信が身につきますし、集中力も高まり学ぶ意欲も向上します。学習欲求は安心、安全、快適が保障されてから起きるものですから、いかにオペラントを引き出していくかが大切です。ここで注意したいのが、犬に過度な負担を掛けないように、犬のボディランゲージを読み取ることです」

 ハンドラーは犬を上から、または後ろからしか見ていない。問題行動を確認するときはビデオにとって全体を把握するなど、客観的に瞬間瞬間を観察する意識を持ちたい。また、「このコはフレンドリーな犬」などプラスの決めつけをするのは危険だ。決めつけたがために、オーナーのマインドが"安心感"にセットされてしまい、注意深く犬を観察しなくなってしまう。そうなると、驚怖反応を見逃してしまうことになるのだ。

妥協点を見つけよう

トレーニングによってどんな犬でもオーナーが思い描く理想的な犬になれるのかというとそうではない。犬の性格や状態によっては着地点を別の場所に設けることもある。

「実際にトレーニングに入る前には、オーナーと犬と面談をします。場合によっては2時間にわたることもあります。オーナーの希望と現状とのギャップチェックし、妥協点を見つけていくんですね。
 他の犬が来たら吠えかかる場合、直ちに別の方向にいくという妥協点もあります。また、動物病院が嫌いな犬の場合はレスポンデントが場所と結びついていることから、自宅に獣医がやってくる訪問獣医に変えるという方法をとったこともありました。
 それから、どんなにオーナーが犬をドッグパークに連れていくことを希望しても、犬のためにならない場合はストップをかけます。いずれにしても、どの方向に進んでいくか、具体的なイメージを持つことは大切です」

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パワーあふれる講演を長時間にわたって行った鈴木先生。人と犬の幸福な関係のために、ご自身の知識を経験を惜しみなく共有するという姿勢にdocdogスタッフ一同感激した

 それなりにトレーニングをしていても、なぜかうまくいかない......という方は、意外と多いと思う。そんな飼い主の方には、今回のセミナーはとても参考になる内容が盛りだくさんだったのではないだろうか。1年後には、さらに内容がアップデートされるとのこと。docdogとしても、楽しみに待ちたいと思う。

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