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2017.05.04

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[Brand History vol.1] 犬の靴人気No.1ブランド、Muttluksのルーツを探る

はじまりは愛犬の肉球を守りたいという想い

履かせやすく脱げにくいと、現在docdog(ドックドッグ)で人気No.1のMud Monsters(マッドモンスターズ)は、カナダ・トロントのMuttluks(マットルックス)社の製品。アウトドアシーンだけでなく、さまざまな刺激物からの肉球保護や屋内での滑り防止など、多様な使い方もされている犬の靴の誕生物語を、同社の設立者で代表のMarianne Bertrand(マリアンヌ・バートランド)さんに伺いました。

#Activity / #Lifestyle

Author :写真=Marianne Bertrand 文=古川あや

 docdogで取り扱っているMuttluksの製品はMud Monsters (マッドモンスターズ)Snow Mushers (スノーマッシャーズ)MUTTSOKS (マットソックス)の3点。厳選した素材を用い、犬の足裏の形や動きを考慮して作られた靴・靴下は、機能面はもちろんのこと、犬の履き心地も追求。これが人気を呼ぶ理由だ。
 犬第一、いわば"dog first"での製品作りを実現させているのが、Muttluksの設立者で代表のマリアンヌさん。常に犬と暮らしてきた愛犬家で、靴作りを始めるきっかけとなったのも、当時飼っていた4頭のバセット・ハウンドだったそうだ。

−30℃の極寒から愛犬の足を守りたい

 マリアンヌさんが犬たちと暮らしてきたのは、北海道より北に位置するカナダのトロント。トロントの冬は厳しく長く、10月後半から4月ごろまでの1年の約半分は冬で、真冬の平均気温は零下となるそうだ。犬の靴の販売を始めた1994年は、カナダを大寒波が襲い連日−30℃を記録した。

「実は犬の靴を作って売ることを考えたのは、期限の迫った住宅ローンの支払いのためでした。天気予報でまだ2週間は−30℃が続くと告げていたのを聞いて、犬の足を守る靴を作って販売することを考えました。とにかくすごく寒くて、犬を飼っている人たちは愛犬の足を守るものを求めていたんです」

 これは単なる思いつきではなく、実際に犬の靴の必要性を実感し、自作したという経験があったから生まれた発想だ。

「当時はまだまだ犬の靴は普及しておらず、私自身、初めて犬用の靴を手にしたときは驚きました。その頃、私は元の飼い主が手放したいわば『pre-owned(=中古)』のバセット・ハウンド4頭と暮らしていて、そのうちの1頭の元飼い主がクリスマスプレゼントとして犬用の靴を贈ってくれたんです。犬用の靴なんてウケ狙いのプレゼントだと思いました(笑)」

 ところが、試しに履かせてみたところ、犬がうれしそうにしている。

「最初は違和感から歩き方が少しおかしくなりましたが、少し歩いて慣れたあとは、ジャンプしたり、駆け回ったりとはしゃいでいるんです。そこで他の犬にも履かせてみたところ、すべての犬が同じ反応でした。冷たい雪や凍った地面から足を守ってくれるからだと思いました」

 犬たちの様子をみて、全頭分の靴を購入したいと思ったが、同じ商品はすでに売り切れており、在庫があるものは品質に不満があった。そこで、手元にある靴を参考に、残りの3頭分を手作りすることに。

「靴底やつま先を補強するなどの思いつく限り、いろんな工夫をしました。当時の靴を元にさらに改良を重ねたものが『Fleece-Lined Muttluks』です」

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マリアンヌさんと1994年に作った初期のMuttluksの靴を履く4頭のバセット・ハウンドたち。4頭の犬と大寒波のおかげでMuttluksの靴は誕生した

オバマ前大統領の犬BoとSunnyも愛用?

 住宅ローンの支払い用の資金の一部を使って材料を調達し、ダイニングルームで家庭用ミシンを使って靴を作り始めたマリアンヌさんの元を、靴の噂を聞きつけた飼い主たちが訪れるようになったという。
 犬は体を被毛で覆われていることもあって寒さには強いが、地面に直接触れる肉球は零下の気温で凍った地面や雪にさらされている。肉球の間の毛に雪が絡まって雪玉ができたり、氷で傷ついたり、乾燥や荒れが進むと皮膚が切れて出血することさえあるという。あまりに厳しい冬が愛犬家たちに靴の必要性、有用性を気づかせることになったのだ。

「当時はまだインターネットやSNSは普及していなかったので、角の青い家に住んでいる女性が犬の靴を売っているという口コミの情報だけで、『ここで犬の靴を売っていますか?』と多くの飼い主さんたちが訪ねてきました。大量に仕入れてくれたペットショップもあって、この年の冬だけで130セット(520個)の靴が売れたんです」

 翌年の1995年の秋にはペット用品の展示会に出展したところ、人間用のミトンだと勘違いされたと当時を思い出して笑顔を浮かべるマリアンヌさん。しかし、底にラバーを貼る、つま先を牛革で強化する、靴が脱げないよう二重ストラップを採用するなど数々の改良を重ねていくうちに、Muttluksの靴は評判を呼び、カナダ国内はもちろん、アメリカそして世界中から注文が舞い込むようになった。
 現在では靴だけでも6種類、さらに靴下、肉球クリーム、ドッグベッドやコートなど、犬が快適に過ごすための生活グッズにまでラインナップを拡充。2016年3月にカナダ首相として19年ぶりにワシントンを公式訪問した、トルドー首相がオバマ大統領(当時)の愛犬SunnyとBoに「All Weather Muttluks」をプレゼントした。そんなエピソードでもわかるように、Muttluks の商品は今やカナダを代表する製品となっている。

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Original Fleece-Lined Muttluksを履くマリアンヌさんの現在の飼い犬たち。左からChief、Nanook、Kasmira

エスキモーは3000年前から靴を履かせていた

 当初想定された冬だけでなく、夏場のアスファルトや焼けた砂浜による火傷防止、ケガをした足の保護、フローリングでのスリップ対策といった日常使いにも愛用されている靴は、災害救助の現場で活躍する犬たちの足も守ってきた。

「米国同時多発テロ(9.11)の際にはニューヨーク市警察から、300頭の災害救助犬の足を守る靴の提供を打診されました。ガラス片などが散らばる現場で足を怪我する犬がいたためで、すぐに850セットを準備してNYまでトラック輸送し、現場で働く犬たちの足元を守るお手伝いをしました。社会貢献活動『Woof Wish Program』の一環で、日本の東日本大震災時にも靴を送ったんですよ」

 犬の靴の会社を作ったマリアンヌさんでさえ最初は冗談だと思ったというほどだから、犬が靴を履くという普段見かけない光景に違和感を持ち、犬には迷惑、よくない、と考える方がいるのも当然といえば当然だろう。だが、20数年前の自らの体験から、マリアンヌさんは自信を持って犬の足を守る靴の製造・販売を行っている。

「靴の内側は犬の肉球の形に合わせた形状となっているので、犬は靴を履いていることを感じることなく走ったり歩いたりできると思います。熱さや冷たさから肉球を守るだけでなく、草アレルギーを持つ犬たちにも愛用されていますし、ヤブの中に分け入って行く狩猟犬に怪我防止のために靴を履かせる方もいます。
 実は犬に靴を履かせることは最近の流行りなどではなく、3000年前からエスキモーたちは靴を履かせていたという調査もあるんです。彼らは犬を労働力として、共に厳しい冬を生き抜く同志として大切に扱っていて、動物の皮を足に巻きつけて凍土や雪から守っていたそうです」

「Muttluks」とはエスキモーの人たちが履く、エゾシカやアシカの皮で作られた防寒用の靴Muklukを元にした造語で、Mutt(雑種の犬)、Luks=Lucky(幸運)を当てはめたものだそう。
 私たち人間が靴を履き始めたのも素足を怪我から守るためだったと考えると、犬たちが過酷な環境から肉球を守るために靴を身につけることはごく自然な流れとも思える。
 Muttluksの靴は決して犬を擬人化したファッションのためではなく、自然の中で暮らす犬を怪我から守りたいという温かな思いから生まれ、犬の安全と健康、幸福を願う人に愛用されてきたものだった。docdogで人気を呼ぶ理由はここにあったといえそうだ。

◎Muttluks社の犬の靴・靴下

Muttlucks

Mud Monsters (マッドモンスターズ)

Mud Monsters (マッドモンスターズ)

Muttluks

Snow Mushers (スノーマッシャーズ)

Snow Mushers (スノーマッシャーズ)

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