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2017.05.23

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シェルターボランティアで学んだこと vol.12

シェルター犬をトレーニングする新しいプログラムに挑戦!

プレイグループ、そしてドッグウォークの活動を続けて10カ月ほど経った頃、新しくスタートする「Dog Training Program」への招待状が届きました。シェルターの犬をトレーニングするボランティアです。

#Lifestyle

Author :写真・文=古川あや

地域社会から歓迎される犬になるために

 これまで行ってきたクリッカートレーニングは、吠えるのをやめた、ぴょんぴょん跳ねるのをやめた、ゲートの所にやって来る、オスワリするといった自発的な好ましい行動を強化するものでしたが、ドッグトレーニングプログラムでは、はっきりした目標がありました。
「地域社会に温かく迎えてもらえるような、マナーのよい家庭犬となるために知っておくべき基本的スキルを教える」ということです。
 第一段階の目標として設定されているのは、

 ・名前に反応する
 ・ハンドラーに注目する
 ・「オスワリ」をする
 ・「マテ」をする

といった基本中の基本です。

 特に最初の2つ、名前に反応する、ハンドラーに注目するという項目は、家庭に入った犬ならば日常生活の中で自然に習得するものだと思いますが、シェルターという環境下では、目標として設定されていました。家庭犬として必要なことを学ぶには、やはり家庭という環境に入ることが一番なのでしょう。
 このプログラムでは複数のボランティアが1頭に関わることになります。このため、プログラムの開始に当たっては、犬が混乱しないよう、参加ボランティアが全員揃って基本的な理論や手や体の動かし方などの細かなテクニック・注意すべきポイントを数回にわたって学びました。

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シェルター滞在時は人慣れせず、おやつを人間の手から食べなかった卒業犬。偶然再会したときにはすっかりおやつ大好きな家庭犬に変身していた

犬の立場でクリッカートレーニング体験

 事前の準備講座は内容も多岐にわたったため、語学力が不十分な私にはなかなか大変な経験でしたが、自分の犬を育てる中で学んだこと、気づいたことなどが整理できましたし、ボランティアメンバーのプロのトレーナーから犬を扱う際のちょっとしたコツを教えてもらうなど、多くの収穫がありました。

 中でも新鮮だったのが、クリッカートレーニングを犬の立場で体験するという時間です。人間役が求める行動を、ヒントゼロの状態から探し当てるのです。無理は承知で目を覗き込んで気持ちを読もうとしたり、仕方ないから手や足を動かしたり、椅子に座ってみたり。窓に向かって歩き出したとき、クリッカー音が響いたときは思わずうれしくなりました。
 正解はブラインドを触るというものでしたが、答えを見つけるまでのストレスと、探し当てたうれしさ、そしていかに「Good!」という合図であるクリッカーを鳴らすタイミングが大切かを知りました。タイミングがずれると、こちらは混乱してしまいます。ほんの数分の体験で、ゼロから何かを習得する大変さと分かりやすい指示を出すことの大切さをしっかりと実感することができました。

1歳のハウンドミックスのトレーニング例紹介

 トレーニングの対象となる犬はプログラムの責任者から指定され、性格、当面のゴールなどの情報が共有されます。例えば、
「1歳のハウンドミックスの男の子で、他州からトランスファーしてきました。少々臆病なので、自信をつけさせることでよい方向に導きたい。自信をつけさせるためにいくつかの方法があります。例えば......」
と、留意すべき点、具体的な方法などが示されます。

 このコの場合は、【familiarization(慣れ親しませること)】【successful repetition(成功体験を積み重ねること)】がキーワードとしてあげられ、【familiarization】では、周囲の環境に慣れさせること、そして、1度にたくさんのことを教えるのではなく、1つか2つのことをしっかりと行えるように時間をかけてトレーニングすること、【successful repetition】では、例えばお座りを教える場合でも、いきなりお座りさせようとするのではなく、「頭を上げる」といった小さなステップでの成功体験を着実に積み重ねていくこと、そして、お尻が地面につかない限りは「sit」の言葉を発さないことが確認されました。そして、最後に「学ぶことで受けるストレスを必ず放出してあげてください」との一言が添えてありました。

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1歳のハウンドミックス。トレーニングは気の散るようなもののない場所からスタートする

 複数のメンバーが各々のスケジュールに合わせてトレーニングするため、情報の共有が必要です。自分に行ったセッションの長さ、達成度や気づいた点などをフォームに記入しフォルダに保管、セッションを始める前には必ずそれに目を通すというシステムとなっていました。
 1歳のハウンドミックスはどうなったか、というと、お座りのような体勢にはなるけれど、床にお尻がつく完全なお座りではないという状況がしばらく続きました。トレーニングといっても、実際に集中するのはほんの数分です。主にプレイグループの後や、ドッグウォーキングボランティアで一緒に散歩しながら、またはバックヤードで遊んだりしながら、トレーニングを繰り返していきました。そして、何となく表情に明るさが出たかな? と感じるようになったころ、ついにお尻が地面につきました。

 それからしばらくして、このコは里親さんの元に引き取られていきました。ハウンド系やピット系は里親が見つかるまで時間がかかり気味な上に、まだ若く運動量も必要で、吠えもありました。トレーニングもまだ道半ば。「しっかり理解して根気強く接してくれる人だといいね」「広い庭のある家で、気の合う犬がいるといいんだけど」と心配が尽きません。アダプションの手続きを行ったメンバーから、里親さんはこのコの課題と向き合う準備は十分できている人で、里親さんと一緒にすごくうれしそうに帰っていったと聞いて、ようやく心から喜べたことをはっきりと覚えています。

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トレーニングの後はおもちゃなどを使ってストレスを放出させる。ご褒美はあっても学ぶことはプレッシャーになるそう

 こんな風にシェルターでのトレーニングは、突然、終わりを迎えます。でも、名前に反応したり、ハンドラーに注目したりができれば、本格的なトレーニングに必要な「集中力」を保つ助けになるそうです。シェルターでのトレーニングの終了は、里親さんとの二人三脚でのトレーニングのスタートです。少しでもその役に立てていたのなら、うれしいなと思います。

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