magazine

  1. トップページ
  2. MAGAZINE
  3. いつもの散歩コースにも、知っておくべき危険がたくさん

2017.04.13

読みもの        

これからの季節に気をつけたい、身近に潜む危険植物・危険物質<前編>

いつもの散歩コースにも、知っておくべき危険がたくさん

外歩きが楽しい季節がやってきました。いつもの散歩も長くなり、ピクニックや本格的なアウトドアへと出かける機会も増えていきます。愛犬を連れて屋外で過ごす時間はこの上なく楽しいもの。でも、お出かけのあとに動物病院のお世話に......という飼い主さんも多いようです。そこで、外出時の注意点をVe.C動物病院グループ総院長の朴 永泰先生に伺いました。前編となる今回は、身近な散歩コースについてまとめました。

#Activity / #Healthcare / #Lifestyle

Author :写真=大浦真吾 文=古川あや 監修=朴 永泰(Ve.C動物病院グループ総院長)

意外に多い、毒を持つ植物

 犬と暮らしている人にとって欠かせない日課である散歩は、身近な自然に触れる機会でもある。植物が芽吹いたり、花が咲いたり、小さな変化にいち早く気づけるのは愛犬の存在があってこそだろう。犬たちにとってもいろいろな匂いを嗅いで、音を聞いて、さまざまな刺激を受ける楽しい時間だ。しかし、散歩道を注意して見てみると、実は思いがけない危険が潜んでいる。
 例えば道端の花壇や緑地など、犬たちが匂いを嗅ぎたがる場所には毒を持つ植物がかなりの確率で植えられている。身近なところでいうと、アジサイ、アサガオ、ユリ、スイセン、チューリップ、プリムラなどもそうだ。人間の場合だが、庭に生えているスイセンの葉をニラと間違えて食べ、食中毒を起こしたというニュースも耳にする。

 アサガオは種子を下剤として使うために薬用植物として日本に入ってきたものの、作用が強すぎるため現在は使われていない、という驚きの事実もある。薬と呼ぶか毒と呼ぶかは、微妙なさじ加減ということなのだろう。

「自律神経に働きかける薬の多くは植物から作られているように、植物は薬にも毒にもなります。例えばアジサイの葉の毒は深刻で、個体によっては激しい嘔吐を引き起こします。胃の中からアジサイが出てしまっても、残った成分によって嘔吐が続いたというケースも私自身が経験しました。個体にもよりますが、アジサイのように激しい症状が出る植物を確実に食べてしまったという場合には、早めに吐かせた方が安心でしょう」

170407_02.jpg

これから、アジサイ、アサガオの季節になる。日常の散歩道でもよく見かけると思うので、危険植物であるという認識は持っておくようにしよう(写真=フリー素材ぱくたそ

どんな植物が危険?

 キンポウゲ科、ツツジ科、トウダイグサ科、ナス科、バラ科、ユリ科の植物は基本的に有毒で危険だといわれているが、その症状の出方は個体や量にもよる。このため、葉や花を食べてしまったからといって即動物病院へ駆け込まなければいけないという訳ではないが、散歩中の愛犬の行動には注意を払いたい。

 

「最近では飼い主さんの意識も高くなっていて、犬が食べてはいけないものや、毒物になりえる植物に関してご存知の方も多いようです。ですが、そのリストに上がっている植物の数は膨大です。一般によく知られている植物に関しては近づけないことが必要ですが、初めて聞いたというような情報にまで神経をとがらせる必要はないでしょう。
 理由は解明されていませんが、"犬は胃腸の調子が悪いと草を食べる"という行動をとることはみなさんよくご存知かと思います。ですから、下痢や嘔吐などの原因が、すべて有害植物を食べたから、とは言い切れません。もともとお腹の調子を崩していたということも、考えられるんですね」

 それではアジサイやアサガオなど実際に食べてしまった場合、実際にはどのように対処すべきなのだろう。
 動物病院での処置は一般的に静脈にトラネキサム酸を注射し、食べた植物を吐かせるというものだ。ところが、動物病院自体がストレスになるから家で様子を見たいという場合や、外出先で近くに動物病院がないというケースも考えられる。
 植物を食べた場合の症状は比較的早く、当日か翌日には消化器症状が出る。実際に症状が出てしまった場合には病院での処置が必要だが、犬の様子に変わりない場合は以下のような点に気をつけて、見守りたい。

「動物は息や尿、便を介して体の老廃物を排出します。特に口から摂取したものは尿や便から出て行きますので、水を飲ませて排出を促しましょう。毒のあるものを体内に入れた状態で、脱水症状になることは非常に危険なのことなので、体内の水和状態を保つことも重要です」

170407_03.jpg

経口摂取だけでなく、経皮摂取の可能性も

 ここで注意したいのが、植物の中毒は必ずしも口から食べる「経口」に限らないという点だ。あまり知られていないことだが、例えば花粉を吸い込むことによって中毒症状が起きることもある。ネコのユリ中毒は花粉を吸い込んだだけでも症状が出て、腎不全を引き起こすことは広く知られているが、これは犬にも共通することだという。

「犬たちが口に入れるものについては注意している飼い主さんは多いと思いますが、つい忘れがちなのは鼻や皮膚を経由しての摂取です。あまり知られていませんが、皮膚からの経皮感作も注意すべきポイントでしょう。
 実は犬の皮膚は人間の皮膚の3分の1ほどのバリア層しかないため、直接口や鼻から入らなくても、接触するだけでもトラブルになりかねません。それから、犬のアレルギーも最近増えてきています。犬がくしゃみを立て続けにする、突然掻き始めるといった場合には、近くにある植物を確認してみるといいでしょう」

 アレルギーに関しては、人間にとってのアレルゲンは犬にも当てはまると考えておこう。フケやホコリ、カビの胞子などがアレルゲンとなるが、犬の症状は「かゆみ」となって出るため、突然かゆがるなどの症状が出た場合には、その前後の行動範囲にあるものを確認しよう。

「かゆみなどの症状の場合、なかなか原因を特定するのは難しいのが現実です。ただ、皮膚感作が疑われる場合は、犬も洋服や靴、靴下を着用して皮膚を守るといったことでも症状を抑えることが期待できます。ステロイドなどの薬に頼らなくても、生活スタイルを少し調整することで、予防すること、改善することはとても有効な方法だと思います」

170407_04.jpg

◎アレルゲンから足先を守る靴・靴下

毒を持たない植物にもご注意!

 毒を持たない植物にも意外な落とし穴がある。
 例えば、先の尖った雑草を食べる犬は多いが、この草を大量に食べたことで腸閉塞を起こした患犬がいたそうだ。

「腸閉塞の症状が出ているゴールデン・レトリーバーのケースでは、先の尖った葉が何本も折り重なり、ボールのような形となって腸内に引っかかっていました。また、植物自体に毒性はなくても、植物についている昆虫を誤って食べ、昆虫が持っていた寄生虫がつく危険性もあります」

 過剰に恐れることはないものの、身近な場所を歩く時にも注意が必要だ。注意すべきポイントを頭に入れて、これからの季節の外歩きを、楽しんでいただきたい。

>>後編では、範囲を広げて自然の中などに潜む危険を取り上げます。

◎監修者プロフィール

170407_05.jpg

朴 永泰先生

Ve.C動物病院グループ総院長/獣医師。2008年に北里大学卒業後、多くの臨床経験を経て、2015年から代官山動物病院院長、2016年よりVe.Cグループ総院長を務めている。専門・得意分野は、総合診療科/内視鏡外科/軟部組織外科/循環器科/救急医療。
自由が丘動物医療センターHP:www.vec-jygamc.com

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

熊本地震の経験から、犬の靴の必要性を学ぶ

熊本地震の被災者として、飼い主として、動物との共生社会を考える

熊本地震の被災者として、飼い主として、動物との共生社会を考える
熊本地震の経験から、犬の靴の必要性を学ぶ