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2017.04.12

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いざという時のために……愛犬との避難生活を考えよう vol.2

熊本地震の被災者として、飼い主として、動物との共生社会を考える

熊本県益城(ましき)町と西原村で震度7を観測した、2016年4月16日の熊本地震「本震」からまもなく1年が経とうとしています。そんな節目を迎えるにあたって、益城町にある木山仮設団地とテクノ仮設団地を訪問してきました。地震発生から今日に至るまでの、愛犬との生活とはいったいどのようなものなのでしょうか。「防災」をテーマとした短期集中連載の第2弾、そして第3弾として、今尚抱えている問題を踏まえ、被災飼い主の方々の実体験を通して見えてきた本当に必要なものについて、考えてみたいと思います。今回は、飼い主である"人"にフォーカスしてまとめてみました。

#Lifestyle

Author :写真・文=docdog編集部 取材協力=HUG THE BROKENHEARTS

「集団生活」だからこそ、最も大切なのは「人に迷惑をかけない」こと 

「大規模震災が発生すると生活環境が一変し、元の生活に戻るまで長い時間がかかります。今回の熊本地震で言えば避難所(体育館や学校など)生活が長い方で約半年におよびました。その後、自立に向けて仮設住宅へ移り、自宅再建へ向けて準備し始めたり、災害公営住宅や賃貸住宅などでの新生活を検討し始めたりしていくことになります」

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 お話いただいたのは、公益財団法人 熊本YMCA 木山仮設団地 地域支え合いセンター/所長の日野充裕さんだ。

 震災発生時は、「命を守る」ことが最優先事項だ。多くの場合、人命が最優先されるが、ペット飼育者にとっては、人命と等しく犬・猫の命も大切である。そのため、犬や猫と暮らしていた被災者は、ボランティア団体と力を合わせて、動物の安全確保に努めることになる。同行避難するものの、実際には避難所でペットと共に生活ができなかったり、共用スペースの問題からペットに満足な運動をさせられない場合がある。そういった問題に対して、ボランティア団体が提供する一時預かりやドッグランを活用しながらペットの安全を確保するケースが多くある。実際、この木山仮設団地で暮らしている方々も、ボランティア団体の協力を得ていた。

 仮設住宅の建設が終わると、被災者は避難所から仮設住宅へと移り住むことになる。避難所生活に比べ、仮設住宅ではペットとの入居が認められるケースが多く、被災地におけるペットとの共生に関する課題は、避難所生活から仮設住宅団地での集団生活向けて、より強く出ると日野さんは言葉を続ける。

「仮設住宅では、密集した団地型住居の中で"普通の生活を営む"ことを目標とします。次の生活に向けて自立していく場ですから、震災発生前から犬や猫と暮らしていた人は、できれば一緒に暮らしたいと思うはずです。一方で、犬や猫と暮らした経験のない人や苦手な人からすると、日常生活で動物を身近な存在として意識しなければいけないというのは、やはりストレスでしょう。"吠え""匂い""マナー(配慮)"など、さまざまなことが問題になるのはそのためです」

「防災グッズ」よりも目を向けるべきは「しつけ」と「マナー」

「ありがたいことに、多くの人々が震災発生後物資の支援をしてくれました。最初の数日は命をつなぐことが本当に大変でしたが、その後の生活では物資の援助にかなり助けられました。しかし、一度集団生活が始まると、問題になるのは"物が足りないこと"よりも、"飼い主とその愛犬のマナー"でした」

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 "熊本地震の被災者"と言っても、実際には一人ひとりがさまざまな価値観や背景を持ち生活を営んでいる。そうした状況で、「マナーを守れない人(犬)」は、被災時の集団生活から離脱せざるを得ない時があるそうだ。そうならないためには、飼い主家族が愛犬としっかりコミュニケーションの取れる関係性を作っておき、飼っていない人や犬が苦手な人にとって迷惑となるクセや行動を把握し、コントロールできるようにしておくことが大切だ。

 被災前の生活では気にならなかった吠えも、避難所や仮設住宅での集団生活では、問題となることも多い。しつけやトレーニングも、その目的意識を自身と愛犬にのみ向けるのではなく、犬が苦手な人からどう見えるかという点にも向けておくべきだろう。
 また、状況によっては飼い主が一緒にいられない場合もある。環境の変化や慣れない刺激に対しての順応性、初対面の人にも穏やかに接することができるかどうかは、愛犬の避難生活のQOLに直結すると言っても過言ではない。
 加えて、散歩時のマナーも大切なポイント。環境美化という点のみならず、犬を飼っていない人や苦手な人への配慮、地域社会からの"目"を日常的に意識しておく必要がある。

飼い主のストレス軽減が、避難生活を乗り切るカギ

「ペットは家族」という気持ちは、あくまでも飼い主目線での話。動物と暮らしていない人たちが、同じように理解できるわけではない。震災時の避難所/仮設住宅での生活では、このような多種多様な価値観を持った老若男女が同じ場所での生活を強いられることになるのだ

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「仮設住宅では、自分とは違う価値観を持つ人の気持ちを理解することが大切です。"支え合って"生きていかなければいけないからね。みんな分かってはいるのだけど、これがなかなか簡単ではありません」

 震災そのものはもちろんのこと、被災後の生活において、人と動物は強いストレスに長期間さらされることになる。多くの物理的喪失に加え、それまで築いてきた日常生活の喪失、場合によっては家族や友人の喪失もあるだろう。精神的に相当追い込まれた状態で、生き延びた飼い主と愛犬の避難生活は続いていく。
 そんな状況下で、愛犬の無駄吠えや咬みつきなどの心配や周囲からの苦情などは、想像以上のストレスになるに違いない。そんな時、犬を飼っていない人や苦手な人たちから、人気者にまでならなくとも、「あの人/あのコならまぁいいか」と思ってもらえるような振る舞いを、日ごろからできるようになっておけるかどうかは、とても大切なことだ。
 飼い主のストレスは、愛犬にとってもストレスである。制約の多い避難生活の中において、ひとつでも多くの楽しみ、喜びを愛犬に与えられるよう心に余裕を持つためには、まず主人である飼い主のストレスを、少しずつでも軽くしておかなければならない。
 家のこと、家族のこと、仕事のこと......。考えなければならないことは山ほどある。愛犬について思い悩むことが少なければ、被災時においても心のよりどころとして支えてくれる存在になるはずだ。

>>次回は、犬から見た震災、被災犬という暮らしについてご紹介します。

◎取材協力

HUG THE BROKENHEARTS
略称HUG。熊本県を拠点とし、動物愛護に関する情報発信、問題解決の為の具体案の提示、啓発活動を行っている団体です。

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



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