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2017.04.24

犬の感じている世界を知る Vol.4【聴覚/後編】

苦手な音を克服するには、その理由を知ることから

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

飼い主の帰宅を玄関の外からの靴音で聞き分けたり、ご飯の用意をしている音だけでハッと飛び起きたり・・・。人間よりも遠くの音を聞き分けられる、犬の耳。それでは、雷の音やチャイムの音など、犬の苦手な音に対してはどのように対処すればよいのでしょうか。犬の五感の不思議に迫るシリーズ第2弾の聴覚、今回は前編に続く後編です。引き続き、東京大学の特任助教、荒田明香先生に教えていただきました。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

#しつけ

犬にとって騒音はどう聞こえている?

 人間より4倍遠くの音を聞き分けられる、犬の耳。「犬は耳がいいから、工事の音などの騒音が人間よりもうるさく感じるのではないか」と心配する人もいるだろう。

「犬は耳がいい=遠くの音がよく聞こえるからといって、常に大音量で聞いている状態なのかはわかりません。少なくとも、聞きたい音を選んで集中して聞くことができるのは、人間と同じです。
 むしろ、犬にとって騒音がストレスになる原因は、何か大きな音がしたときに人間は『隣の家の工事の音だな』と納得できるのに対して、犬にはそれが何かわからないことにあるかもしれません」
 と荒田先生は話す。
 このことを踏まえて、日常生活で接する苦手な音に関して、具体的に見ていこう。

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雷のような爆発音は、本能的に苦手な音

 雷の音やチャイムの音など、犬が苦手な音、過剰反応してしまいがちな音はいくつかある。犬の問題行動という視点で見ると、これらの音は大きく2つに分けられるという。
「犬の苦手な音は、"先天的に苦手な音"、"経験によって後天的に苦手になった音"の2種類に分けられます。雷や地震、火山のような自然界の爆発音などが前者、チャイムの音などが後者です。音に対するおびえや吠えなどの問題行動に対処するときには、この2つをしっかり分けて考える必要があります」

 前者の中でも、特に日常生活で経験する機会の多い雷の音が苦手な犬は多い。これらは、なくしたり音量を下げたりできないのが難しい点。音におびえているときには、大好きなオヤツやオモチャを見せても興味を示さない場合も多いだろう。
 これを解決するには、音に対する嫌悪感(苦手度)を、楽しい気持ちや安心感(嬉しい度)が上回るようにすることが大切だ(こちらの記事を参照)。つまり、苦手度を低くする=音の刺激を小さくするために、音が聞こえにくい場所に移動し、他の音でマスクする。嬉しい度を上げる=飼い主が雷を怖がらずに、とびっきりの大好物を用意したり、一緒にまったりしてみたりする。この2つを同時に行うことによって、嬉しい度が苦手度を上回るようにするのだ。

 また、苦手な音を小さな音量から聞かせて、その音が鳴っても大丈夫だと理解させ、徐々に慣らしていく方法もある。ただ、雷に関しては、毎回一定の音ではなく、音を再現するのは難しい。また、音だけがおびえている原因とは限らず、気圧の変化や静電気、稲光など、さまざまな要因が絡んでいることも。そのため、音だけに慣らしても、それほど効果を発揮しない可能性もある。
 おびえがあまりにひどい場合は不安を下げる薬を併用する方法もあるので、動物病院で相談してみよう。

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チャイムの音自体が苦手なわけではない

 後者の中でも、吠えたりおびえたりという問題行動が起きやすいのは、チャイムの音だ。これらは他よりも少し目立つ音というだけで、そもそもの音自体には、犬自身特別な感情は抱かないはずだ。ただ、その音に伴って起きること、例えば、飼い主が慌ただしく動く、外から知らない人が来るなどの苦手なことが条件付けされた結果、その音に対してネガティブなイメージを持つようになってしまう。つまり、人間の行動によって、犬は注意すべき音と学習してしまった音ということだ。

 複雑に学習していることも多いので、まずは、飼い主のバタバタ感や、吠えたことに対して怒鳴る声など、何が原因で過剰反応しているのかを把握し、それをなくしていくこと。さらに、名前や「イイコだね」などの犬が落ち着く声をかけ、少しでもテンションが下がったら穏やかにほめることを、細かく実践していく必要がある。
 フードが好きなコなら、チャイムが鳴ったら名前を呼んで、フードの袋やタッパーの音をさせてフードをばらまく(オヤツが好きなら、時間のかかるオヤツをあげる)という方法もある。夢中で食べるようだったら、チャイム→手にフードを持って名前を呼ぶ→1粒→マテ→1粒→マテ→受話器を取って応答→1粒→マテ→少し多めにあげる→その間に玄関へ、と練習していくと、徐々にフードを与える回数を減らしていけるようになる。できるようなら、練習用に別のチャイム音を準備して上記を実施し、それから、実際のチャイム音を練習したものに変更すると、より短期間で解決するだろう。

 いずれにしろ、苦手な音がある場合は、その原因を理解することで、自ずと対処法は変わってくる。愛犬の感じている音の世界がどんなものなのかを想像することで、愛犬に合ったよりよい対処法を探っていこう。

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