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2017.03.27

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アメリカで活躍中のドッグトレーナーによる、進化版パピートレーニングとは?

犬の問題行動を解決するカギは「ココロ」の中にあった

2月に開催されたドッグライフセミナー「進化版 成犬にも役立つパピートレーニングのすべて」に、docdog(ドックドッグ)も参加させていただきました。セミナーの具体的な内容の解説前に、同セミナー講師を担当したアメリカ・サンディエゴ在住のドッグトレーナー、鈴木ひろみ先生について紹介したいと思います。鈴木先生とはどんな方なのか、進化版トレーニングはどのように生まれたのか、お話を伺いました。

#Lifestyle

Author :カメラ:大浦真吾 文:古川あや

理想のトレーナーに自分がなる!

 現在サンディエゴで犬たちのデイケアセンター、『Canine to Five Life Care Center』を運営し、多くのアメリカ人愛犬家たちの信頼を集めている鈴木先生。元々は大阪で人間の子どものデイケア=幼稚園教諭をしていたが、ご自身の愛犬である2匹のゴールデン・レトリーバーがきっかけで犬のトレーナーへと転身した。

「しつけについていろいろ調べたところ、トレーニングはオーナーが受けるものだとわかりました。でも、そんなトレーニングをしてくれるところが見つからなくて......。それなら、自分がなっちゃおう!と考えたんです」

 2004年に渡米し、そこで出会ったのが10年以上にわたって介助犬トレーニングを指導してきたアリータ・ダウナーさん。
「初めてトレーニング風景を見たときは衝撃でした。松葉杖をついて歩いている人からおやつが降ってくるんです(笑)。"松葉杖の人"に慣らすためのトレーニングだったんですけど」
  3年間、家庭犬トレーニングとオーナートレーニングの基礎を徹底的に学び、2009年には家庭で教えられないことを支える学びの場として、サンディエゴで初のパピー対象のデイケアを立ち上げた。

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鈴木ご夫妻で運営する、サンディエゴの「Canine to Five Training Center」(写真提供=鈴木ひろみ先生)

パピートレーニングの落とし穴

 オーナーが楽しく自分の愛犬をトレーニングできる環境を作り、問題行動を起こさせない「予防トレーニング」を行いながら、近くのシェルターでもボランティアをしている鈴木先生。シェルターに基本的しつけ(オビディエンス)の入っている犬が収容される現実を見て、こんな疑問を持ったそうだ。

「パピートレーニングをすれば問題行動を起こす犬は減ると思っていましたが、10年経っても落ち着きがない、人や犬に吠えるといった問題行動を起こす犬は減っていないんです。パピートレーニングでずっと関わってきた子でも、生後8カ月から1歳で突然問題行動が出てくる犬もいました。むしろ、問題行動による相談を受けたほとんどの犬が、パピートレーニングや基礎トレーニングを受けていたわけです。何がいけなかったのかと考えました。そうしたら、いろいろな落とし穴があったんです」

 まずは、パピー時代に経験させるべきことがたくさんありすぎて、とりあえず「経験させる」ことのみに集中してしまう。例えば、社会化の時期に老若男女いろいろな人に会わせるなどよく言われるが、人に会うという「行動」を作る要素の「感情」を見落としてしまいがちだ。そうすると、すでに人に対して恐怖を抱いている子犬は、100人目に会う頃にはストレスでシャットダウンしてしまうか、人を見るだけで唸るようになってしまうと、鈴木先生は言う。

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(写真提供=鈴木ひろみ先生)

 そこで注目したのが、「インパルス(衝動)コントロール」の必要性だ。オビディエンスなどこれまでのトレーニングは、オーナーの「コマンド」に反応する「セルフコントロール」。これだけだと、衝動に駆られて興奮し、セルフコントロールが効かなくなるという状況に陥りがちだ。一方、「インパルスコントロール」は「セルフコントロール」の前段階の、「感情や情動反応」を制御するトレーニングなのである。

「情動反応からトレーニングをスタートし、犬自身が落ち着いて判断する力を引き出すことが大切だと思いました。また、問題行動は自信のなさから生まれる自己防衛のためのものなので、犬に自信をつけさせることが解決につながります。そのためにもエラーレス(失敗しない)ラーニングで、慎重に環境づくりをしてトレーニングすることが重要なんです」

 発見した「落とし穴」を改善したアップデート版が、「レイドバック(ゆったりと、くつろいだ)トレーニング」。犬自身はもとよりオーナーにも負担がかからないプログラムで、今春より鈴木先生のセンターでスタートする予定だ。

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(写真提供=鈴木ひろみ先生)

ノーズワークトレーニングの可能性

 レイドバックトレーニングではdocdogのスタッフ犬、ベルも挑戦しているノーズワークが取り入れられている。嗅覚を使って箱の中に入った"匂いの元(フード、後にアロマオイル)"を探し当てるというスポーツだ。

「ノーズワークには嫌なことがないし、おいしいものを食べられるので、私たちの目指すパピートレーニングの三原則"うれしい・たのしい・おいしい"にぴったりなんです。ノーズワークは自発行動ですが、最初の取り掛かりは感情反応で、箱という物体刺激に肯定的な感情反応を持つ事からゲームは始まります。人間が関わるのは環境設定を行うことのみで、一連の流れに強制も介入もしません。感情反応から、犬が自ら自発行動に移っているため、犬の自立心、独立心が育っていきます。さらに、ノーズワークの行動を通して自分の鼻を信用し、自分の行動をも信用するようになっていくんです。集中力や記憶力も身に着きますね。ノーズワークですべての問題行動が解決できるわけではありませんが、ノーズワークによって培ったものがトレーニングをよりスムーズにしてくれることは確かです」

 また、散歩時に興奮してしまう犬などの場合、散歩に出かける前にノーズワークを行うことで、落ち着いて散歩ができるようにもなるそうだ。

「"正しく"エネルギーを発散、放出させることは大切です。放出させているつもりでも、実は犬の興奮を煽っているだけという場合もあるので注意が必要です。その点、ノーズワークは感情の部分が冷静で落ち着いた状態を保てるよい発散方法ですね」

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セミナー主催者でもある、スニッファードッグ・カンパニー代表の細野さんと。ノーズワーク、そしてノーズワークをベースにしたトレーニングで、日本、そして世界を変えようと活動しているお二人からの話は、一飼い主としても多くの気付きを得ることができた

自分の犬との生活を楽しんで

 ノーズワークにはマニュアルがないため、どうトレーニングしていくかは犬をしっかりと観察することで方向付けられていく。オーナーにとっても、(1)自分の犬を観察し、(2)自分の犬をより深く知り、(3)マニュアルのないトレーニングを行う練習にもなる。

「犬の育て方やトレーニング法など、いろいろな情報がありますよね。日本人はまじめなので、マニュアル本を読むと『こうしなきゃいけない』と思いがちです。でも、実際には10頭いればそれぞれのトレーニング法があります。まずは、オーナーさんがどうしたいか、どんな風に犬と暮らしたいかを考えられるようになってほしいですね。完璧な犬はいません。今の犬の姿を受け入れて、その犬といっしょに生活を楽しんでほしいと思います。
 アメリカでもいろいろなノーズワークがありますが、私はこのノーズワーク"臭いを探し当てる"という最終目的(早く見つけるとか、見つけた時のアラートが出せるとか)に着目しているのではありません。特にフードステージにおける、活動内でみられる犬達の心の成長・変化に着目して推薦しています」

 一生飼いたくなるような関係を作っていくための、進化版パピートレーニング。その効果が気になるところだが、来年には「レイドバックトレーニング」から得た経験を共有する企画も計画されているので、こちらも楽しみに待ちたい。
 今回、鈴木先生が実例を交えて紹介したセミナーの内容を、次回から前編・後編2回にわたって紹介します。



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◎監修者プロフィール

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鈴木ひろみ先生

2004年愛犬のゴールデン・レトリーバーとともに、家庭犬トレーニングをオーナーに教えることができるトレーナーになるために渡米。10年以上にわたる介助犬トレーニングを指導してきたアリータ・ダウナー氏を師と仰ぎ、3年間、家庭犬トレーニングとオーナートレーニングの基礎を徹底的に学ぶためのべ2万頭にわたる犬達との生活を送る。
2009年サンディエゴで初の、パピーを対象としたデイケアを開始。幼稚園教諭時代の教訓「家庭では培えないものを提供する事が幼稚園の仕事」をモットーに犬同士のコミュニケーション能力を引き出す場所としてCanine to Five Training Centerをスタート。オーナーが楽しく自分の愛犬をトレーニングできる環境を作り、予防トレーニングの提唱に情熱を燃やしている

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