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2017.02.24

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今、犬業界でいちばん熱い人、『Do One Good』高橋一聡さんに聞く!

さまざまな人を巻き込んで、ペット業界を変えていくには?

各団体や個人が個々に活動してきたペット業界の中で、さまざまな団体や個人をまとめ、他の業界をも巻き込む活動を行っているのが、『Do One Good』代表理事の高橋一聡さん。動物保護団体を1団体ずつ招いて、ほぼ毎週末開催している譲渡会『アダプションパーク』からスタートし、動物ボランティアを育てる活動や、職業犬の育成など、その活動はどんどん広がりを見せています。今後、Do One Goodの活動はどこに向かっているのでしょうか。『docdog』担当プロデューサー・廣瀬理子が聞きました!

#Lifestyle

Author :写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

「接客サービスが苦手な保護団体さんに代わって、譲渡をサポートしたのがスタート」

廣瀬:私、一聡さんにお会いしたかったんです。というのも先日、機能性ドッグウェア『アルファアイコン』を製造販売されている株式会社アイコンズの社長・三上さんとお話しする機会があって。「この業界を変えていくためにはどうしたらいいですか?」って質問したら、「みんな高橋一聡さんみたいにならなきゃダメだよ」って(笑)。お会いできてすごく嬉しいです。

高橋:それどういう意味(笑)?

廣瀬:熱量、行動力、人を巻き込む力があること。それに、業界内を変えるために、今までこの市場に入ってこなかった人たちをたくさん連れ込んで、いろんな角度から新しい視点を入れているって。それを聞いて、すごい人だなと。一体どこを目指しているんだろうって気になっていたんです。

高橋:三上社長、同い年なんです。負けられないでしょ(笑)。なんて、勝ち負けじゃないけど。

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廣瀬:2010年から青山や恵比寿、横浜を中心に、ほぼ毎週末、動物保護団体を呼んで『アダプションパーク』という譲渡会をされていますが、そもそもなぜアダプションパークを始めたんですか?

高橋:そこを話すと長いのだけど......(笑)。アメリカでトリマーの勉強をして帰国して、最初は東京・世田谷区でペットホテルを経営していたんです。でも、裕福な家庭の犬ばかりを預かって、業界のことをわかった気になっているのはちょっと違うんじゃないかなと思ったときに、保護犬のことが気になって。保護団体さんに会いに行ったり、譲渡会を見に行ったりして、自分に何ができるかを考えました。
 保護活動って、保護、管理、譲渡の3工程を繰り返しているのですが、特に譲渡って対面の接客に近いもので、保護団体さんはここが苦手な人たちが多い。そこで、週末の青山や恵比寿の街中に会場を作って、毎回1団体ずつ招いて、どうぞ譲渡会をやってくださいと。そうやって、譲渡の部分をサポートすることを始めました。

廣瀬:なるほど。自分で保護活動をするわけではなくて、保護団体をサポートする活動から始められたわけですね。そうして7年間続いてきたわけですが、Do One Goodさんの活動は、最終的にどこを目指しているんですか?

高橋:大きく言うと二軸あります。一つは、保護団体さんの運営面を改善することのサポート。今日本で活躍している保護団体さんって、犬猫の扱いという意味では誰も敵わないけれど、活動をビジネスとして成り立たせていないという意味で、誤解を恐れずに言えば"アマチュア"がほとんどだと思うんです。
 でもアマチュアだと、想いを持った人は集まってくるけれど、他業種のプロフェッショナルとつながることが難しい部分があるんですね。そこで、保護団体さんの中でも自分たちでお金を工面できるプロフェッショナルになり得る人たちには、「プロになろう。なれるんだ」っていう気持ちを持ってもらえるように、サポートをしています。

廣瀬:なるほど、寄付や善意に頼るボランティア活動ではなくて、"自立"を目指してもらうわけですね。

高橋:はい。保護活動の現場にはお金がない、人手が足りないってよく言いますけど、じゃあみんなお金や人手があればもっと規模を広げて保護活動ができるかというと、そうとも限らないと思うんですよね。お金をもらったら少し楽になるけど、規模を広げたいわけではないという人たちもたくさんいて、それはそれでいいと思うんです。
 いずれにしろ、業界全体に対して自分たちがどうかかわりたいのかを、もっと明確にしていくことが必要だと思います。そうすれば、お互いをもっと認め合うこともできると思うんです。

廣瀬:保護団体が、自分たちの保護活動の目的を明確に意識していくことが大事なんですね。

高橋:そうそう。例えば譲渡に関して言えば、団体によって譲渡条件が違っていて、それを見るとその団体のスタンスはだいたい見えてきます。そこを、ボランティアしたい人や譲渡を受けたい人にももっとわかりやすくできれば、自分に合っている団体が探せるので、もうちょっと面白いのかなと。

廣瀬:なるほど。今はどう探していいかわからないですもんね。

高橋:評価する人もいないしね。

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横浜でのアダプションパークの会場風景。アダプションパークを知らなかった人も、通りがかりに足を止めて様子を見ていく

「ペットショップって、本来は老若男女が集える素晴らしい場所。僕は"未来のペットショップ"を作りたい」

廣瀬:Do One Goodさんの活動が目指す先は二軸あるということでしたが、もう一つの軸というと?

高橋:もう一つは、僕らが目指す"未来のペットショップ"を作ることです。僕は、ペットショップってものすごい力を持っていると思うんですよ。というのも、ペットショップみたいに老若男女が目的を持って行く場所って、今他になかなかない。昔の神社やお寺のように、年に何回かお祭りがあって、そこにはおじいちゃんと子どもたち、近所の人たちがみんな集まるみたいな、そんな場所になり得ると思うんです。僕はブームを作りたいとか、今の業界を変えたいとか思っているわけじゃなくて、文化を根付かせていくことに興味があるので、そういう意味でペットショップに可能性を感じています。

廣瀬:なるほど。今は繁殖流通の問題から、ペットショップ(生体販売)に対してネガティブな印象を持つ方も少なくないわけですが、本来はそういう場所ではないですもんね。では、具体的にどういう状態になったら、未来のペットショップになったと言えますか?

高橋:実はこれには逃げがたくさんあるんだけど(笑)、未来は未来で、ずっと未来のペットショップであるべきだと思っていて。僕が描いている未来のペットショップと、今の子どもたちが未来に作るものとは、全然違うものだと思う。未来にペットショップを運営していくべき人たちが店を作るベースを、大人が準備することがすごく大事だと思っています。
 僕が子どものころはペットショップって百貨店の屋上にあって、子どもながらに10万円のプードルと8万円のプードルとは何が違うんだろうなと思いながらも、結局その価値は金額で見てたんですよね。でも、保護活動や譲渡会を見て育って、動物の価値はお金じゃないんだっていうことを経験的に理解した今の子どもたちが作るペットショップが、僕が描いている未来のペットショップです。要するに、僕の中には答えがない。

廣瀬:なるほど、社会全体の価値の質が変わっていけば、未来のペットショップの形は必然的に変わっていくんじゃないかということですね。例えば、今までは価格が一つの評価軸になっていたけれど、これからはもしかしたら嗜好的なものがいいとか、別の価値が生まれるかもしれない。

高橋:そういうことです。

廣瀬:一聡さんが言われていることって、問題が起きたときに、原因だけじゃなくて、根本にある背景を見ないと解決しないよ、ということなのかなと思いました。

高橋:そうそう。正解なんてないし、見ても迷うだけなんだけど、本質を見ようとする姿勢を持つことが、今の社会にはもうちょっと必要なんじゃないのかなと。今の子どもたちにはそういうふうになってもらいたいなと思っています。

廣瀬:一人ひとりが自分で選択するために、考える力を身につけないと、社会は変わらないということですよね。
 もう一つ、一聡さんのお話を聞いていてすごく感じたのが、今のペット市場って確かな根拠のない倫理観、正義感みたいな感情に引っ張られて、新しいアイデアや価値観が許されない感じがするんです。生死がかかわるから難しい部分もあるけれど、動物の問題を解決することは、結局は人のためになるわけで。そこを動物のためだけっていうふうに考えてしまうと、難しいのかなと思いました。なぜならペットという役割は人がいないと成立しないですからね。

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「新しく施設を作らずして、日本を丸ごとシェルターにしたい」

廣瀬:一聡さんが目指す人と犬の共生ってどんなものですか?

高橋:最終的には "ジャパンアニマルウェルフェアセンター"を作ること、つまり、既にある土地と建物、人、サービスを全部使えば、世界で一番でかいシェルターを作れるんじゃないかというのが、一番大きな夢です。未来のペットショップはそこに点在して、もしかしたらそれ自体が未来のペットショップなんじゃないか、というふうに考えています。

廣瀬:なるほど。必ずしもお金をかけて大きな施設を作る必要はないわけですね。今後社会が変わったら、もしかしたら保護犬という存在がなくなるかもしれないし......。

高橋:そう、今ある資源を活用すればいいんです。
 アダプションパークでずっと保護・管理・譲渡の3工程のうちの「譲渡」の部分をサポートしてきましたが、今後は「管理」の部分もお手伝いできないかなと考えていて。Do One Goodでは、滝川クリステルさんが代表理事を務めている一般財団法人『クリステル・ヴィ・アンサンブル』と一緒にフォスターアカデミーというのを開講していて、動物にかかわるボランティアに従事する人(=フォスター)を育てる活動をしています。積極的にかかわりたい人のための連続講座の他に、少しでも興味を持った人が一歩を踏み出しやすい単発セミナーも開講しています。
 僕は、少しでも活動に興味を持ってくれる人"にわか活動ファン"を増やすことって、とても大事だと思っているんです。ボランティア活動にかかわる人だけがフォスターというわけではなく、興味を持って活動の話を聞いてくれるだけでもフォスターなんだと。本当は、そんなみなさんにフォスターというシールを貼っていきたいぐらい。そして国民全員にシールを貼れたときがゴール。そうやって、国民みんながフォスターだという意識を持つだけで、物事は変わってくると思うんです。

廣瀬:なるほど。それには、ペット業界の外にいる人たちも巻き込んでいくことが大切ですね。

高橋:そう。それと、アダプションパークに新たなサービスを追加していくことで、二つ目の軸である"未来のペットショップ"に近づいていきたいなと。今、飼育放棄する主な原因っていくつかありますよね。

廣瀬:引っ越しとか離婚、飼い主が高齢で飼えない、犬の病気とか高齢化とか......。

高橋:そうそう。これらの原因をサービスで補えないかなと考えていて。2017年はDo One Goodで不動産と保険を扱えるように準備しているんです。
 例えば引っ越しに関して言えば、今公開されている賃貸物件の中で、ペット可の物件って約10%なんです。それに対して、ペット保有世帯数は約30%ある。もしこっそり飼っている人がそれなりにいるとしたら、何らかの理由で引っ越しすることになったときに、飼い続けることが厳しくなるかもしれない。そこで、現在のペット可物件の10%は常に満タンにさせつつ、ペット可の物件を増やしていくことにかかわれないかなと。アダプションパークでも、今後はペット可物件の相談と紹介ができる体制になります。譲渡を軸とした出会いから、その後のサポートもどんどんつけていければなと思っています。

廣瀬:いわゆる"ゆりかごから墓場まで"ってやつですね。

高橋:そう。既存のペットショップが扱っているサービスって、生体販売と雑貨、トリミング、動物病院、トレーニングとかですよね。そこに、今まではなかったけれど飼い主さんたちに必要なことを扱っていくのが、僕が描いているペットショップなのかなと。

廣瀬:ペットショップと保護団体って今は真逆の存在のように思われているけど、動物と人間の出会いの場という意味では、実はそんなに違わないというか、一緒でもいいっていうことなんですね。

高橋:そうなんです。犬との出会い方って、保護動物を助けたいというのもいいけれど、そもそもちゃんと選ぶことが大事ですよね。実はアダプションパークも、当初から"A.PARK(Adoption Park)"と"B.PARK(Breeder's Park)"という構想があって。B.PARKはまだ一度も実現していないのですが、ブリーダーさんを呼んでの出会いの場を作りたいんです。A.PARKを続けてきたことで、ブリードレスキュー(特定の犬種の保護活動を行っている保護団体)さんとつながっているブリーダーさんと知り合うことができたので、B.PARKもそろそろ実現できそうです。

廣瀬:人それぞれの出会い方や個々の事情があって、保護犬じゃなきゃいけないわけではないですもんね。出会いがうまくいけば、何らかの理由で飼育放棄される犬も減るだろうし。

高橋:そうそう。犬種で選ぶことも、子犬から買うことも決してダメじゃない。

廣瀬:それこそ自分のライフスタイルや嗜好性に合った犬をちゃんと選ぶことって大事ですよね。

高橋:パソコンとかクルマを選ぶときに、スペックは絶対気になりますよね。でもなぜかペットの場合は、スペックは見てなくて、ビジュアルや金額で選んでしまう。そこを、犬種やその犬自体のスペックもちゃんと見て選ぶようになれば、飼育放棄される犬も減るんじゃないかな。

廣瀬:犬のスペック! その発想はなかったです。でもそれ、必要なことですね。

高橋:保護・管理・譲渡の3工程の整備と、"未来のペットショップ"の創造、この二つの軸で進んでいけば、"ジャパンアニマルウェルフェアセンター"の構想に近づいていけると思うんです。

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首都圏の保護団体の場合、保護している犬の中には純血種の小型犬なども多い

「養鶏所や畑の番とか......犬の役割をもっと広げてあげたい」

廣瀬:過去のインタビュー記事などを拝読していて、一聡さんは犬にもっといろんな可能性を見出したいのかなと思いました。人と犬の新しい関係とか、まだ人間に認められていない犬自体の持つ可能性というところに注目されているのかなと。そういう意味で、職業犬に関する今後の展望などをお聞きしてもいいですか?

高橋:正直、まだ模索中です。もうちょっと犬のこと知りたいなというのが大きいですね。
 実は今、警備犬の育成をしているんです。噛むって犬にとって本能的な欲求ですが、現代社会でそれを発揮できる仕事の一つが警備犬だと思うんです。
 もちろん、犬の性質や年齢によって役立てるところは違うから、かかわる人がうまく使ってあげる。例えば、養鶏所や畑を外部の動物から守る仕事とかね。猟師さんの引退犬の飼育放棄が問題になっているけど、キャリアチェンジ犬として、猟師さんの引退犬を農家さんが飼うなんていうのも、譲渡の一つの形だと思うんです。動物1頭1頭の役割を広げてあげると、もうちょっといろんなことができるのかなと。

廣瀬:docdogとしても、犬たちの受け皿を強化していくという意味で、新しい人と犬との関係を世の中にたくさん発信していきたいと思っています。今の日本では家の中で退屈している家庭犬が多いけれど、社会の中で犬の役割がたくさんできたら、人間の雇用ができるのと同じような形で、犬が必要とされる意味・意義みたいなのが広がっていくと思っていて。そういう情報をたくさん発信することで、受け皿の強化のお手伝いをしてきたいと思っています。
 今日はありがとうございました!

◎プロフィール

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高橋一聡さん

『Do One Good』代表理事。1971年、東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。大学のラグビー部で大学日本一を3度経験する。伊勢丹への勤務、ラグビー海外リーグでの活躍、ラグビー部監督業を経て、32歳で渡米。カリフォルニアの『Madeline's Pet Grooming Salon & Institute』でペットについて学び、帰国後、アドホック株式会社 ペットスパ事業部勤務。現在はDo One Good代表の他に、「犬をきっかけに自分らしい暮らしを発見する」をコンセプトにしたワークショップ型店舗『Dog Life Design』代表、NPO法人『gentle one』専務理事など。
http://doonegood.jp/

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