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2017.02.03

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「分離不安」を正しく理解しよう(前編)

飼い主と離れるとソワソワ......これって分離不安?

「うちのコ、分離不安気味で......」という飼い主の話をよく耳にします。ところで、そもそも愛犬のその行動、本当に分離不安なのでしょうか? また、分離不安を愛情の証と思い込んで、どこか喜んでしまっていませんか? 今回は、家庭犬によく見られる問題行動の一つ、"分離不安"とは本当はどんな行動なのか、東京大学の特任助教、荒田明香先生に教えていただきました。前後編に分けてお送りします。

#Lifestyle

Author :写真=永田雅裕、大浦真吾 文=山賀沙耶 監修=荒田明香

"分離不安"の定義、知っている?

 飼い主同士の会話の中では、もはやおなじみの言葉となっている"分離不安"。そもそも分離不安とは、その言葉通り、犬が飼い主と離れ離れになったときに不安に駆られ、その結果問題行動を起こしてしまうこと。
 目立った行動としては、(1)破壊や排泄の失敗など外に向かう行動、(2)なめ壊しやシッポを噛むなど自身に向かう行動、(3)吠え、という3パターンのどれか、あるいは複数の行動として表れる。その他、ウロウロ歩き回るといった行動や、パンティング、よだれ、排泄回数の増加、下痢・嘔吐などの生理学的な反応も同時に見られる。
 吠える、咬む、常同行動などの問題行動には、犬種による偏りが見られることが多いが、分離不安の場合は犬種差が少なく、どの犬種にも起こり得るのが特徴の一つだ。

 ところで、飼い主と離れても何とも思わない犬は少ないだろうが、どこからが"分離不安"と言えるのだろうか。
「人間でも家族や大好きな人と離れたら寂しいと感じるように、飼い主が出かけてしまったら最初のうち不安そうにピーピー鳴いたり、玄関のほうに行きたがったりするのは、社会性の高い犬としては正常の範囲内です。その不安が強く、困る行動が起きたり、犬が自ら落ち着くことができないと、分離不安と呼ばれます。外出先から帰宅したときに、破壊や排泄の失敗、なめ壊しなどの形跡があったり、近所の人から吠えに関する苦情がきたりして、発覚するケースが多いですね」
と荒田先生は話す。家の中を破壊したり、炎症を起こすほど自分のカラダをなめ続けたり、誰もいないときに吠え続けたりするのは、愛犬にとってはよっぽどのストレスに違いない。

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飼い主が外出した直後に鼻を鳴らしたり、玄関に向かったりしても、10分もすれば落ち着くようなら問題はない

 愛犬に分離不安の兆候があるかどうかは、自宅で留守番をさせてから約10分後を基準に、あきらめて寝るのか、10分後以降も不安そうな行動が続くのかで、ある程度判断ができるかもしれないという。つまり、約10分経っても飼い主のことを気にしているようなら、分離不安気味の可能性があるということだ。

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分離不安の場合、不安の上がり方が強く、飼い主の外出から10分ほど経っても不安な気持ちが収まらないのが一つの目安

留守中にイタズラ=分離不安、とは限らない

 ところで、帰宅したときに家の中が破壊されていたり、排泄を失敗していたからといって、必ずしも分離不安とは限らないのだという。
「分離不安の問題行動は、飼い主と離れて最初の約30分に強く表れます。ところが、例えば3〜4時間後に問題行動をとるようなら、それは単に長い留守番で退屈しているだけの可能性が高いです。また、食いしん坊のコの場合、キッチンにある美味しいものを、今がチャンスとばかりに意気揚々と食べてキッチンが荒らされているなんてこともありますし、トイレトレーニングが不完全なコであれば、留守番中はトイレに誘導されないために失敗することもあります。
 留守中の問題行動に困っていて、原因が分離不安かどうか見極められないようであれば、留守中のようすを動画で撮影してチェックすることをオススメします」

 留守宅のようすをスマートフォンなどで随時確認できるネットワークカメラを利用する方法や、留守中にビデオカメラを回しておいて後から確認する方法の他、アプリを利用して使っていないスマートフォンをネットワークカメラ代わりにすることもできる。留守中のようすが気になる場合は、一度試してみるといいだろう。

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留守番の前半は寝ていて、3〜4時間後にイタズラなどの行動を開始するようであれば、分離不安ではない

◎監修者プロフィール

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荒田明香先生
東京大学 大学院農学生命科学研究科 附属動物医療センター特任助教。東京大学農学部獣医学専修卒業。獣医師、獣医学博士、獣医行動診療科認定医。犬や猫の行動遺伝学に関する研究を行うとともに東京大学附属動物医療センターと苅谷動物病院で問題行動の治療に携わっている。

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