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2017.02.13

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寄付がつないだ、幸福な関係 Vol.2

『DOG DUCA』――名古屋の飼育放棄犬たちを救う「最後の砦」

第1回で紹介したオンライン寄付サイト『アニマル・ドネーション』に集まったお金は、その後どんな団体へと受け継がれ、どのように活用されているのでしょうか。アニマル・ドネーションの寄付先の一つである、名古屋の保護団体『DOG DUCA(ドッグ・デュッカ)』を訪れました。

#Lifestyle

Author :写真=日高奈々子 文=docdog編集部

どん底の人生から犬に救われ、犬を救う活動へ

 今では社会的な認知度も高まりつつある、犬の保護活動。ところが、それはほんのここ2〜3年のこと。それまでは、愛護センターに収容された犬猫たちは、ほとんどが殺処分されてしまっていた。
 そんな状況の中、約7年前から愛知県名古屋市で、愛護センターに収容された犬たちを引き出そうと活動してきたのが、『DOG DUCA』代表の高橋忍さんだ。

 もとは飲食店を経営する料理人だったという高橋さんだが、3店舗目を出店しようかというとき、当時ニュースにもなった集団詐欺にあい、多額の借金を抱えてしまう。家族や友人が離れていく中で、ミニチュア・ダックスフンドのデュッカと出会い、一緒に暮らし始めたことが、高橋さんの人生を変えていった。
「何とかしてデュッカとずっと一緒にいたいと思うようになって、料理人だし、最初はドッグカフェをやろうと思ったんです。ところが、借金を返しきれていない中で、お店を始めることは難しい。そんなことを考えながら散歩をしていると、デュッカはとても人なつっこくてすぐ人に寄っていくので、公園なんかでも自然といろんな人と話をするようになって。デュッカが架け橋になってくれて、いろんな人に出会わせてくれたんです」
 犬にかかわる仕事がしたいと、散歩先で知り合ったトリマーやトレーナーに格安で個人レッスンを受け、JKCトリマーの資格、続いてJKC公認訓練士を2年で取得。40代にして駆け出しのトレーナーとしてデビューした。

 そんな高橋さんが初めて犬を保護したのは、新米トレーナーとしてしつけの相談を受けて、ミニチュア・ダックスフンドのいる家庭を訪れたとき。実際に訪問してみると、その飼い主は「言うことを聞かないから」と犬をたたいたり蹴ったり。犬は飼い主におびえて震えている状態だった。
「そのころは自分自身がドッグトレーナーとして未熟だったこともあって、しつけ直しをするとかではなく、この人は飼える人じゃない、という判断しかできなかった。『犬を飼うことはあなたたちには無理。飼っちゃいけないと思います』と飼い主さんに言ったら、『じゃあいくらで買ってくれるんだ?』と言い返されて。いくらで買ったのか聞いたら14万だって言うから、14万円払って連れて帰ってきました。
 僕は犬に救われたという気持ちがあったから、ほっとけなかったんですよね。今考えると、借金もある状態でよく14万円も出したなと思うんですけど(笑)」

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現在、一般向けの講演活動や小中学校でのセミナーなどで、教育・啓蒙活動も盛んに行っているという高橋さん

ガンだらけのマルチーズの引き出しが、行政の制度を変えた

 そこから、自分でできる範囲で飼育放棄された犬たちを保護し、仲間内で里親に出したりしていた高橋さんが、愛護センターに足繁く通うようになったのは約7年前。当時、名古屋市には譲渡ボランティア制度がなく、愛護センターに収容された成犬はほぼ100%殺処分されていた。
「愛護センターにちょくちょく通って『保護させてくれ』って言っても、ずっと『規則だから無理です』って引き出させてくれなくて。ある日、たまらなくなって『保護したいって言ってる人間がいるのに殺すなんておかしいじゃないか』って話したんです。そしたら、『じゃあ、このコだったら』って所長から渡されたのが、ガンだらけで明日死んでもおかしくないようなマルチーズのコ。でも僕はめちゃくちゃ嬉しかったです。一頭引き出したという既成事実ができたので」

 高橋さんの読み通り、一頭の犬を引き出したのが突破口になって、3日後にはダックス4頭を連れて帰ることができた。その翌年には名古屋市に譲渡ボランティア制度ができて、行政側がボランティアを募るように。高橋さんの作った実績が、制度に結びついた形だ。
 現在、名古屋市で譲渡ボランティアとして登録されているのは、36団体。制度ができる以前は少なくても600頭、多いと1000頭以上だった犬の年間殺処分数は、2014年には89頭、2015年には29頭、2016年にはゼロになった。

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保育園に通ってくる犬は、1日20〜30頭。店内の壁には犬たちの名前と写真がズラリ

人間よりも犬に選ばせたいから、譲渡会はしない

 現在DOG DUCAにくる保護犬の7割は、一般の飼い主から持ち込まれるコだという。飼育放棄の要因として最も多いのは、高齢の飼い主が入院したり施設入ったり亡くなったりして、世話ができなくなるケース。しかし、「高齢者は捨てる人が多いから飼っちゃダメとは言いたくない。飼えなくなったときのケアができる国にしたいんです」と高橋さんは話す。
 一方、DOG DUCAが愛護センターからの引き出しているのは、他の団体では引き取れないような、嚙むなどの問題を抱えるコがほとんど。
「他の団体の方もがんばってくれているので、僕は最後の砦っていう気持ちでいます。誰にもどうしようもできないコは、僕が保護しようと」

 里親を探す際に譲渡会をしないのも、DOG DUCAのやり方だ。
「人間によって不幸にされてきた犬たちなので、人間に来てもらって『どのコがいいですか?』ではなく、このコはどこに行ったら幸せになるのかって考えて、人間を選びたい。そして、犬がどこに行きたいかは、最終的には犬に選ばせたいんです」
 里親希望者とは高橋さんがいろいろ話をし、その家庭に合うコを、まずは高橋さんが考える。ぴったりと思うコがいる場合は、その場に連れてきてリードを緩めた状態にし、その人のほうに行きたがるかを見る。もちろん、飼い主側が乗り気でない場合も、無理に渡すことはしない。そうして、実際に里親になってもらう人は、里親希望者全体の3割ぐらいだという。

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店内では、保護犬も保育園にきた犬も、同じ環境で過ごしている

 DOG DUCAでは、2015年は100頭、2016年は56頭の犬たちを保護してきた。保護活動への年間の寄付額が30~50万円ぐらいなのに対して、犬たちの世話にかかる金額は、医療費だけでも150~200万円ほど。保育園として得た収入を、保護活動にあてる形をとっている。
 アニマル・ドネーションの寄付先として登録されたのは、取材日の1~2カ月前。3万円単位で入金され、今のところすでに1度入金があったそうだ。

「最近は『里親になったんだけど、犬が怖がりで困っている』とか、相談にくる人も多いです。殺処分がゼロになるのはいいことですが、ただ保護して渡すだけでは、引き取り先で問題が起こって、けっきょくたらい回しになってしまうコもいます。僕は、保護したときの不安定な状態を、フラットに持って行ってあげることを大切にしたい。そうして、保護犬にも里親さんにも、一緒に暮らす幸せを噛みしめてもらいたいですね」

◎SHOP INFORMATION

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DOG DUCA(ドッグ・デュッカ)

犬の保護と里親探しを行うNPO法人。保護活動のかたわら、電話・店頭でのしつけ相談や、高齢者施設でのアニマルセラピー活動、子どもたちの下校時のわんわんパトロールなど、犬と共生できる社会を実現するべく活動中。預かりでのトレーニングやトリミングを行う『わんわん保育園DUCA』としても営業している。

愛知県名古屋市守山区金屋1-23-26
TEL:052-795-5003
http://dogduca.sunnyday.jp
営業:8:30〜19:00
休み:日曜

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