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2017.01.20

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起業のきっかけは「犬への愛」から

『DogHuggy』と考える、企業の力で犬たちを救う方法

高校3年生のときに、愛犬の世話をしてほしい飼い主と、犬の世話をしたい人をマッチングするサービスを立ち上げた、『DogHuggy』代表取締役の長塚翔吾さん。以来、"犬のための会社"として、継続的に社会問題に取り組む営利企業という形にこだわり、犬と暮らしやすい社会を実現するために事業を続けています。そんな長塚さんと、『docdog』担当プロデューサー・廣瀬理子との対談が実現! 大の犬好きである20代の2人が、共に目指すべき社会について語り合います。

#Lifestyle

Author :写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

「小学生のころ、近所の犬の世話をしていた体験がベースになっています」

廣瀬:お久しぶりです!

長塚:ほんと、お久しぶりですね。1年半ぶりぐらいですか?

廣瀬:そうですね。長塚さんに初めてお会いしたのは、まだdocdogが立ち上がる前に、私がこの業界のリサーチをしていたときなんですよね。たまたま大学時代の後輩に電話したら、その子がインターン先でDogHuggyにかかわっているっていうことで、「え、あのDogHuggy!? 長塚さんに会いたいんだけど紹介して!」って。

長塚:そうそう、どうしても会ってほしい人がいるって言われて。実際にお会いしたら、この人ほんとにすごい犬好きなんだなって。

廣瀬:私は、長塚さんの話がすごくストレートに心に刺さって、若いのにすごいなあって。もともとは獣医師を目指していたんですよね?

長塚:そうなんです。麻布大学附属高校の獣医学部を目指す人たちが多いクラスにいて、高校3年の初めまでは完全に獣医師しか頭になかったんです。それが、高校在学中に大学の講義を受けられるというプログラムがあって、動物行動学とか寄生虫学に加えて、動物福祉の授業も受けて。そこで、犬と社会という視点に出会ったのがきっかけで、獣医師ではない道も探し始めました。

廣瀬:DogHuggyのサービスは、"犬と社会"というどのような視点から思いついたんですか?

長塚:このサービスは、僕の原体験が発想のベースになっているんです。実家では、僕が中学生のときから犬を飼い始めたのですが、それまでには犬を飼いたいって十年くらい言い続けていた気がします(笑)。最終的に、これは飼うためにアクションをしなきゃ無理だなと思って、実際に自分が犬の世話をできるんだぞっていうことを見せるために、近所の犬の世話をし始めたんです。それが僕にとってすごくいい体験で。

廣瀬:へえ~、面白い! 犬を飼いたいというお子さんは多いと思いますけど、そこまで行動しちゃう人はなかなかいないですよね。

長塚:それと、そのころは埼玉県に住んでいて、家族で出かけなければいけない時など、ご近所の方にちょっと見ていてもらうとかできたんです。けれど、高校生のときに一家で新宿に引っ越してきたら、犬を預ける人がいなくてすごく困ったんですよね。それなら、世話をしたい人と世話をしてもらいたい人、この2人をどうにか繋げられないかと。ちょうどインターネットの普及もあって、今のサービスの形を思いつきました。

廣瀬:犬との暮らし方も地域差がありますよね。そこから高校3年生で起業するってとても勇気がいることですよね。

長塚:動物福祉の問題を知ったときに、僕はNPOではなくて、営利企業として継続的に社会問題に取り組みたいと思ったんです。要は、"犬のための会社"ですね。今、犬の動物福祉の問題に取り組むNPOはたくさんあっても、寄付に頼っていたりとか、金銭的にどこかに依存していたりすることが多くて。でも、僕は自分たちでお金を得つつ社会貢献するのが本来の企業のあり方だと思っているので、それをきちんと実践したいなと。

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長塚:廣瀬さんはなぜdocdogを立ち上げたんですか?

廣瀬:私も一昨年は半年ぐらいずっと犬業界のリサーチをしていて、その時いちばん心がザワザワしたのが犬の繁殖流通に関するところで。最初に考えたのは、犬と人とのマッチングの部分をもう少し改善したいということだったんです。でも、結局出会い方の仕組みを変えたところでそこから暮らし続ける人の側を変えていかないと、根本的な解決にもならないし、永続的に問題が続いていってしまうんじゃないかと。
 この業界には点在的な課題が、まだまだ多くあると思います。そうした課題を解決していくためには、学術的に裏付けされたロジックの部分と、商品のデザインやコミュニケーションなど人の心をブレイクスルーさせるマジックの部分、その双方をもって犬の市場を洗練させていきたいというのが、プロジェクトを立ち上げるときのそもそものスタンスだったんですね。

長塚:なるほど。問題を解決したいというところから発想したんですね。

廣瀬:人と犬がより良い暮らしをしていくために、どんなコトが届けられるのかリサーチを続けていく中で、犬の靴というものがあることを知って。プロダクトとして機能的であることはもちろん大切なのですが、実は愛犬との信頼関係が築けていて、コミュニケーションをしっかり取れる飼い主さんじゃないと、履かせるのが難しいんです。そんな犬の靴を、使いこなせることが当たり前になったら、社会は変わっていくんじゃないかなって思ったんです。

長塚:確かに、かっこいい人たちに憧れさせていくっていうのは、大事ですよね。
 僕たちもDogHuggyのサービスを通して、犬を捨てない環境作りを目指しています。それには、犬と暮らす中での飼い主さんのストレスを限りなく減らしてあげたいというのがあって。一つには、旅行や出張などで家を空けるときに預けられるようにしたい。それに、みんなが犬との関係性をちゃんと築けるように、ドッグホストさん(DogHuggyのサービスで犬の世話をする側の人)など周囲の詳しい人に、気軽に相談できる状態を作っていければなと。
 つまり、バケツの水をすくうほう(=保護活動など)じゃなくて、蛇口を止める(=飼育放棄させないための活動など)ほうの役割ですね。それが若い世代の使命であり、日本の動物愛護を次のステップへ進めていくものだと思っています。

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「"犬の世話のシェア"で、飼えない人にも犬の魅力に触れてほしい」

廣瀬:DogHuggyさんのサービスって、見ず知らずの人に愛犬の世話をしてもらうということで、信用問題がいちばん難しそうですよね。

長塚:そうですね。なので、まずはホストの審査をかなり厳しめにしていて。一次審査は書類選考、二次審査はDogHuggyの審査担当者が実際にその方の家庭に足を運ばせていただいています。今は自信のある人しか応募してこないので、審査の合格率はだいたい6割ぐらい。

廣瀬:それでも6割! 厳しいですね。審査ではどのような基準を設けているのですか?

長塚:犬に関する知識と、人間性と、部屋の状態の、大きくは3つですね。他の人の犬を世話するうえでは、飼い主さんとのコミュニケーションも大事ですし。部屋も写真だけだとわからないので、実際に行って、一緒に片付けたりとかして(笑)。そこで信頼関係も築けますしね。
 重視している判断軸の一つとして、審査担当者が愛犬を預けたいか、です。

廣瀬:今、ホストさんは何名ぐらいいらっしゃるんですか?

長塚:首都圏だけの展開で、60名ぐらいです。

廣瀬:今後はさらに拡大していくわけですね。

長塚:そうですね。利便性を上げるという意味もあるのですが、最終的には"犬の世話をシェアする"という考え方が広まればいいなと。最近シェアリングエコノミーといって、個人が保有している資産などの共有を仲介するサービスがどんどん出てきていますが、民泊やカーシェア、家事代行サービスなどのように、犬の世話もシェアできたらいいと思うんです。

廣瀬:よくわかります! 「犬の世話」も、今よりもオープンにさまざまなカタチがあるといいですよね。

長塚:そうそう、犬は地域で飼ったほうがいいと思うんですよ。
 逆に、自分で犬を飼わなくてもたまに世話するだけで満足できる人が、無理やり飼っちゃって、犬といい関係性も築けないし、時間もお金も割いてあげられないというケースもあると思うんですよね。それはその人たちが悪いというよりは、業界として飼えなくても犬と触れ合う機会を提供してあげることが必要だなと。DogHuggyも、段階を踏んでそういう形に近づけていきたいなと思っています。実は、犬との触れ合いイベントも月3回ぐらいやっています。

廣瀬:ホストさんで、犬の飼育経験のない人っていますか?

長塚:それはないですね。犬の飼育経験は審査の条件にしているので。

廣瀬:例えば、犬を飼ったことのない人がDogHuggyのホストになって、犬と暮らすことを疑似体験できたらいいんじゃないかと思って。それで犬との暮らしの素晴らしさを知る人が増えれば、犬の飼育頭数も増えて、保護犬の譲渡にもつながるかもしれないし。もちろんそこには啓発が必要不可欠だと思うんですけど。
 あえて飼育経験の有無で線引きしてしまうのって、何か意図はあるんですか?

長塚:僕は、新しい価値観が社会に受け容れられるには、ステップを踏むことがすごく重要だと思っていて。例えば、今僕たちが急に突飛なアイデアをみんなに言ったとしても、それが実際にイメージできなかったり、いいなと思わなかったりすると思うんですよね。
 僕たちの事業は、インフラ作りと教育の2つの柱でやっていきたいなと思っていて、まずは今のインフラの形をしっかり浸透させて基盤を作ること。そして、次は教育事業として、『DogHuggyスクール』みたいな、ホスト側が犬に関する知識をつけられるシステムを作ること。"犬の世話のシェア"は、さらにその先の展開ですね。

廣瀬:なるほど。最近、docdogチームの後輩と犬をシェア飼いしようって話をしていて。もしうまくいかなかったら、私が引き取るからって。ご近所付き合いとして、みんなで一緒に育てるのってすごくいいなと。

長塚:もしそれ実現したら取材させてください(笑)

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「問題解決に永続的に取り組む"犬のための会社"であり続けたい」

廣瀬:すごく長い目で見たときに、長塚さんが思う理想の"犬と社会"ってどんなものですか?

長塚:犬の世話のシェアをしっかり浸透させて、犬1頭1頭がきちんと幸せに生きられる社会をまずは作りたいなと思っています。今後人口が減って、娯楽が多様化していく中で、ちゃんと犬を飼える人ってすごく少なくなってくると思うんですよね。そんな中で、犬と触れ合える機会を提供していきながら、犬に関する知識もあり、犬と暮らしやすく、犬とかかわりやすい、犬の素晴らしさを社会全体で噛み締められるような、そんな社会を作っていきたいなと。
 でも、僕たちが今理想と考えているところにたとえ到達したとしても、おそらくまた別の問題が出てくると思うんですよね。そこに永続的に取り組んでいける企業、"犬のための会社"として、続けていけたらいいなと思っています。

廣瀬:サービスの内容は限定していないんですね。

長塚:そうですね。大きくは「日本をどうぶつ先進国にする」というビジョンがあって、そのためにやるべきことっていつまでも限りなく出てくると思います。

廣瀬:私は、すごく先の未来ということで言うと、家族というカタチが自由になればいいなと思っています。今って人間は人間としか家族になれないし、社会に認めてもらえないけれど、ゆくゆくは、究極長年連れ添ったギターが家族でもいい(笑)。人間とは異形のものの中でも、特に一緒にいるだけで幸せになれる犬という存在が、本当の意味で家族としてこの社会で認められたらいいなって。家族の境界線は一人ひとりが自由に決められる。すごく遠い未来かもしれないけど、それくらいゆるく、強くつながっていける社会がいいなと思っています。

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長塚:犬ってほんといいですよね、通じ合っている感が。人じゃないのに、なんでお前は俺のことこんなにわかっているんだって。

廣瀬:わかります! ものを言わないのがいいのかもしれませんね、逆に。犬はしゃべれないから、心を通わせる努力を人間側がするし。犬もきっと犬の目線で人に寄り添おうとしているし。そういう意味で、一緒にいると人間が人間としてちゃんと成長できる、いいパートナーだと思います。

長塚:僕、DogHuggyに関して、「他のサービスとの差別化ポイントは"愛情"です」って言っていて。犬の世話をするときって、散歩とかご飯とか物理的なところに目が行きがちだけど、犬が本当にほしいのはそこじゃない。犬は愛を感じる生き物だし、愛情があってこその幸せですよね。そこを提供できているのが、僕たちのいちばんの強みだし、絶対に勝てるポイントだと思っているんです。

廣瀬:そういう意味ではdocdogも同じかも! スタッフにはとにかく愛情深い人しかいない(笑)。イベントで犬の靴の体験会をやっても、一人ひとりと接する時間が長すぎて効率悪い(笑)。でも、犬への愛って、事業を続けていくうえでもいちばん大切な部分ですよね。

長塚:ほんとそう思います!

廣瀬:今日はありがとうございました。

◎プロフィール

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長塚翔吾さん

『DogHuggy』代表取締役。2015年、麻布大学附属高等学校卒業。高校3年生だった2015年2月に、愛犬の世話をしてほしい飼い主と、犬の世話をしたい人をマッチングするサービスを立ち上げる。「日本をどうぶつ先進国に」というビジョンのもと、犬にも飼い主にも優しい社会を目指して事業を展開中。
http://doghuggy.com

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