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2016.12.19

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「ノーズワーク」日本上陸の立役者・細野直美さんに聞く

10年間、ノーズワークを追い続けた理由とは?

今、世界的に注目を集めている、犬の嗅覚を使った新ドッグスポーツ「ノーズワーク」。その日本への上陸のために10年もの間奔走してきたのが、『スニッファードッグ・カンパニー』代表の細野直美さんです。昨年、トレーナー仲間とともに『ノーズワークファンフレンズ』を立ち上げた細野さんに、そこまで夢中になるほどのノーズワークの奥深い魅力について聞きました!

#Activity / #Healthcare / #Lifestyle

Author :写真=盧瑞婷 文=山賀沙耶

怖がりの犬たちを本当の意味で楽しませたい

 現在、世界中のトップトレーナーや犬好きが注目しているノーズワークについては、「どんな犬でも楽しめる「ノーズワーク」とは?」(前編後編)で紹介してきた。
 そのノーズワークを日本に上陸させた陰の立役者が、『スニッファードッグ・カンパニー』代表の細野直美さんだ。

 細野さんとノーズワークとの出会いは、約10年前。実はまったくの偶然だったそう。
「仕事の都合で、アメリカのフロリダ州にあるパームビーチという高級別荘地に行ったとき、ぶらりと公園に行ったんです。そうしたら、現地のトレーナーさんたちが犬を連れて、何か嗅覚作業みたいなことをやっていました。自分もトレーナーとして鼻のことや救助犬のトレーニングをしていたのですが、自分たちがやっているのと何か少し違うなと。そこで、単語を並べて声をかけてみたんです。すると、『今こういうようなことをやろうとしてるんだ。これいいよ。日本でもやってみたら』って」

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 その人たちこそが、のちにアメリカでノーズワークの団体を立ち上げるメンバーの一部だった。彼らがやっていたことに強く興味を持ちつつ、日本に帰国。自分がやっていることと何が違うのかをじっと考えてわかったのが、「あれは人間が教えるのではなく犬の本能に基づくものであり、その作業自体を犬が楽しんでやっている」ということ。

「『あー、これや!』と思いました。というのも、そのとき私は、トレーナーとして壁にぶち当たっていたんですよ。一つは、お客さんの犬に関して。当時5~6頭でグループレッスンをしていたのですが、ずっとしつけ方教室に通ってもらっていても、たくさんの人や犬が恐くてアジリティや競技会に行けないコがいて......。もう一つは、自分の犬に対して。他のトレーニングではにおい嗅ぎをさせてあげられないことが多かったのですが、ビーグル犬だったので(※編集部注:嗅覚に優れ、空港などでの「検疫探知犬」としても多く活躍している)、もっと嗅覚作業の本能を満たすことで、解決できる問題があるんじゃないか、と」

 アメリカで見たあれなら、日本の犬たちの抱えるいろいろな問題、特に怖がりの犬の問題を解決できる。何年しつけ方教室に通っても克服できず、競技会などへ本当は我慢して出ているんだろうな、と思うような犬たちでも、あれなら楽しんでできる。
 飼い主と愛犬の楽しそうにしている姿が好きで、運動会や旅行など、犬と一緒に参加できるイベントを企画していた細野さん。犬の鼻を使って飼い主と愛犬で楽しめるゲームとしても、ぜひ取り入れたいと考えたという。

「絶対習いたい!」 でも道のりは険しかった

 その後、何か少しでもノーズワークの情報があれば仕入れようと動いていた細野さんに、アメリカで団体ができたという情報が入り始めたのは、その約1年後のこと。すぐさま通訳の友人を介して「絶対習いたい」と交渉を始めたが、事はなかなか簡単には進まなかった。

「最初は、まだ講師を送る準備がないと言われました。そうこうしてるうちに2年ぐらい経って、アメリカでノーズワークブームがバーンときて。で、今度は忙しいって(笑)。その後もいろんな方面からアプローチしていたんですけどダメで、もうオリジナルで団体作ってやったら? ってアドバイスをいただくこともありました。でも、私はノーズワークのノウハウを全部理解しきれていないし、やっぱりちゃんとやっている人を呼びたかった」

 5年前にはアメリカで救助犬のトレーニングをしている旧知の先生にノーズワークの紹介をしてもらったり、2年前にはアメリカでノーズワークを学んでいた日本人トレーナーにセミナーをしてもらったり。多少の前進はあったものの、肝心のアメリカの団体との交渉は膠着状態。3年前には、ずっと一緒に交渉に当たってくれていた、スニッファードッグ・カンパニーを立ち上げた仲間でもある通訳の友人が亡くなってしまうという、悲しい出来事もあった。それでもあきらめずアメリカの団体に交渉を続け、いつしか"Naomi Hosono"の名前は向こうでも有名になっていたのだとか。

 そして今年、ついにロクサンヌ・バードリーというアメリカのトップトレーナーの一人が、5月に来日してくれることになる。
「『よっしゃー!』って3月にぴゅーっとアメリカに飛んで、ロクサンヌに会いに行ったら、ロクサンヌも『あー、知ってる! ずっと交渉してた日本人!』って(笑)」

 ロクサンヌのレッスンで見たものは、やはり細野さんが長年追い続けていた姿だった。今までのトレーニングとは違う、どんな犬でもどんな飼い主でも楽しめるノーズワーク。
「70~80歳ぐらいの飼い主さんが、『ほら見て! うちの犬、警察犬みたいでしょ! もうテロ探知犬でしょ!』って。アメリカではそういう犬ってすごく地位が高いので、すごく誇らしげで。そんな姿を見て、あーやっぱりこれでよかったんだ! って確信しました」

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年齢やカラダのサイズなどに関係なく、同じフィールドで楽しめるのも魅力

飼い主が犬に答えを教えてもらうのがノーズワーク

 昨年、トレーナー仲間たちとともに『ノーズワークファンフレンズ』を立ち上げた細野さん。今年8月1日には山梨で、9月25日には兵庫で、スニッファードッグ・カンパニー主催で日本初のノーズワークのコンペも行った。参加したのは、ノーズワークファンフレンズのトレーナーのお客さんとその紹介で、80頭ほどの犬たち。

「審査員を咬まない犬であれば誰でもどうぞ、という形にして。でも、咬むという問題を抱えながらノーズワークのレッスンに通っていたコも、やっぱりノーズワークはできたんですよね。それに、電動車椅子の障がい者の方で、Mixの保護犬とずっとレッスンに通っているペアが、優勝しちゃったりね。初めてノーズワークをやる犬もOKにして、体験レッスンを受けてもらって、『いちばん簡単な競技に出たかったらどうぞ』と言ったら全員出ました(笑)。しかも優勝しちゃったりして、それがまた切磋琢磨になって楽しい」

 コンペにおいて一つだけインフォメーションしたのが、「どんなに会場に慣れている犬でも、決して他の犬と接点を取らないでください」ということ。会場内には、他の犬が怖いというコも少なからずいる。そういうコにノーズワークで嫌な思いをさせないために、これはどんなときでもマストなルールなのだ。

 ノーズワークに出会って、「今まで私は犬をわかっていなかった」とハッとさせられたという細野さん。そんな細野さんが思う、ノーズワークの魅力とは?
「ノーズワークでは、人間にはわからない答えを犬が教えてくれる。『ほら、見つけたよ。お母さんこれやで』って。どんなに偉そうなこと言っても、人間は嗅覚では絶対犬に勝てない。犬はこんなに素晴らしいから、粗末に扱わないでっていうのが裏の気持ちです。
 それと、ノーズワークでは見つけたらオスワリするとかの告知のトレーニングをしないので、飼い主さんが犬を見て、犬が見つけたかどうかを判断しなければいけない。だから、飼い主さんの勉強にもなるし、犬を見る癖がつきます。それが、トレーナーさんが長年『もっと犬を見てくださいね』って口を酸っぱくして言ってきたことの解決にもなると思うんです」

 現在、ノーズワークファンフレンズのトレーナーは、東京と関西を中心に30人ほど。北海道や四国、九州などでもやりたいという人がいるため、今後は各地方でコンペを開催してもらい、全国大会なども開催したいという。また、「引き継ぐのが私の役目」という細野さんは、将来的には日本のトップクラスのトレーナーがノーズワークを仕切ってくれたら、と考えているそうだ。

 そして、もう一つの目標は、保護施設とトレーナーを結びつけて、ノーズワークで施設の犬たちを幸せにすること。
「ノーズワークってもともとはアメリカの保護施設の犬たちの遊びで、今サンディエゴとロサンゼルスでは、保護犬のためのノーズワークプログラムが始まっているんです。今まで日本では、保護施設とトレーナーの結びつきって少なかったけれど、これを日本でもやりたい。保護犬や怖がりの犬たちに、もっと自信を持ってほしい。その自信につながるのが、やっぱり嗅覚なんですよね」

 まだ日本では広まり始めたばかりのノーズワーク。今後、日本の飼い主や犬たちの世界を変えるものになるに違いない。



■関連記事
>>世界中で大人気の新ドッグスポーツ どんな犬でも楽しめる「ノーズワーク」とは?(前編)
>>世界中で大人気の新ドッグスポーツ どんな犬でも楽しめる「ノーズワーク」とは?(後編)

◎監修者プロフィール

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細野直美さん
『スニッファードッグ・カンパニー』代表。人間の看護師を経て、犬のトレーナーに。災害救助犬や捜索犬など、犬に鼻を使わせることに関心が高く、2005年ごろにアメリカでノーズワークに出会う。以来約10年間、ノーズワークを日本に導入するべく、アメリカの団体と交渉を続けている。
http://sniffer-dog.net




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