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2016.12.21

動物歯科のスペシャリストに聞く「正しいオーラルケア」vol.3

納得できる歯科治療を受けるためにも疑問点は質問しよう

林 一彦 動物歯科クリニック花小金井動物病院

家庭でのケアをがんばっていても、ブラッシングしづらい場所には少しずつ歯石がたまり、加齢と共に歯のトラブルも起きやすくなります。そこで最終回となる今回は、動物病院で歯科治療を受ける際の注意点などを動物歯科クリニック花小金井動物病院の林先生に伺いました。

写真=大浦真吾 文=古川あや

#健康

オーラルケアを任せられる動物病院選び

 動物病院選びは歯科に限らず、難しいものだ。花小金井動物病院には遠くは大阪から通ってきている患者さんもいるというが、身近なところに信頼できる動物病院を見つけたいというのが飼い主の願いだろう。獣医師選びの際に参考となるポイントは3つ。

1)オーラルケアの重要性を教えてくれる

 予防ワクチンやフィラリア予防について説明を受けたことのない飼い主さんはいないだろうが、歯周病やオーラルケアの重要性について指導を受けたことのある方はどれくらいいるだろう。

「かかりつけ医となる獣医師は、初診時にオーラルケアの重要性を飼い主に教えるべきです。犬の歯周病が一向に減らない大きな原因はそこにあります。歯石がついたら取ればいい、というのではなく、普段のケアの大切さを飼い主さんに伝えるのことも獣医師に重要な役割です」

 年に1回の定期検診の際はよい機会だ。愛犬の歯や口臭について相談してみよう。

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動物病院選びは一大事だが、「HPなどの情報に惑わされないように注意して」と林先生

2)治療法を複数提示し、質問にも明確に答える
 歯石とり=全身麻酔、歯がぐらつく=抜歯というように、治療法を1つしか示さない場合は、勉強不足の可能性が高い。少なくとも2つは選択肢を挙げるのがプロフェショナル。

「超音波スケーラーで歯石を除去する動物病院は増えていますが、たいていの場合全身麻酔必須です。全身麻酔そのもののリスク、何度も全身麻酔をかけることの弊害に加えて、老犬になって全身麻酔できないという理由で、歯石取りを拒否されることさえあります。高齢犬になったからこそ口腔ケアが必要なのに無責任です。犬は動くから全身麻酔でという獣医は研究不足だと思います」

 無麻酔を売りにしているトリミングサロンでの超音波スケーリングについては、医療機関ではないことから、器具の滅菌が十分でないなどの問題が起こり得ること、また、歯石を除去するだけで治療が行われないことから歯周病は悪化し続けるという問題がある。

「また、飼い主さんも獣医師が言うことを鵜呑みにせず、セカンドオピニオンを受けることも考えてもよいと思います。疑問に思うことはどんどん質問しましょう。それに親身になって応えるのが、獣医師の役割だと思います」

3)すぐに歯を抜かない
「犬は歯が1本くらいなくなっても問題ないと、すぐに抜歯をすすめる獣医師が多いのが現実です。抜歯しか手段がない場合もありますが、グラついている歯も適切な治療を続ければ動かなくなることもあります。抜歯するのは、さまざまな治療を試してうまくいかなかった場合に限定すべきでしょう」

 傷んだ歯があるよりも、抜いてしまった方がいいという説明をよく耳にするが......。

「犬も抜歯して1週間もたつと、人間と同じように歯茎と顎骨が縮んでいきます。人間は1週間以内に義歯を入れるのに、犬はそのままですよね。また、下顎の歯を抜くと舌が外に垂れ下がり、粘膜でできている舌が乾燥して炎症が起き、ひび割れて、さまざまな弊害が生じることがあります。唾液には抗菌作用がありますが、口の中が乾燥するためその効果も期待できなくなります。歯は犬にとっても大切なもので、ないと病気につながりかねないんです」

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林先生が取り出したのは長さ4センチほどの金属製の棒。歯根の洗浄に使う器具だが、これはライオン用で犬の犬歯の治療の際に使うものだという

歯周病の治療を受ける場合のポイント

「歯茎まわりのトラブルを"歯周病"と診断されたら、具体的にどんな症状なのかを尋ねてみてください。歯周病はいわゆる症候群で歯周病という病気はないんです。症状の出方には歯肉炎、歯周炎などがありますが、歯茎の腫れについても、単なる炎症のものもあれば、腫瘍の場合もあるので慎重に診断しなければなりなせん」

 安易に抜歯をして、実は悪性腫瘍だったという場合には、すぐに再発し、進行もよりスピードアップすることになる。犬の1年は人間の4倍にあたるのはよく知られているが、それだけ細胞分裂も速いということだ。
 また、歯石を除去するだけでは歯周病の治療としては不十分。歯茎と歯の間の洗浄や薬の処置など行える獣医で治療しよう。

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歯石がつき歯周病となった口腔内(写真提供:動物歯科クリニック花小金井動物病院)

家庭におけるオーラルケアのさまざまな意義

 オーラルケアの意義、家庭における予防の重要性をこれまで紹介してきが、歯みがきによって次のような効果も期待できる。

■歯肉のマッサージ効果
血液循環がよくなり、歯周組織にもよい効果がある。

■口腔内の異常に早く気付く

口腔内にはさまざまな病気が発生する。扁平上皮癌、骨肉腫など重篤な病気も隠れてる場合がある。日ごろから歯みがきをすることで、口腔内の異常にいち早く気付くことができる。

■診察時に役立つ
歯みがきに慣れた犬たちは、口の中を見せることに抵抗がない。獣医の診察の際に、じっくり観察できるので、正しい診断につながる。

■全身の健康維持
健康な歯で物を噛むことで唾液の分泌が促される。唾液には免疫物質、抗菌物質、消炎物質が含まれているので、口腔内の免疫機能や抗菌作用が活発化する。

 愛犬との関係性の構築においても非常に有効だ。

「歯みがきを行うことによって人に優位性のある主従関係も築きあげられます。歯みがきを嫌がるというのは、犬の甘えを許していることでもあるんです。お互いの信頼関係を深めるためにも毎日のブラッシングは有効です。しつけの一環としてもぜひ取り組んでもらいたいですね」

 3回にわたって犬のオーラルケアを巡る知識や情報、そして具体的な方法をご紹介してきた。第2回で紹介した歯みがきの方法は林先生がご自身の愛犬たちと、よりよいオーラルケアを目指して工夫を重ねて築きあげてきたものだ。
 人間が人それぞれであると同様、犬たちにも個性がある。ご紹介したブラッシングのコツを試しても、すぐにはうまくいかない場合もあるかもしれない。でも、諦めるのではなく、愛犬のことを一番わかっている飼い主だからこそ、それぞれの個体に合わせた工夫ができるはずだ。どうやったら愛犬に負担なくオーラルケアをできるのか、楽しみながら「私たちの方法」を探してみてはいかがだろうか。

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