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2016.10.26

「古典的条件づけ」と「オペラント条件づけ」 Vol.2

愛犬との信頼関係を築く「嬉しい気持ちにするしつけ」

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

「ほめるしつけ」とは似ているようで少し違う、「嬉しい気持ちにするしつけ」。「嬉しい気持ちにするしつけ」をうまく取り入れると、愛犬からもっと愛され、より強い信頼関係を築けます。今回は、古典的条件づけを利用した"嬉しい気持ちにするしつけ"の大切さについて、前回に引き続き、東京大学の特任助教、荒田明香先生に聞きました。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

#しつけ

"飼い主といると嬉しい!"が信頼につながる

 古典的条件づけを利用した"嬉しい気持ちにするしつけ"は、愛犬と飼い主の信頼関係を築く上でとても大切になってくる。なぜなら、"嬉しい気持ちにするしつけ"は、単にしつけの結果としての行動を変えるだけでなく、愛犬の気持ちの部分にかかわるものだからだ。

 最もわかりやすい例として、「愛犬が飼い主と一緒にいると嬉しい気持ちになる」ことを例に、古典的条件づけを利用した"嬉しい気持ちにするしつけ"の仕組みをおさらいしてみよう。

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 このように、飼い主が一緒にいるときに、遊んでくれたり散歩に連れていってくれたりオヤツをくれたりと、嬉しい気持ちになることばかりが起こると、何もしなくても飼い主が一緒にいるだけで嬉しい気持ちになる、という条件づけがされていく。もちろん逆も然りで、犬が嫌がることを無理やりやっていたり、イライラしてばかりの飼い主では、いくら遊んであげたりオヤツをあげたりしても飼い主への苦手なイメージは払拭できないので気を付けよう。

 さらに、前回病院の診察台の例で見たように、"嬉しい気持ちにするしつけ"を使えば、愛犬の苦手なものを減らし、好きなものを増やしてあげることができる。そして、「飼い主と一緒にいると嬉しいことばかり!」となれば、その嬉しい気持ちを与えてくれる飼い主に対する信頼度も増していくのだ。

ポイントは"苦手度"と"嬉しい度"のバランス

"嬉しい気持ちにするしつけ"が使える場面には、苦手なものを平気にさせるケースと、何でもないものを好きにさせるケースの2つがある。
 中でも、苦手なものを平気にさせるケースには、コツがいくつかある。もっとも大切なのは、"苦手度(=刺激・状況)"と"嬉しい度(=無条件刺激)"のバランスだ。

 ブラッシング時に嫌がらないように、"嬉しい気持ちにするしつけ"を利用する場合を例に考えてみよう。
 基本的なやり方は、「ブラッシングをするときに→オヤツをあげると→嬉しい気持ちになる」という条件づけをしていって、最終的には「ブラッシングをするときに→嬉しい気持ちになる」という形を目指す。そのためにはブラッシングをしながらオヤツを与えるわけだが、極端な例で言うと、いきなり毛玉ができている耳の後ろを思い切りとかしながら、大して好きでもないオヤツを与えても、うまくいかないのは明らかだ。

「苦手なものを平気にさせるために古典的条件づけを使うなら、"苦手度"と"嬉しい度"のバランスが大切です。"苦手度"と"嬉しい度"のレベルの差が少しだけしかないと、途中でどっちに転んでしまうかわかりません。なので、できるだけ"苦手度"を下げてあげるとともに、苦手であればあるほど"嬉しい度"を上げてあげる。それにより"苦手度"ゼロもしくは嬉しい反応を示すようになったら、少しだけ"苦手度"を上げて同じ手続きをする、というようにして、愛犬の反応を見ながら徐々にレベルを上げていきます。また、そのためには具体的に何が苦手なのか、そのポイントを理解しておくことも大切です。ブラッシングで言えば、ピンブラシはいいけどスリッカーは嫌とか、背中をとかされるのはいいけど脚は嫌とか、ブラッシングの中でも具体的に嫌なポイントがあるはず。それを理解していれば、どうごほうびを使うといいのかもわかってきます」  と、荒田明香先生。

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 また、苦手なことを終わらせるときのやめ方も大事なポイント。犬は後に起こったことをよく覚えているため、その途中が少し嫌だったとしても最後にいいイメージで終われば、全体的によかったな、という印象になりやすい。
 ブラッシングで言えば、いちばん最後に苦手な部分をとかして終わるのではなく、平気な部分で終わる、なでて終わるなど、よい印象で終わらせるようにしよう。また、ブラッシングをしながらオヤツを与える際には、ブラッシングをやめると同時にオヤツもやめるのではなく、オヤツを最後に与えて終わると、いい印象が残りやすい。

 ちなみに、愛犬が物事に対していい印象を抱くか悪い印象を抱くかは、毎回ジャッジされていると思ったほうがいい。そして、一度悪い印象がついてしまうと、それをいい印象に変えていくのはかなり大変だ。
 飼い主としては、今日のブラッシングでどうしてもこの毛玉をほぐしてしまいたい! という気持ちになることもあるが、そこは飼い主の都合で無理にやらず、愛犬の気持ちを優先的に考えよう。

書を捨てよ、犬を見よう

 この2回で、「オペラント条件づけ」と「古典的条件づけ」の仕組みにも触れながら、"ほめるしつけ"と "嬉しい気持ちにさせるしつけ"について取り上げてきた。けれども、ここで最も大切なのは、型にはめて考えないで、目の前の愛犬の気持ちをしっかり理解することだ。

 例えば、知らない人に対して吠えるという問題行動のある犬がいて、飼い主がしつけの本で「知らない人に慣れさせるために、その人からオヤツを与えてもらいましょう」と書いてあるのを読んだとする。ところが、いざそれを実践してみたときに、相手の人が正面から目を合わせてオヤツを差し出してきたら怖くて余計に吠えてしまうなど、逆効果になるケースも多々ある。
 相手が男性だとこわいけど女性なら大丈夫、相手が立っているとこわいけどしゃがめば大丈夫など、それぞれの犬によって事情は異なる。本に書いてある通りに実践するのではなく、そのときどきで犬をよく観察し、具体的に苦手なポイントや程度までを把握して、臨機応変に対応することが必要だ。

「オペラント条件づけや古典的条件づけの知識があるか無いかにかかわらず、愛犬を観察して気持ちを理解することができていたら、しつけは自然とうまくいくと思うんです。愛犬のちょっとした嫌がるサインに気づいて避けてあげたり、このやり方のほうが嫌がらないなと自分なりに対応をアレンジしたりすれば、無理にしつけ本通りにオヤツなどを使ってやらなくても、自然と犬が受け入れやすいやり方になっていくと思います」

 しつけの話に関してはついつい具体的なHow toを求めたくなるが、すべての犬のあらゆる状況にぴったりと当てはまるHow toなどは存在しない。むしろ知っておくべきは、しつけの基本的な考え方。それさえ頭に入れたらマニュアルから目を離して、もう一度愛犬をよく見てあげるようにしよう。

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