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2016.09.28

日本の獣医師があまり知らない輸入感染症もある

万が一のために知っておきたい感染症のこと

田中志哉 高橋動物病院

日本に住んでいると、その恐ろしさを実感することの少ない、感染症。ところが、世界には犬の死因の8割近くが感染症という国もまだまだあり、日本だから安心とは言えません。第1回目の今回は、日本で気を付けるべき感染症について、タイの動物病院での診療経験を持つ田中志哉先生に聞きました。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

#健康

国内で感染例が少ないだけに気づきにくいことも

 感染症とは、環境中に存在する寄生虫、細菌、真菌、ウィルスなどの病原性の微生物が、体内に侵入することで引き起こされる疾患のこと。中でも生物から生物へ伝染するものは伝染性感染症と言い、単に伝染病とも呼ばれる。
 日本に住んでいると、人間にしろ犬にしろ、感染症の恐ろしさを意識する機会はそれほど多くない。犬に関しては、狂犬病、フィラリア、混合ワクチン、ノミ・ダニ予防薬......と一通りの予防を行っていればとりあえず大丈夫、と思っている飼い主が多いだろう。
 ところが、実際はそれでも完全には防ぐことができないケースもあるようだ。

「以前、一時期タイに住んでいたミニチュア・ダックスフンドで、日本へ帰国後、腰を痛がっていて後ろ脚がおかしいというコがいました。椎間板ヘルニアを疑って治療していたようなのですが、症状の改善がみられなかったようなんです。その後、再びタイに戻ってきたときに相談を受けて診察してみたら、マダニを媒介として感染するアナプラズマ症という感染症でした。
 アナプラズマ症はタイでけっこう見かけるものなのですが、血小板の数が減ってしまうので、日本の獣医師だと真っ先に免疫介在性の病気を疑うと思うんです。ところが、免疫抑制剤をかけてしまうと、逆に病原体の数が跳ね上がって、あっという間に死んでしまうこともあり得るんですね」
 と、タイの動物病院での診療経験を持つ、高橋動物病院の田中志哉先生は話す。

 このアナプラズマ症、愛犬を連れて海外に行っていなければ感染の心配はないかというと、そうとも言い切れない。
 日本入国時に犬たちが通る検疫は、狂犬病の侵入を防ぐことが主な目的になっている。外部寄生虫の予防をしていたかは聞かれるものの、血液感染症を調べる義務はなく、アナプラズマ症が発見されず通過することもあり得るのだ。日本に入国したアナプラズマ症に感染した犬を、マダニが吸血し、その犬のカラダから落ちて別の犬を吸血すれば、日本国内で感染が広がる可能性は十分考えられる。
 また、このアナプラズマ症や、同じくマダニを媒介とするエーリキア症は人獣共通感染症で、人間にも感染するリスクがあるのも恐ろしい点だ。

2016-09/160904_02.JPG

日本で気を付けたい感染症とは?

 そもそも日本で感染症というと、どのような病気が見られるのだろうか。
 現在、日本の家庭犬の一般的な感染症予防は、法律で義務付けられている狂犬病ワクチンの他、フィラリア予防薬、混合ワクチン(犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス、犬パルボウイルスなど)、それにノミ・ダニ予防だろう。
 ところが、これらの予防をしっかり行っていても防ぎにくい感染症が、輸入感染症以外にもあるという。

「例えばペットホテルに愛犬を預けたら、帰ってきて1~2週間後ぐらいで咳をするようになり、病院に行ったらケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎の通称)だった、というようなことはあると思います。ケンネルコフのウィルスに対するワクチンは、多くの混合ワクチンの中に含まれてはいるのですが、100%の予防はできないんですね。その他にも、それほど多くはないですが犬の耳に寄生して一気に繁殖する耳ダニや、皮膚に寄生するヒゼンダニによって引き起こされる疥癬(かいせん)などがあります」

 また、日本の一部の地域だけで見られる感染症もある。
「この病院のある埼玉県加須市周辺では、マンソン裂頭条虫という寄生虫が見られることがあります。これはカエルやヘビなどを媒介とする寄生虫で、犬がカエルを食べてしまうことによって感染します。カエルがそれほど多くない都会では、まず見られない病気ですね。また、眼の中の網膜嚢に寄生する東洋眼虫は、九州圏に多いとされている寄生虫なのですが、この辺りでも今年だけで3件ありました」

 感染症予防をしっかりしているから絶対かからないと言い切れないことは、頭の片隅に置いておこう。

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感染症予防は飼い主としての責務

 一般的な予防対策では防ぎにくいいくつかの感染症について取り上げてきたが、大切なのはやはり飼い主の感染症に対する意識と予防措置を怠らないこと。
 というのも、狂犬病ワクチン、フィラリア予防薬、混合ワクチン、それにノミ・ダニ予防をしておけば、日本で罹患するリスクが高く、しかも罹患すると重篤になりかねない感染症は、ほぼ100%防ぐことができるからだ。

 その他の感染症は日本では稀な例であり、それらを完全に防ぐことは難しい。できることは、愛犬の生活する環境を清潔に保つことと、もしも周囲に海外から入国した犬がいたら、可能な範囲でその国の感染症事情を聞いておくことなどだろう。
 いずれにしろ、日本では一般的でない感染症もまだまだ存在することを頭の片隅に置いておくと、万が一愛犬に何かあったときに役立つかもしれない。

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