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2016.08.26

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推定年齢15歳のラブラドール・レトリーバーとの介護生活

高齢犬介護が家族に与えてくれたもの(前編)

愛犬が年を取ると、いずれはやってくる介護生活。実際の高齢犬介護とは、一体どんなものなのでしょうか。現在、寝たきりの愛犬ロンを介護している森田さん一家にお話をうかがいました。24時間付き切りでの介護は大変なことも多いだろうけれど、介護生活を通してしか得られないものもあるようです。

#Lifestyle

Author :写真=日高奈々子 文=山賀沙耶

家族一おとなしいロンが、介護で一躍注目の存在に!

 愛犬が年を取って、寝たきりになってしまったらどうしよう......犬の飼い主なら、一度はそんなふうに考えたことがあるのではないだろうか。
 高齢犬介護とは、辛く苦しく大変なもの。そんなイメージを完全に覆してくれたのが、森田さんファミリーと、ラブラドール・レトリーバーのロン(推定15歳)だ。
 現在ロンは、森田征和さん・資子さん夫妻や娘さんと息子さん、それに同居犬のニコラ、ルイ、リロに囲まれて、賑やかな老後生活を送っている。

 
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他のコ達がまわりで元気に遊んでいると、ロンも嬉しそう

「昨年11月ごろから徐々に歩けなくなってはいたんですが、今年1月にドッグランで20秒ぐらい歩いたのを最後に、寝たきりになってしまって......。思い切ってフルタイムの仕事を辞め週1回の非常勤にして、ほぼ24時間体制でロンくんの介護をすることにしました。今まで、子供のためにも仕事を辞めたことなかったのに(笑)。最初はどうなることかと思ったけど、正直、高齢犬がこんなにかわいいとは思いませんでしたね」
 と、家族の中心になってロンの介護をしている資子さんが、笑顔で話してくれた。

 現在寝たきり状態のロンが、保護団体から森田家にやってきたのは、約4年半前。つながれっぱなしの環境で暮らしていたためか、推定7~10歳と言われていたそのころから、下半身の筋力が極端に弱かった。
 そして、非常におとなしくて手がかからず、人にも犬にもあまり興味を示さない。資子さんいわく、ロンは「目が見えないのかと思った」ぐらいだったという。みんなでバーベキューに出かけて、さあ帰ろうと歩き始めたとき、気付いたらロンを置いてきていたこともあったほど。

「それが今では、わが家でいちばん注目を浴びていますからね。みんながロンくんに会いにきてくれるし、カートで外に出かければいろんな人が話しかけてくれます。『かわいい』とか『がんばってね』とかいっぱい言われて、ロンくんも寝たきり生活を楽しんでいるみたい」
 と、資子さん。
 ロンも、他の犬や人が近寄ってくると、以前よりも反応するようになった。これは、介護生活が始まらなければ起こらなかった変化だ。

 
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カメラが好きで、今回もカメラマンが近づくとがんばってポージングしてくれた

おむつ替え、寝返り、食事......高齢犬介護の1日

 昼夜逆転状態のロンは、毎日だいたい午前3時ごろからバタバタし始める。寝たり起きたりを繰り返しているうちに5時ごろになり、オムツを替えてもらったら、資子さん達が他の犬達の散歩に出かけるのを見送る。

 
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おむつは人間の大人用のSSサイズのものに、シッポ穴を空けて使用。尿取りパッドをガムテープで留めて、その上からおむつを履かせている

 8時ごろになると、待ちに待った朝ご飯の時間。寝たきりの高齢犬とはとても思えないほど、食欲は旺盛だ。資子さんに介助してもらいつつ、ふやかしたフードをガツガツ食べる。

  

勢いよくフードを飛び散らせるため、食事はペットシーツの上で

 その後も、オムツや尿取りパッド交換と寝返りを3時間に1度ぐらいしてもらいつつ、11時ごろからはほとんどの時間を寝て過ごす。その間に、資子さんは買い物に出かけたり用事を済ませたりして、夕方からの世話に備える。

 
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寝返りを打たせるときは、カラダの下に手を入れて、脚を下にしてひっくり返す。これを約3時間ごとに行う

 16時ごろ、また尿取りパッドを交換して寝返りを打たせてもらって、他の犬達が散歩に出かけるのを見送る。みんなが散歩から戻ってきて、19時ごろに夕ご飯。
 みんなの夕ご飯が済んだら、征和さんと一緒に寝転んでテレビを見るのが、ロンの何よりの至福タイムだ。23時ごろ、尿取りパッド交換が終わったら征和さんが寝に行って、とりあえずロンの1日は終わりを迎える。

 学校を出て就職してから今まで、仕事をしていない時期が一度もなかったという資子さんは、急に訪れた穏やかな毎日を、ロンと一緒に楽しんでいる。また、娘さんと買い物に出かけたり、ときには料理を教えたりと、ロンの介護が始まったことによって、今までとれなかった家族と過ごす時間も持てるようになった。
 そんな介護生活の中で、苦労していることは? と尋ねると、
「長時間まとめて眠れないことですね。どんなに長くても4時間が最長です。そのせいか、1~2週間に1回、すごく具合が悪くなることがあるんです。そんなときは、介護を誰かにお願いして、しっかり寝るようにしています」

 犬は、自分の身を憂いて、先のことを悲観したりしない。だからこそ、介護する側が勝手に暗くなったり悲しんだりしないで、1日1日を大切に向き合ってあげたい。森田さんファミリーが介護に臨む姿勢からは、そんな思いが伝わってきた。

>>後編では、森田家の高齢犬介護の工夫をご紹介します。



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