lab

  1. トップページ
  2. docdog lab.
  3. 動物福祉の観点で考える、ペットの繁殖流通システムの現状

2016.07.11

“かわいそう”を超えて、今議論すべきこととは?

動物福祉の観点で考える、ペットの繁殖流通システムの現状

加隈良枝 帝京科学大学 生命環境学部

どうすれば幸せな犬(猫)・飼い主を増やすことができるのでしょうか。日本の繁殖流通システムの現状と問題点について、帝京科学大学生命環境学部の准教授、加隈良枝先生に聞きました。環境省発表のデータによると、2014年度に全国の自治体で殺処分された犬猫の頭数は101,338頭にのぼります。その一方で、ペットショップ店頭で子犬を衝動買いしてしまう人たちが後を絶ちません。このようなひずみが生じてしまう日本の繁殖流通システムの問題点は、いったいどこにあるのでしょうか。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

システマチックに繁殖流通できない生き物ならではの難しさ

 「犬と一緒に暮らしたい」と思ったときに、犬の入手先として最初に思い浮かぶのはどこだろうか。ペットショップ、ブリーダー、保護犬のレスキュー団体、知人からもらってくる......。さまざまな選択肢がある中で、多くの人が選ぶのは、ペットショップで購入することだろう。それでは、ペットショップにいるその子犬は、いつどこで生まれて、どのようなルートをたどってそこにやってきたのか、想像を巡らせてみてほしい。生命ある子犬・子猫を、雑貨や食品、衣服などと同じように市場に流通させることに、問題はないだろうか。

 「どんな商品でもそうだと思うのですが、大量生産・大量消費のシステムの中で商品を販売するとなると、どこかで商品を準備しておき、消費者がほしいときにすぐ提供するということが、企業のサービスとして求められます。要するに、『今商品の準備がありません』とは言いづらいわけです。ところが、商品に対する需要が供給に満たなかった場合には、当然在庫を抱えてしまうことになります。この商品が生命ある生き物であるというのが、動物の流通市場の難しさだと思います」
 と、動物福祉の観点から動物の繁殖流通システムに関する研究を行っている、帝京科学大学の准教授、加隈良枝先生は話す。

 日本は"ペット後進国"とも言われ、他の先進国と比べて動物の繁殖や販売に関する法整備が遅れているなどの問題点が指摘されている。また、日本のペット文化で独特なのが、いわゆる"犬種ブーム"だ。
 「例えば、アメリカならレトリーバーがずっと人気犬種なのに対して、日本は犬種のトレンドがどんどん移り変わるのが特徴ですね。その流行に合わせて繁殖流通が行われるわけで、当然そこにひずみが生まれてきます。現在は、超高齢化社会の中で中高年が飼育者のメインになってきているのもあり、扱いやすい小型犬がブームになっています。けれども、小型犬は一度に生まれる子犬の数が少なく、したがって母犬や繁殖業者の負担も大きくなりがち。また、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種も人気ですが、これらの犬種は難産が多いことでも知られています。そういう意味でも、繁殖流通システムの安定はますます難しくなってきていると思います」

160702_02.jpg

正確な調査データがないことが大きな問題

 「そもそも国内には繁殖流通システムに関する正確な調査データがないこと自体が、重大な問題点と言えます。各業界団体などがさまざまな調査を行ってはいるものの、そのデータの正確性には疑問が残ります。また、繁殖流通に関する悪い事例ばかりが広まり、ペット業界全体に対する疑念が無闇に広がるのもいいこととは思えません」

 ペットショップで販売されている子犬・子猫の多くは、パピーミルと呼ばれる大量生産繁殖業者を含むブリーダーのもとで繁殖され、ペットオークションで競りにかけられた後、ペットショップの店頭に並べられる。加隈先生によると、日本にはペットオークションの業者が20件ほどあり、犬猫の約6割がこのオークションを通ってきているという。ところが、ブリーダーとペットショップが直接取り引きをしているケースもあり、オークションだけを調査していても、システム全体を把握することはできない。

 また、2012年の動物愛護管理法の改正により、販売業者やブリーダーは入手した子犬・子猫の数と手放した数を届け出る義務が生じ、販売の時点での頭数はある程度把握できるようになった。ところが、ブリーダーやオークション業者など、表に出ない業者達がどの程度、動物取扱業の登録をしているかは未知数で、小売販売以前の実態を把握することは困難だ。

最も大切なのは、たくさんの人の関心

 大量生産・大量消費の流通システムに生命ある生き物が乗ってしまっていること、それに関しての正確な調査データがないこと、そして、動物の繁殖流通に関する法整備が進んでいないこと。確かにこれらも重大な問題だ。だが、最も大切な問題は、多くの消費者がそこに対して関心を持っているかどうか、だろう。

 「犬を飼い始めるにあたって、保護団体から譲渡を受けたり、いい飼い方をしているブリーダーを選んだりと、ちゃんと調べたり考えたりして選択をしている人も確かにいます。一方で、犬や猫が好きという人の中にも、生体販売の裏側にある問題などは自分とは関係ない話と思っている人も、まだまだ多い気がします」

 多くの人たちがそこに関心の目を向け、情報を得たり発信したりしていけば、繁殖流通にかかわる側としても下手なことはできないはずだ。目の前の動物は幸せな状態か、その裏に苦しんでいる動物はいないか。今一度、想像力を働かせて考えてみよう。

掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。



 この記事が気に入ったらいいねしよう!
 最新記事をお届けします。

その問題行動、本当に犬が悪いの?

夏場の食欲不振、その原因と対策

夏場の食欲不振、その原因と対策
その問題行動、本当に犬が悪いの?