lab

  1. トップページ
  2. docdog lab.
  3. その問題行動、本当に犬が悪いの?

2016.07.12

“問題行動”を犬目線で考えてみよう Vol.1

その問題行動、本当に犬が悪いの?

荒田明香 東京大学 大学院農学生命科学研究科

愛犬の"問題行動"をどうにかしたい......。と思われている飼い主の方も多いのではないでしょうか。しかしこの問題行動というのは、あくまでも人間目線での話。その多くは、犬にとって本能に従った自然な行動をとっているだけ。そんな問題行動をどう考え、どう付き合っていけばいいのか、東京大学の特任助教、荒田明香先生に聞きました。第1回目の今回は、問題行動とはいったい何かを、犬側の目線から考えてみます。

写真=永田雅裕 文=山賀沙耶

#しつけ

犬が人間社会で暮らすうえで支障となるのが"問題行動"

 例えば、あなたが外出先から帰ってきて、テーブルの上に買ってきたパンを置き、トイレに行ったとする。そして、用を済ませて戻ってきたところ、愛犬がテーブルの上のパンを食べてしまっていたとしたら? あなたは「このバカ犬!」と思うだろうか。もしあなたが愛犬に、テーブルの上にあるものを食べてはいけないと教えていなかったとしたら、愛犬は食べ物を見つけて食べるという、本能に従ったごく自然な行動をとっただけ。あなたがそのパンを食べてほしくなかったという、愛犬に伝えていない自分の都合のために、これが問題行動と呼ばれてしまうのだ。

  

 「"問題行動"とは、犬がとる行動の中で人間にとって困る行動、つまり人間社会で暮らしていくうえで支障となる行動のことを指します。その中には、例えば前脚をただれるまでなめ続けるなど、一見して正常ではない行動も含まれます。けれども、吠える、噛む、引っ張るなどのほとんどの問題行動は、犬にとっては本能に従った自然な行動なのだけれど、人間側の都合で考えると困るというものばかりです」
 と、動物行動学を専門とする東京大学の特任助教、荒田明香先生は話す。

  

 犬がその行動をとるのには何らかの原因や理由があり、そこに目を向けずして犬に問題があると言うのは、一方的で飼い主都合の考えであることが多いのだ。

160701_02.jpg

問題行動が起こる原因には個々の犬の事情がある

160701_03.gif

問題行動の起こる背景を犬目線で考えると、このような事情が隠れている

 「問題行動の起こる仕組みを考えてみると、結果的にその行動が現れるまでにはさまざまな背景があります。例えば、『チャイム吠え』という問題行動があったとすると、上の図の"きっかけ"が『チャイムが鳴ること』、"行動"が『吠える』です。①には、例えばもともと吠えて獲物を追い詰める仕事をしていた犬種であるとか、臆病な性格であるとか、個々の事情が入ってくるはずです。また、②には、例えばチャイムが鳴ると外から知らない人が来て嫌だ、などの気持ちが入ります。これに対し飼い主が大きな声で叱ると、犬は嫌な気持ちになるので、よりチャイムに対してネガティブな印象を持ち、吠えやすくなることがあります。また、通常吠えているうちに来客が家を出て行くので、『吠えて追い払った』と学習し、吠えが強化される場合もあります」

 チャイムが鳴るというきっかけがあると、どんな犬もみんな吠えるわけではなく、たとえまったく同じ環境で生活していたとしても、吠える犬と吠えない犬が現れる。そこには、犬種、性格、飼育・成育環境、体調、飼い主との関係など、個々の事情による違いがあり、飼い主はそれらを理解して対応することが大切だ。そうしないと逆に、無意識のうちに問題行動を悪化させてしまう結果にもなりかねないのだ。

吠えるのは当たり前。問題は吠え続けたり、さまざまな刺激に吠えたりすること

 現在の日本で最も問題となりやすいのが、吠え。多くの人が集合住宅や住宅地などで密接して暮らしている状況の中では、ちょっとした吠えでも問題になりやすい。ところが、"無駄吠え"などとよく言うけれど、犬自身は無駄に吠えているわけではなく、ほとんどの場合吠えることには何らかの理由がある。

 「吠えると困るというのはよくわかりますが、吠えをゼロにしなければいけないという考え方はいきすぎだと思います。それは、私達が声を発するなと言われるのと同じ。不審な物音がしたときにワンワンと鳴くのは当たり前の行動です。吠えないようにと必死になって叱ったり、飼い主が一緒に不安になったり神経質になったりすると、吠えやすくなってしまうことは多々あります。問題なのは、吠えやまないことや、さまざまな刺激に吠えること。ずっと吠え続けているということは、単に近所の迷惑になるだけでなく、犬自身のネガティブな気持ちが解決されておらず、ストレスになっている場合もあります」

 犬と人間とでは、言葉も通じず習慣や文化のまったく異なる外国人と接する以上の違いがある。その犬と同居しているのだから、問題が生じるのはある意味で当たり前。何か困ったことがあったときに、一方的に「ダメ!」としかったり「うちの犬はバカだから」と思ったりする前に、犬側の目線でその背景を想像し、きっかけや気持ちを変えることはできないか考えてみることが大切だ。

160701_04.jpg

ハーネスを着けるという行動一つをとっても、犬によって感じ方が違う。ハーネスで遊びたがったり、つかまれたりすることが苦手なコは、ごほうびを使ってうまく誘導するといい

>>次回は、個々の問題行動に関して、具体的に見ていきます。
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法等により保護されています。

日中は60°を超える!? 地表温度の独自調査を実施

動物福祉の観点で考える、ペットの繁殖流通システムの現状

動物福祉の観点で考える、ペットの繁殖流通システムの現状
日中は60°を超える!? 地表温度の独自調査を実施